熱烈歓迎! スイス、急増する中国人観光客に期待
9月1日からスイスは中国人が観光ビザで訪問できる国となった。
海外旅行は中国人にとってまだ費用が高く、実際には恵まれた階層に限られるが、それでも昨年の中国から海外への旅行者数は2,000万人を超えた。
2020年には年間1億人と予測される中国人観光客は、不況にあえぐスイスの観光業界にとって「ドル箱」だ。急増する中国人観光客を取り込もうと、スイスは目玉のアルプスを掲げて世界各地の観光地と誘致合戦を繰り広げている。
観光ビザ発給
英国を除く欧州連合(EU)諸国やスイスなど29カ国が9月に中国人観光ツアーを解禁したのを受けて、60人余りの中国人欧州観光団が4日、ジュネーブに到着した。3日間の日程でインターラーケンやルツェルンなどスイスの観光地を巡った。
これまでにもスイスの主要な都市では、本土からの中国人が観光バスで乗り入れる姿が多く見かけられたが、正規の観光ビザを取得しての中国人観光客はこれが初めて。
スイス政府観光局は、中国人のスイスでの宿泊数が2007年には現在の3倍の30万泊に達すると予測する。アジアでトップの日本人観光客に僅差で迫る勢いだ。同観光局は、急増する中国人観光客がもたらす観光収入の拡大に期待を寄せ始めている。
受け入れ準備
スイス政府観光局は最近、サービス業界向けに中国人観光客と接するときの手引書を出版した。将来の「お得意様」に対してやっていいことと、いけないことを示し、中国人の風俗習慣に対する理解が深まるよう教育するのが狙いだ。
手引書には例えば、こう書いてある。「人権問題、チベットや台湾の独立など政治的な話を話題にしてはいけません」。
また、数字に縁起を担ぐ中国の文化も紹介。「四」は中国語で「死」と同音であるため不吉とされていると指摘し、「中国人観光客に4階の部屋を提供してはいけません」とアドバイス。さらには、「中国人は朝昼晩とお茶を飲むので、湯沸し器は部屋に常時備えておきましょう」と中国人に対する心得を説いている。
地元の観光地も中国人観光客の呼び込みに知恵を絞る。ルツェルン州ティトリス(標高3,020メートル)の山頂まで登るロープウェイの経営会社は、北京語を話す観光ガイドだけでなく、頂上のレストランに中国人の料理人も雇う。こうしたサービスのお陰で、ティトリスは中国人がスイスで訪れたい観光スポットのナンバーワンに輝いている。
中国研究家のヨゼフ・モンドゥルさんは、「一番大きな壁は、私たちスイス人に中国の文化と習慣に対する理解が欠けていることだ」と指摘する。
だが、中国人観光客の誘致策が実を結ぶには、いくつかの難題も立ちはだかる。中国の主要都市からスイスまで飛行機の直行便がないことも、その1つに挙げられている。
スイス国際放送 デイル・ベヒテル 安達聡子(あだちさとこ)意訳
世界観光機関(WTO)によると、2003年の中国人海外旅行客は2,000万人以上に達した。それでも人口13億人の2%にも満たない。
WTOは中国人海外旅行客が2020年には5倍の1億人に増えると予測している。
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