UBS アメリカに約730億円の払い戻し
アメリカ司法省は2月18日、税金をめぐる争いに終止符を打つため、スイス最大のUBS銀行がアメリカ司法省に対し7億8000万ドル ( 約730億円 ) を支払うことになったと発表した。
また、それによるとUBSは「アメリカの納税者が同国国税庁 ( IRS ) に対し銀行口座を隠ぺいするための手助けをした」ことを認めたという。
スイス金融監督当局からも制裁措置
アメリカの発表によると、UBSはアメリカ当局に顧客データを引き渡す準備があるという。これによって、スイスの銀行守秘義務に風穴が空けられることになる。UBSは「アメリカの特定の顧客の身元と口座情報を即時に引き渡す」ほか、「申告されていない顧客の口座に対する業務をできるだけ早く停止」しなければならない。
一方のUBSもプレスリリースを発表し、アメリカ司法省およびアメリカ証券取引委員会 ( SEC ) との合意を迅速に実現させることを表明した。最高経営責任者 ( CEO ) のマルセル・ローナー氏は
「われわれは明らかにミスを犯したようだ」
と認めている。
取締役会長のペーター・クーラー氏は
「これからも顧客データーを極秘扱いにすることに変わりはない。だが、税金をごまかそうとする行為をサポートするためではない。この先、効果的な管理システムを導入する予定だ」
と語った。
スイスの金融監督当局 ( Finma ) の指示により、UBSはアメリカ居住の個人顧客を対象とした業務から撤退しなければならないが、昨年夏、すでに同業務を取りやめる意向を発表している。
2月19日のコミュニケによると、金融監督当局は
「UBSの数人の行員によるスイス銀行法の重大な違反行為に対しては、さらなる制裁措置を加える予定だ」
という。しかし、UBSの指導部はアメリカ国税庁に対する脱税行為に関しては何も知らなかったと主張している。アメリカ司法省の見方はこれとは異なり、
「UBS指導部は、法を犯していることのみではなく、そうするよう指示が出ていたことも知っていた」
と発表している。
最悪の事態は免れたか
金融監督局はUBSとアメリカ当局が合意に至ったことに安堵している模様だ。
「これによってUBSに対する告訴はなくなる見込み。告訴されれば、UBSの生存は危うい」
UBSに対しては、一定数の顧客データーの引き渡しが要求されているが、金融監督局はこれに関する指示を下し、これらのデーターはすでにアメリカに渡っているという。
UBSは最近、アメリカ当局の厳しい批判の的となっていた。同銀行で以前、資産管理を担当していた行員が裁判で脱税ほう助の罪を認めており、その後のマスコミの報道によると、アメリカ司法省はUBSに対し、アメリカに住む2万人の富裕層の顧客データーを要求しているという。アメリカ当局は、過去最高200億ドル ( 約1兆8700億円 ) が国税庁の目を逃れてスイスの銀行口座に流れた可能性があると見ている。
スイスの首都ベルンでは2月18日夜、連邦政府が特別会議を開き、この税金問題について協議した。会議終了後、ハンス・ルドルフ・メルツ連邦大統領は、UBSと金融監視当局がアメリカ当局との合意を目指しているとコメントするにとどまった。詳細は今日19日に発表される予定だ。
swissinfo、外電
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