スイスの視点を10言語で

クレディ・スイス危機への対応「時間がかかりすぎた」 議会調査委が報告書

クレディ・スイスのロゴ
スイス連邦議会の調査委員会は、昨年3月のクレディ・スイス危機は連邦政府・議会にも不足があったと結論付けた Keystone-SDA

クレディ・スイス(CS)が経営危機に陥った責任を追究するスイス連邦議会の調査委員会(PUK/CEP)は20日発表した報告書で、原因は長年にわたる経営上の不始末にあったと結論付けた。連邦当局に落ち度はなかったが、あらゆる段階で欠点が蓄積されていた。

スイス第2位の銀行だったCSの経営危機は、取締役会と経営陣に起因すると指摘した。スイス金融市場監督機構(FINMA、日本の金融庁に相当)による複数回の介入を受け入れようとしなかった。

おすすめの記事
ニュースレター登録

おすすめの記事

ニュースレター登録

ニュースレターにご登録いただいた方に、スイスのメディアが報じた日本のニュースを毎週月曜日に無料でEメールでお届けします。スイスの視点でニュースを読んでみませんか?ぜひこちらからご登録ください。

もっと読む ニュースレター登録

報告書外部リンクは調査委の全会一致で採択された。連邦当局に不正行為があったとは認定しなかったが、決定の一部は時間がかかりすぎたと批判した。「危機管理から教訓を学ぶことが不可欠」だと強調した。

執行・立法措置ともに改善すべき点を列挙した。20の勧告を盛り込み、いくつかの介入策も提示した。

決断の遅れ

報告書によると、連邦政府・議会は「Too-big-to-fail(大きすぎて潰せない、TBTF)」規制を踏まえ、CSが「システム上重要な銀行」に分類されていること過度に重視した。期限は延長され、国際基準への順応は遅れた。特に緊急時に政府が資金を提供する「公的流動性バックストップ」制度の導入に関して、連邦政府の弱腰姿勢が目立った。

おすすめの記事

FINMAの監督も機能不全だった。警告は発したものの、CSのスキャンダルは収まらなかった。報告書は、当時のFINMAが事業に問題がないとのお墨付きを撤回しなかったと指摘。それどころか、株主資本に影響を及ぼす大胆な救済措置まで認めた。

情報不足

理由のひとつは、その後の対応に協調性がなかったことだ。 もし連邦内閣を含むすべての関係者に同水準の情報が共有されていれば、当局は2022年秋には信頼回復に向けた介入措置を取れたとした。

一方で報告書は、危機を終わらせるためのさまざまなシナリオを分析するために実施された予備作業を称賛した。 連邦当局は3月15日に起こった米国の銀行危機に対応し、19日にUBSによる買収が決まるまでの間、CSの支払い能力の維持に成功した。これにより、世界的な金融危機は回避された。

大きすぎて潰せない

「システム上重要な銀行」の破綻を防ぐために国が介入したのは、2018年のUBSに続き2度目だった。スイスには現在、「グローバルにシステム上重要な銀行」が1行しかない、と報告書は指摘した。

おすすめの記事
クレディスイス社屋と道路

おすすめの記事

クレディ・スイス買収劇から1年 未解決の疑問点

このコンテンツが公開されたのは、 クレディ・スイス(CS)がライバル行UBSに売却され破綻を免れてから1年が経過した。2つの大銀行の合併作業はまだ進行中であり、いくつかの重要な疑問が未解決のままだ。

もっと読む クレディ・スイス買収劇から1年 未解決の疑問点

報告書は、TBTF法はスイス国内に焦点を当てすぎていると結論付けた。スイスを拠点として国際的に活動する「システム上重要な銀行」の清算・再編計画は、国際的な活動を考慮しなければならないと提言。 資本・流動性規制の緩和は避けるべきで、 現行の監査監督規制の見直しが必要だと忠告した。

英語からのDeepL翻訳:ムートゥ朋子

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

笑顔で握手を交わす閣僚

おすすめの記事

2025年のスイス連邦大統領はカリン・ケラー・ズッター氏

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦議会は11日、カリン・ケラー・ズッター副大統領兼財務相(急進民主党、60歳)を新大統領に選出した。新副大統領にはギー・パルムラン経済・教育・研究相(国民党、65歳)が選ばれた。

もっと読む 2025年のスイス連邦大統領はカリン・ケラー・ズッター氏
健康保険カード

おすすめの記事

医療費の高騰、依然としてスイス国民の最大の関心事 調査

このコンテンツが公開されたのは、 大手金融機関UBSが12日発表した調査「心配事バロメーター」によると、依然として医療費と健康保険料の高騰が最大の懸念事項だったことが分かった。環境と年金も懸念事項にあがっている。

もっと読む 医療費の高騰、依然としてスイス国民の最大の関心事 調査
連邦工科大学の校舎

おすすめの記事

スイス連邦工科大、留学生の授業料3倍引き上げ決定 25年秋学期から

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)と同ローザンヌ校(EPFL)が、留学生の授業料をスイス人学生の3倍に引き上げ、2025年秋学期から1学期当たり2190フランにすることを決めた。

もっと読む スイス連邦工科大、留学生の授業料3倍引き上げ決定 25年秋学期から
ベツナウ原発

おすすめの記事

世界最古の原子力発電所、2033年に稼働終了

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの電力会社アクスポは5日、世界で最も古いベツナウ原子力発電所の稼働を2033年に終了すると発表した。33年までの運転継続にかかる追加事業費は3億5000万フラン(約600億円)を予定している。

もっと読む 世界最古の原子力発電所、2033年に稼働終了
アルコール検査

おすすめの記事

スイスのドライバー、2割が飲酒運転

このコンテンツが公開されたのは、 欧州など39カ国のドライバーを対象にした調査で、スイスでは2割超が飲酒運転をしたことがあると回答した。

もっと読む スイスのドライバー、2割が飲酒運転
銃口

おすすめの記事

狩猟中の事故で男性死亡 スイス西部

このコンテンツが公開されたのは、 先月29日午後、スイス西部ヴォー州で64歳の男性が狩猟中に死亡した。イノシシを撃とうとした 猟友会のメンバーに射たれた。

もっと読む 狩猟中の事故で男性死亡 スイス西部
サルコ

おすすめの記事

自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が釈放 70日拘束

このコンテンツが公開されたのは、 今年9月にスイスで初めて使われた自殺カプセル「サルコ」について、連邦内閣は、当分の間、立法措置は必要ないとの見解を示した。サルコ運営団体は2日、身柄を拘束されていたフロリアン・ヴィレ代表が釈放されたと発表した。

もっと読む 自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が釈放 70日拘束
金塊

おすすめの記事

スイス在住長者番付2024 トップはシャネルのオーナー

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの金融誌ビランツがまとめた長者番付2024年版によると、スイス在住の富豪トップに輝いたのは、仏高級ブランド・シャネルのオーナー家族の1人、ジェラール・ヴェルテメール氏だった。上位の顔ぶれはほぼ前年と同じだが、香料メーカーのフィルメニッヒ(Firmenich)創業家が初のトップ10入りを果たした。

もっと読む スイス在住長者番付2024 トップはシャネルのオーナー
ポイ捨てされた空き缶と小鳥

おすすめの記事

スイス、ポイ捨て「少ない」8割 アンケート調査

このコンテンツが公開されたのは、 スイス・ポイ捨て防止コンピテンスセンター(IGSU)の年次アンケート調査によると、「スイスでは多くのゴミが適切に処理されていない」と考える人は16%にとどまった。

もっと読む スイス、ポイ捨て「少ない」8割 アンケート調査

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部