ツークは行政もブロックチェーン技術を積極的に取り入れている
Keystone
「クリプトバレー(暗号の谷)」を自称するスイスのツーク州では今月下旬、住民がブロックチェーンを使った投票実験を行う。スイス各都市がこの技術を広範に使用できるかどうかを検討する。
このコンテンツが公開されたのは、
州都ツーク市では昨年11月に電子身分証明書(ID)を導入し、今は約200人が利用している。今回の投票実験ではこのシステムを活用。有権者はアプリ「ユーポート(uPort)外部リンク」をダウンロードしてスマートフォンで投票できる。
この試みは、ブロックチェーン技術や仮想通貨ビジネスに好意的なツーク市の姿勢を象徴する一例だ。同市にはすでに多くのブロックチェーン企業が拠点を置く。いくつかの行政・民間サービスでは仮想通貨による料金支払いが可能だ。
6月25日~7月1日の間、ツーク市民はスイスで初めてブロックチェーンを使った投票参加が可能になる。あくまで実証事業であり、投票結果は市政に反映されない。
有権者は、毎年恒例のレイクサイドフェスティバルで花火を打ち上げることに賛成するかどうか、電子IDを使った図書の貸し出しや駐車料金の支払いを認めるべきかどうかについて投票する。また将来、国民投票にもブロックチェーンを使った電子IDを使うべきかどうかも問われる。
デジタル化を後押し
ツーク市は昨秋、市の事務手続きをオンラインで済ませられるよう、実証事業として電子IDシステムを導入した。有権者のデータベースをブロックチェーン技術(分散型台帳技術)で非集権的に管理することで、スイスの他地域で使われている電子IDよりも進歩したものになった。
シャフハウゼン州は今月、ブロックチェーン技術を使わない電子IDシステムeID+外部リンクの実証を終え本格導入した。住民はスマートフォン経由で州の税金や雇用、道路交通、児童保護や都市計画などの部署にアクセスできる。企業も電子IDサービスを利用可能だ。同システムはスイスの身分証明システム企業プロシビス(Procivis)外部リンクが開発した。
昨年、スイス郵便やスイス連邦鉄道、証券取引所運営企業のほか、いくつかの銀行や保険会社らがコンソーシアム「スイスサイン(SwissSign)外部リンク」を立ち上げ、全国的な電子IDサービス「スイスID」を開始した。
これらの電子IDシステムが全て投票での利用を念頭に設計されているわけではない。だが連邦政府は国内全土での電子投票の導入に意欲的だ。19年末までに26州のうち3分の2以上が電子投票に賛成することを目指す。
≫電子投票のメリット・デメリットは?
おすすめの記事
マルティン・フィスター氏が新閣僚に当選
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦議会は12日、今月末で辞任するヴィオラ・アムヘルト国防相の後任として、ドイツ語圏ツーク州出身のマルティン・フィスター氏(中央党、61歳)を選出した。
もっと読む マルティン・フィスター氏が新閣僚に当選
おすすめの記事
内陸国スイス、海運世界一に
このコンテンツが公開されたのは、
内陸国スイスが世界海運王者の座をドイツから奪った。コンテナ大手MSCが存在感を高めている。
もっと読む 内陸国スイス、海運世界一に
おすすめの記事
スイスの世界遺産エッシネン湖、予約制を導入
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・ベルナーオーバーラント地方の世界遺産エッシネン湖は5月から、麓駅から湖に登るゴンドラに予約制を導入する。観光客を分散させ、待ち時間や混雑の解消を狙う。
もっと読む スイスの世界遺産エッシネン湖、予約制を導入
おすすめの記事
スイス武器輸出、2024年は5%減
このコンテンツが公開されたのは、
スイスは昨年、政府が承認した6億6470万フラン相当の軍需品を計60カ国に輸出した。前年比で5%減少した。
もっと読む スイス武器輸出、2024年は5%減
おすすめの記事
スイス、シェンゲン域外の訪問者のデータを収集へ
このコンテンツが公開されたのは、
シェンゲン協定域外の旅行者のデータは、スイスを含む加盟国の国境で今後、自動的に記録される。
もっと読む スイス、シェンゲン域外の訪問者のデータを収集へ
おすすめの記事
