スイスの免許ルール変更に大反響 AT免許でMT運転「事故増える」
スイスでは2月1日から、AT車限定の免許を保有する人でもMT車が運転できるようになった。電気自動車の普及を促すための措置だが、スイスインフォ日本語編集部がこのニュースを報じたところ、読者からは批判的なコメントが相次いだ。
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スイス、AT免許でMT車も運転可能に
スイスのAT車限定免許の所有者は2月1日から、居住地の交通局で「限定」を削除した免許証に交換できる。健康上問題がなければ限定を解除でき、追加講習や試験は不要だ。
ルール変更は昨年12月、仮免の最低年齢引き下げなど免許制度改革の一環で決まった。スイスでは免許を受ける人の95% がMT車免許の教習を受けるが、電気自動車(EV)はAT車に分類されるため教習中に運転する機会がない。連邦政府は新規車両登録におけるEV比率を足元の1.6%から2022年までに15%に高める目標を掲げる。達成のためには、EVの運転が組み込まれているAT車免許の取得を促す方策が必要だと判断した。
今月12日にスイスインフォ日本語版がこのニュースを報じたところ、ツイッター上で多くのコメントが集まった。いずれも驚きや批判的な内容だ。なかには「スイスに対する印象が悪くなった」との声もあった。
- 無理!どうしてそんなことを許可できるんでしょう?
- 街中がエンスト祭りになりそう
- スイスは地形的にアップダウンありそうなので、信号待ちでは前の車にも注意!ってことですね(笑)
- これさ、 坂道発進で後ろの車に激突する事故が 増加すると思うんだが。
- はぁ?バカなの?ドライバーを殺人者にしたいの?緊急時以外は認めちゃアカンでしょ。
- そもそもAT限定免許なくせばいいだけじゃん。限定解除には限定解除教習と試験を必須とせねば危険すぎ。
- 本末転倒すぎてスイスに対する印象がちょっと悪くなったよね。
- これは乗りたくない(MT免許持ち)
- クラッチ つなげられるの???
- AT限定免許を規制緩和してMT運転出来るようにしちゃダメだろ。各免許に必要な技量が違うのに。
- スイスの免許でMT運転できるのか〜 ←日本の免許はAT限定
- これはかなりヤバい規制緩和
- クラッチが滑って整備会社大儲かり。ローギアで車線を作るべき。
スイスの交通当局者は、「AT限定免許の保有者が、何らの講習も受けずにMT車を運転することはそもそも不可能」として、事故が増えることはないとみる。次の読者コメントと見方は一致しているようだ。
AT免許の人MT乗れるようになったからといってわざわざ運転する人いるの?買う人いるの? https://t.co/AvEsvYhiDW外部リンク
— Wirsindvolk (@wirsindvolk) February 13, 2019外部リンク
ルール変更から20日経った今のところは事故が急増したという報道はない。
保険会社アクサ・スイスはスイスインフォの取材に「AT車免許保有者によるMT車の運転は、2月から合法化されたため過失理由にならない」との見解を示した。第三者への損害は義務的保険でカバーされ、車体保険に入っていれば自分の車への損害も補償されるという。
スイスでAT車は増えるのか?
フェイスブックにはこんな質問が寄せられた。
スイスを走る車の7割超がMT車とされる。レンタカーでもMT車が多く、AT車はあってもレンタル料がやや高い。
なぜスイス人はMT車を好むのか。
無料紙20min.は今月2日の記事外部リンクで「自分で能動的に操作している感覚が欲しいからだ」と指摘し、AT車は「禁治産宣告を受けたようだ」とする読者のコメントを紹介した。適時適切にギアチェンジすればMT車の方が効率がよいものの、「今のAT車の燃費はMT車並みかより良い」(ツーリング・クラブ・スイス)と伝えた。
新車登録台数でみると、スイスのAT車の割合も確実に増えつつある。
ドイツ語圏の日刊紙ターゲスアンツァイガー日曜版は10日、現在教習を受けている人の35%がAT車の試験を受けたいと考えていることが運転教官連盟の調べで分かったと報じた。ルール改正の効果は着実に表れつつある。
持っている免許証を既に書き換えた人の人数は、まだ明らかになっていない。チューリヒ州交局の広報官セヴェリン・トベラー氏は地域紙ヴィンタトゥールツァイトゥング外部リンクに「免許の書き換えをしたい人が殺到するとはみていないが、想定できないことはない」と語った。
日本ではAT車限定免許の取得者は6割弱。新車販売はほぼAT車が独占する。AT車の燃費の改善に伴ってAT車が普及してきた。EV台数は政府のエコカー補助金などを背景に伸びている。
スイスは充電スタンドの増設には政府が助成するが、個人のEV購入への補助金はない。スイス流のEV普及策は奏功するのか、それとも事故急増という高い代償を払うのか。引き続き、国内外から注目を集めそうだ。
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