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GMOのシンジェンタ、なりふり構わず

世界をリードする農業ビジネスの王者シンジェンタに対する議論は続く Keystone

遺伝子組み換え作物 ( GMO ) に対する批判が高まっているが、スイスの農薬大手シンジェンタは今年上半期も引き続き好調だ。除草剤やGMOにより食糧の供給量を上げると同社は主張する。一方、NGOは途上国には被害を与えるといって譲らない。

今年上半期、シンジェンタは純収益15億ドル ( 約1642億円 ) を計上した。マイク・マック最高経営責任者は、20年以内に世界の食糧供給量を5割上昇させてみせると息巻いている。

バイオエタノールの葛藤 ( かっとう )

 「物価が上昇し食糧価格も上昇したことで、消費者の目が農業に向いた。われわれの全ビジネスを通し、増産が 最も必要とされる国々の農業ビジネスに、最新技術を持って貢献したい」。シンジェンタ ( Syngenta ) の上半期業績発表資料にあるマックマック最高経営責任者 ( CEO ) の言葉だ。

 一方、「ベルン宣言 ( Erklärung von Bern /EvB ) 」といった非政府組織 ( NGO ) は、援助を必要とする途上国にシンジェンタは良い影響を与えていないと主張する。ヨーロッパ諸国などでは禁止された同社の除草剤「パラクアット ( Paraquat ) 」やコメの遺伝子などを商品登録の対象とする同社を非難し、同社の研究を阻止しようとしている。

 ベルン宣言の広報担当フランソワ・マイエンベルク氏はまた、シンジェンタがバイオエタノール用の穀物栽培に遺伝子組み換え技術 ( GM技術 ) を用いるのは、食糧用穀物の生産量を抑えることになり、問題だと指摘する。
 「シンジェンタは最近、バイオエタノールの宣伝をしています。そうすることで食糧価格を操作しているのです。彼らは土地が不足するから、食糧不足になる。よってGM技術が必要だと説明してきました。しかしバイオエタノールの製造に土地が必要だというのは食の安全の観点からも悪い影響があるでしょう」

 シンジェンタの除草剤パラクアットも穀物の生産能力を上げ、ひいては生産量を上げると主張していたが、大きな非難の的となっている。一方、シンジェンタはバイオエタノールについて
「人の食物にはならない有機ゴミを原料とする第2世代のバイオエタノールにも力をいれている」
 と反論する。

スイスのGMOモラトリアム

 シンジェンタの本社があるスイスでは、GM技術を農産物に使うことを5年間中止するモラトリアム案が2005年に行われた国民投票で承認され、GM技術に対しては懐疑的だ。この決定を受けシンジェンタは、研究活動を徐々にアメリカに移し、中国でも研究所を建設中だ。

「シンジェンタは、すべての農業従事者がベストの技術を選ぶことができるのが理想だと信じています。GM技術の開発も持続可能な方法で穀物生産者の需要に応じることができるものと思います。これまでもGM技術は安全な技術であり続け、長年にわたって利用され成功してきました」
 とシンジェンタは主張する。

 シンジェンタは世界の食糧危機の解決に貢献し続けると信じているというが、その是非についての議論は今後も続く。

swissinfo、マシュー・アレン 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 訳

ノバルティス ( Novartis ) とアストラツェネカ ( AstraZeneca ) が2000年に合併して創立された。種子産業では世界のリーダー格で、種市場の3分の1のシェアを持つ。
2008年上半期は純収益15億ドルを計上した。前年同期比、除草剤や種の生育部門で20%、種販売部門で15%増加した。
2007年の純収益は11億ドル、2006年は6億3400万ドルだった。

2005年スイスの有権者は向こう5年間、遺伝子組み換え作物 ( GMO ) を認めないというイニシアチブ案を承認した。この決定で、スイスはGM技術の規制がヨーロッパ諸国で最も厳しい国になった。欧州連合 ( EU ) は2004年に6年間のGMOモラトリアムの期限が切れ、GMOが認められるようになった。一方、EU加盟国のドイツとフランスは、食の安全を脅かすものだとしてGMOは禁止している。GMOに対して懐疑的で、禁止しているヨーロッパ諸国が多い中で唯一スペインは、GMトウモロコシの栽培が目立って増加している。

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