スイス議会、新聞配達費用の補助金を引き上げ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国民議会(下院)の委員会は4日、新聞の配達費用の補助金を引き上げる内容の郵便法改正案を提出した。
もっと読む スイス議会、新聞配達費用の補助金を引き上げ
おすすめの記事
賃金分析「罰則・対象拡大が必要」 スイス労働団体
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの労働組合など52団体が3日、政府に男女賃金差別を撤廃するための法制強化を求める公開書簡を発表した。
もっと読む 賃金分析「罰則・対象拡大が必要」 スイス労働団体
おすすめの記事
スイス中銀、807億フランの黒字 2024年決算
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国立銀行(中央銀行、SNB)が3日発表した2024年度決算確報は、807億フラン(約13.5兆円)の黒字だった。速報時点の見込み通り、連邦政府・州に30億フランを配当する。
もっと読む スイス中銀、807億フランの黒字 2024年決算
おすすめの記事
スイス中銀総裁、ビットコインの準備金化に反対
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国立銀行(中央銀行、SNB)のマルティン・シュレーゲル総裁はスイス紙のインタビューで、中銀の準備金にビットコインを追加する国民投票案に反対する考えを示した。暗号資産(仮想通貨)は資産として多くの問題を抱えていると指摘した。
もっと読む スイス中銀総裁、ビットコインの準備金化に反対
おすすめの記事
スイス、米国の死刑推進に「深い懸念」表明 人権理事会で
このコンテンツが公開されたのは、
スイス政府は3日の国連人権理事会(HRC、本部・ジュネーブ)で、ドナルド・トランプ米大統領が連邦・州レベルの死刑制度を強化する大統領令に署名したことを「深く懸念している」と表明した。
もっと読む スイス、米国の死刑推進に「深い懸念」表明 人権理事会で
続きを読む
おすすめの記事
スイスのブロックチェーン企業、ロヒンギャを支援
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの身分証明システム企業「プロシビス(Procivis)」は4日、非政府組織(NGO)「ロヒンギャ・プロジェクト」と連携し、ミャンマーから逃れた350万人のイスラム系少数民族ロヒンギャにブロックチェーン技術を使った電子身分証明書を配布すると発表した。
もっと読む スイスのブロックチェーン企業、ロヒンギャを支援
おすすめの記事
スイス国家をスマートフォンに移そうとする男
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国家を根底からデジタル化する――。そんな野心を抱くダニエル・ガシュタイガー氏は、シビックテクノロジーの分野で第一線を走る元投資銀行家だ。自分を安直だと表現するが、その安直さこそが彼の目標を実現させるのに必要なのかもしれない。
「地元ラジオ局の記者が、なぜ私があえてこの小さなシャフハウゼン州と協働しているのかと聞いてきた。答えは簡単だ。同州が革新的だからだ」とガシュタイガー氏は言う。
同氏は「ファーストムーバー」と新しく呼ばれている先駆者たちに興味を引かれる。自身もその一人だと認識しているからだ。ブロックチェーン分野に特化した同氏のスタートアップ企業Procivisは先日、州民向けの電子証明書サービスのシステムをシャフハウゼン州と協働で構築していくことを発表した。
もっと読む スイス国家をスマートフォンに移そうとする男
おすすめの記事
スイスの電子投票、今後の展開は不透明
このコンテンツが公開されたのは、
電子投票では先駆的な取り組みを行ってきたスイス。しかし、このシステムの今後の展開が不透明になってきている。10月18日の総選挙に向け、電子投票の使用を申し込んだスイス13州のうち、政府が許可を出したのはわずか4州だったからだ。ここ数年大きく進展してきた電子投票だが、安全性、特に個人情報の安全性が問題になってきている。
もっと読む スイスの電子投票、今後の展開は不透明
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。