スイス、自由貿易協定で日本に大きな期待
ドリス・ロイトハルト経済相は、世界貿易機関 ( WTO ) の多角的貿易交渉 ( 新ドーハ・ラウンド ) が年内に合意する可能性はまだあるが、進行状況はそれほど良くないと語った。
さらに日本との経済連携協定にスイスは大きな期待を寄せていると述べた。
4月26日、ロイトハルト経済相は新ドーハ・ラウンドに関し、「年内合意に向けての各国の強い意志はあるが、今後の数週間が年内合意の可能性を左右する時期である」と語った。6月の末に、米ブッシュ政権の交渉を早く進める特別な権限が切れる。その前にどこまで交渉が進むかが1つの鍵になるという。
決定的な時期
ロイトハルト経済相は、ジュネーブでの今年2月の閣僚会議以来、緩慢な進展しかなく、それはアメリカがいつも問題だからだと指摘し「ブッシュ政権はもっと柔軟な対応を約束しながら、具体的な結果はまだでていない」と語った。
また、世界貿易機関 ( WTO ) のパスカル・ラミー事務局長も先週の初めに、「アメリカの有効なリーダーシップの欠如がこの重大な時期に、合意に向けての希望をそぐ結果になっている」と述べている。
3週間後の経済協力開発機構 ( OECD )での閣僚会議を含め、今後数週間が新ドーハ・ラウンドの重大な時期。農業分野が大きな障害にならず年内合意に至るか否かがこの時期で決まるという。
スイスは農業分野、サービス分野、非農産品分野を個別に交渉するのではなく、均衡を保つため、1つのパッケージにして交渉しようとしている。「この姿勢が結局、それぞれ利益の違う国にとっても平等を保つことになる」とロイトハルト経済相。
日本との経済連携協定
ロイトハルト経済相は多国間貿易協定が進行しない中、2国間自由貿易協定に言及し、現在進行中の日本との経済連携協定は「スイスの優先課題で、お互いの利益になる協定である」と語った。
「スイスと日本は経済形態に多くの類似点があり、農業分野での利害はほとんど対立するところがないため、交渉上大きな問題はない」と述べ、さらに医療関係とサービス分野において、スイスは大きく得るものがあり、直接投資も活発になると期待を寄せた。
「日本との経済連携協定が成立すれば、スイスはヨーロッパで唯一、日本とこうした関係を結ぶ国になる」というロイトハルト経済相の発言はスイス側の協定成立への大きな期待を表すもの。
また、日本との交渉はすでに締結した韓国との経済連携協定の経験を生かしての交渉になると締めくくった。
swissinfo、アダム・ボーモント 里信邦子 ( さとのぶ くにこ )
経済相は2国間自由貿易協定に関し、ブラジル、ロシア、インド、中国 ( 各国の頭文字をとってBRICと呼ばれる ) とも自由貿易関係を結びたい意向を明らかにした。これらの国はスイスの貿易の中で5%を占めるに過ぎないが、「潜在的可能性は高い」と見る。
また国内の問題では、スイスの農業分野にはもっと競争が必要だと述べた。それは経済協力開発機構 ( OECD ) も繰り返し指摘していることである。
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