中国企業を誘致 スイス政府が本腰へ
スイス政府が中国企業を呼び込もうと、様々な優遇措置を設けての誘致作戦を進めている。
経済成長が続く中国では最近、国内企業が力をつけ、事業拡大のために外国企業を買収するなど、国際市場での存在感を強めつつある。
政府は、こうした中国企業が欧州進出の足がかりとしてスイスに拠点を設ければ、税収増や雇用拡大などスイス経済に波及効果が期待できるともくろむ。スイスを「アルプスの国」だけでなく、欧州市場の重要拠点としても売り出す方針だ。
先手必勝
今月8日、中国のパソコン最大手メーカー、レノボ(聯想)グループは米IBMのパソコン事業を買収すると発表して世界を驚かせた。中国企業が外国企業を買収するのは、手っ取り早く技術を獲得できるためだ。
今回の買収劇で世界シェア3位に踊り出た聯想グループの動きは、「世界の工場」から脱皮を図る中国の国家戦略とも一致すると見られている。
この直後にスイス連邦経済省経済局(SECO)は自治体と共同で中国企業を誘致するプロジェクトを立ち上げた。予算は250,000フラン(約2,260万円)。数年前の日本企業誘致プロジェクトに比べると、予算規模は2.5倍に相当する。
今回のプロジェクトの責任者マルコ・リーナー氏は「中国は世界の主要なプレーヤーになりつつある。今動いて、中国企業とビジネスの下地を作らなければ、大きなチャンスを逃してしまう」と話す。
優遇措置
スイス政府は、得意の法人税減免など税制上の優遇措置で中国企業の誘致作戦を展開。中国企業が欧州で現地法人を設立する際、法人税の安さを売り物に中国企業の取り込みを狙う。
誘致する企業名や産業分野については明らかにされていないが、リーナー氏は聯想グループによるIBMのパソコン事業買収を例に挙げた上で、IT関連の企業は「数ある選択肢の1つ」としている。
同氏によると、中国企業の数社と現在話し合いが進んでいるという。
「中国の市場経済はまだ成熟していないため、将来何が起こるか分からないという不安定要素を抱えている。中国企業の幹部は政治情勢に左右されない状況が必要との判断から、自分たちの選択肢を広げたい考えなのではないか」と同氏は話している。
スイス国際放送 クリス・ルイス 安達聡子(あだちさとこ)意訳
スイスと中国の関係:
スイスの対中直接投資額は50億フラン(約4,530億円)で、世界で15位。
一方、中国の対スイス投資はほとんどない。
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