「レシピを見ながら料理する」料理500年の歴史展
ベルン州立大学の図書館に保管されている料理のレシピから過去500年にわたる欧州の食生活の歴史を探る展示会が開催されている。
ローマ時代に記録されている大宴会の内容からお母さんから子供へ伝わった料理や、現代の食品会社によるレシピまで。料理の歴史をたどりながら、料理本のブームを考える。
ベルン州立大学の付属図書館で開催されている「レシピを見ながら料理する 料理本の500年の歴史」展は、ルネサンス時代の料理のレシピからダイエット集、食料の保存方法、食品メーカによるレシピや現在の高級料理レシピまでを紹介するユニークな企画となっている。レシピは15世紀に印刷技術が発明される前からあり、一般家庭では、母親から子供へ口伝えで引き継がれていくのが普通だった。
ローマ時代の豪華なレシピ
ローマ時代の料理人として有名なマルクス・ガヴィウス・アピキウスが残したメモがある。紀元1世紀の料理だが、ヴァリエーションに富み、アイディアもユニークだ。当時は、高価な肉やハーブをふんだんに使い、会食の招待者の財力を象徴するのが料理だったようである。一方、一般市民は、おかゆや穀物で飢えをしのいだ。
ローマ時代が過ぎても一般市民の食事といえば、穀物や野菜が主食で、スープや簡単な肉・魚料理はごく稀にしか口にできなかった。毎日の食事は代わり映えしないが、今はない種類の豆、ニンジン、穀物を料理していたという。これらの食物は後、コロンブスのアメリカ大陸発見により流入してきたジャガイモに取って代わられる。
ダイエット食品から保存食まで
中世まで、レシピは宮廷内で使われるか医師が治療として持っているものだった。病人にはたっぷりハーブを利かせた肉料理が良いとされた。当時から、ハーブの治癒力が認められていて、コショウはペストの予防になると言われ、コショウを買えるお金持ちはたっぷり料理に使った。
現在使われているようなレシピの形式になったのは、18世紀になってから。18世紀に出版された料理の本は材料から料理の仕方まで系統だって説明されており、これに従い料理ができるようになっている。
18世紀に料理革命が起こる
18世紀のヨーロッパでは、外国から食料を輸入するようになった。輸送手段が現在のように充実していた訳ではないにもかかわらずベルンでは、レモンを使った多くの料理が登場するようになるなど、これまで知られていなかった新しい材料がどんどん活用されるようになった。女性が文字を読めるようになり主婦の間でレシピの交換が始まったり、新しい料理を試そうという意欲が高まり、初めて女性による料理の本が出版される。料理ばかりではなく、料理の際のアドバイスや圧力鍋といった新しい料理器具の説明まで付いているのが面白い。19世紀になると、食品メーカによる食品広告をかねたレシピが印刷されるようになる。
現在、料理の本は街の本屋でも大きな位置を占め、スイスでも地中海料理やアジア料理からアフリカ料理にいたるまで、ありとあらゆる料理の本が出版されている。本ばかりではなく、ラジオやテレビでは料理番組が毎日のように放送され、広告や食品のパッケージにまでレシピがついてくる。一方で、ダイエットブームが起こり、ファストフードやコンビニエンスフードが流行っているのだから、レシピの氾濫は現代社会におけるパラドックスとも言える現象である。
スイス国際放送 モニカ・リュティ (佐藤夕美(さとうゆうみ)意訳)
レシピを見ながら料理する
10月6日まで
15世紀から21世紀の料理の歴史を紹介
18世紀から現在までのベルンに伝わるレシピも見ものの一つ
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