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スイス中銀、外国為替市場での無制限介入を撤廃 その影響は? 

投資家の気分は・・・ Keystone

スイス国立銀行(スイス中銀)が昨日15日、為替相場の対ユーロ上限1.20フランを即時撤廃すると突如発表。世界中に衝撃が走った。スイスが導入していた外国為替市場での「無制限介入」とは?今後の影響は?クイックガイドで見てみた。


 

質問 : これまでスイスのとってきた、無制限介入とは? 

対ユーロでのスイスフランの過剰な上昇を防ぐため、スイス国立銀行(SNB)が2011年に導入した金融政策。ユーロ圏はスイスの最大の貿易相手であるため、この政策が必要だと考えた。ユーロが弱ければスイス製品の価格が上昇し、スイスの輸出は打撃を受けるからだ。

そこで、スイス中銀は為替1ユーロ=1.20フランの上限を設定。ユーロをこれ以下に下げないと約束した。この為替介入によりスイス中銀は過去3年間、ユーロ買いに多額のフランを使ってきた。そして突然、為替レートの上限撤廃を発表。あっという間にスイスフランは対ユーロで30%近くも急騰した。

質問 : 前触れもなく、なぜ昨日なのですか?

段階的廃止という選択肢もある中で、市場に混乱を引き起こすことなくこうした介入を停止することは常に難しいことだ。スイス中銀のトーマス・ジョルダン総裁は突然の撤廃について、「これまでの為替介入により、スイスの工業生産業界には、状況に対応する十分な時間が与えられた。介入の目的は果たされた。『国際的状況』を考慮すると、介入の長期化は適切ではないと判断した」と語っている。

ここでいう国際的状況とは、今後米ドルが強くなることや欧州中央銀行が今月下旬にも大量のユーロを市場に流すのではないかという懸念。さらに、ギリシャのユーロ圏離脱に対する懸念などを意味している。

またスイス中銀は先月、外国の中央銀行がスイスフランを過剰に保持するのを抑制する目的で、外国中銀のスイス国内預金に対し課税する可能性があると発表した。伝統的に、スイスフランは安全な通貨だと考えられ、金融が不安定な時には銀行は好んでフランを購入する。フラン保持の抑制もまた、スイスフランが強くなりすぎるのを防ぐための一策だ。

質問 : 上限撤廃は良いニュースなのでしょうか?

もしあなたがスイスフランでお金を稼ぎ、国外で休暇を過ごそうと考えていれば、そうだろう。スイスでは商品の大半が輸入品なので、スイスの消費者にとっては小売価格の値下がりも意味する。

質問 : では、誰にとって不利なのでしょうか?

トレーダーたちはこのような不意打ちを歓迎しない。最初の反応は、まずスイス株の売却だった。スイス株式市場は1日にして25年以来の大幅な下落を記録した。

また、過去3年間、対ユーロの上限に守られて安心しきっていたスイスの輸出業者もダメージを受ける。昨日のニュースは彼らにとって、何の見返りも期待できないのに行った「アイスバケツチャレンジ」のようなものだ。

スイス連邦貿易組合もまた、このニュースを歓迎しておらず、雇用や給料に影響が出るだろうと警告している。

質問 : スイスに来る観光客にとってはどうでしょう?

ユーロ圏、英国、米国からの観光客にはすぐに影響が出るだろう。2日前までは食事に100フラン程度払っていたのが、今日は125フラン近くになるからだ。観光客はスイスの旅行先での節約を受け入れるか、別の国に行こうと考えるだろう。スイスのホテル業界は泣きたい気分ではないだろうか。

質問 : 今後はどうなりますか?

スイス中銀は、今後も引き続きフランの安定をはかり、例えばユーロなどの外貨買い付けによる為替市場介入を行う可能性がある。だが、中銀の将来的な通貨政策は、不思議なことに明らかにされていない。

スイス中銀は通貨バスケット制に転換していくのではないかと見るエコノミストもいた。だが、それは起こっていない。その代わりに、中銀が今後どうフランを守っていくのかという明確な方針は打ち出されておらず、そうした中、市場はかなり混乱している。

(英語からの翻訳・由比かおり 編集・スイスインフォ)

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