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スイスとウクライナ、和平案巡るダボス協議に参加訴え

ウクライナのアンドリー・イェルマーク大統領府長官
ダボスでの会議後、報道陣の取材に応じたウクライナのアンドリー・イェルマーク大統領府長官 Keystone / Gian Ehrenzeller

ウクライナの和平について話し合う「平和の公式」国際会議の第4回会合が、世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)に先立つ14日、スイスのダボスで開かれた。80を超える国・国際機関が参加したが、具体的な合意には至らなかった。ロシアや中国は参加を見送ったが、スイスのイグナツィオ・カシス外相は、これらの国々が関与することの重要性を訴えた。

ウクライナ政府の高官らは、協議は「オープンで建設的」だったとし「包括的で公正かつ永続的な和平」を達成するための重要な原則について、参加国が同じ認識を持つことができたと述べた。

会議ではウクライナが「平和の公式」を提示し、80を超える国と国際機関の安全保障担当高官らが和平への道筋について議論した。ウクライナのアンドリー・イェルマーク大統領府長官は会合後の記者会見で、同案が多くの国々に支持される「共同案」になることを期待していると語った。

「平和の公式」は10項目から成る和平案で、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が2022年11月に提唱した。同案について、これまでにコペンハーゲン、サウジアラビアのジッダ、マルタで国際会合が行われた。

第4回会合の共同議長を務めたスイスのカシス外相は、「地球の運命を左右する」事態において話し合いに代わるものはないと訴え、「約2年にわたる戦争を経て、ウクライナの人々は緊急に平和を必要としている。ウクライナがこの戦争を終わらせるために、私たちはできる限りのことをしなければならない」と語った。

会議の開催にあたり厳重な警備体制が敷かれた。ダボス上空は今月12日から飛行禁止となり、ダボスの中心地は警察や軍による警備が強化された。50人を超える報道関係者に対しては開始直前に記者会見の場所を知らせるという徹底ぶりだった。

ウクライナは、15日に始まるダボス会議に合わせ第4回会議を共催するようスイスに呼び掛けていた。WEF創設者のクラウス・シュワブ氏とヒルダ夫人はカシス氏とともに記者会見の最前列に座り、主要な外交関係者が集まる場としてのWEFの重要性を印象付けた。

和平案に対する国際的な圧力

会議では、和平案の6~10項目に掲げられた「敵対行為の停止」と「ロシア軍の撤退」、「正義の回復」、「環境破壊行為(エコサイド)対策」、「エスカレーションの防止」、「戦争終結の確認」を中心に話し合われた。

ウクライナのユリア・スビリデンコ第1副首相兼経済相は、「ロシアはウクライナ人だけでなく、世界中の人々を標的にしている」と述べた。

食料安全保障や人道的問題についても話し合われた。スビリデンコ氏は「ロシアが土地や貯蔵施設を破壊し、輸送を妨害している」ため小麦の価格が高騰し、現在3億人以上が供給不安を抱えていると訴えた。

今回の会議には、支援の中心となっている米国や欧州諸国に加え、ブラジル、インド、サウジアラビア、アルゼンチン、南アフリカからも参加があった。イェルマーク氏とカシス氏は、前回よりも多くの国・機関の参加が得られたことは、協議の成功を裏付けるものだとした。

カシス氏によれば、ロシアとの接触を促進し「この戦争から抜け出す創造的な方法を見つける」ためには、これらの国々の参加が非常に重要だという。ウクライナは現在、南アメリカとアフリカでの二国間会議の開催を計画している。

ロシアへの働きかけが最も期待される中国は、2回連続で参加を見送った。イェルマーク氏は、中国がキーウでの大使会談やジッダでの会議には出席したことに触れ、「中国は重要で影響力のある国。中国を関与させる方法を探す」と述べた。ダボス会議には中国から李強首相が出席する。ゼレンスキー氏が李氏と会談するかどうかについては明らかになっていない。

ロシアなくして和平なし

カシス氏は14日、戦争終結に向けた交渉は長い道のりになるとの認識を示し、「何らかの形でロシアをこのプロセスに関与させる必要がある。ロシアの関与なしでの平和はありえない」と述べた。

ロイターの報道外部リンクによると、ロシアは「平和の公式」について、ロシアの関与なしに和平を見出そうとする、不合理なプロセスだと主張している。

そうした反応についてカシス氏は、会談の目的はロシアを満足させることではなく、10項目の和平案について国家間の共通認識を作り「いつ、どのようにロシアを関与させることができるか」を見極めることだと明言した。

無駄にできない時間

ウクライナの一部では依然として激しい戦闘が続いている。カシス氏はそうした中でも和平に向けた準備を進めることの重要性を訴えた。

同氏は「毎日、ウクライナでは何十人もの民間人が亡くなっている。我々に待つ権利はない」と述べ、状況が許す限り「準備を整えなければならない」と強調した。会議は「時が来たときに、ロシアとのプロセスを開始できるようにする」ためだとした。

イェルマーク氏は会議後、首脳級の第1回平和サミットの準備を進められる可能性があると発言したが、開催期間については明言しなかった。

今回の会議は、西側諸国の「支援疲れ」が懸念される中での開催となった。さらなる資金と武器供与なしに、ウクライナはロシアからの攻撃から身を守ることができるのか、見通しは不確かだ。

スイスの役割

今回の会議は、2022年2月にロシアがウクライナ侵攻を開始して以来、スイスが主催した2回目のウクライナに関する国際会議となった。

スイスは2022年7月、ティチーノ州ルガーノでウクライナの復興支援を議論する国際会議を開催。40超の国と欧州投資銀行や経済協力開発機構(OECD)などの国際機関が参加し、汚職との戦い、民主的価値観への約束、透明性のある政府、基本的権利の保障など7つの原則が盛り込まれたルガーノ宣言に署名した。

カシス氏は、ダボスで「平和の公式」会議を共催できた要因として、スイスの「平和構築の長い伝統」を強調した。

スイスは、核の安全、食料安全保障、戦争の終結など、いわゆる平和の公式を扱う3つの作業部会にも参加している。このほかウクライナに対し、約4億フランの人道支援を行っている。このうち約1億フランは地雷除去活動に充てられる。

またスイスは、ウクライナに対し2026年までに少なくとも15億フランを支援する方針を明らかにしている。スイスは中立政策により、紛争当事者に武器を提供することはできない。

昨年12月、スイス連邦政府は制裁措置の一環として、77億フランのロシア資産を凍結したと発表した。

英語からの翻訳:大野瑠衣子、校正:ムートゥ朋子

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