スイスの視点を10言語で

スイス議会、第三国出身者の就労制限を緩和へ

A lecture hall filled with university students
法改正により、スイスへで学ぶ学生の就労に大きく門戸が開かれる © Keystone / Christian Beutler

スイス全州議会(上院)は5日、スイスの大学の学位取得者は外国人の就労定員の対象外とする外国人・統合法改正案の審議開始を賛成24票、反対20票で承認した。法案が最終的に可決されれば欧州圏外の出身者もスイスで就労する道が広がる。

改正法案を諮問された上院の国務委員会は8票対3票で否決していた。このため、上院本会議に可決された同案は委員会に再諮問される。国民議会(下院)は既に3月に通過済み。

法改正は起業家のマルセル・ドブラー下院議員(急進民主党=FDP/PLR)の動議を下地とする。同氏はスイスが育成した専門家ならスイスで働けるはずだと主張した。動議は下院で可決され、改正法案が起草された。

深刻な技能労働者不足

ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)によると、欧州連合(EU)や欧州自由貿易連合(EFTA)以外の第三国からの高度人材の受け入れには年間8500人の定員が定められている。2021年にスイスの学位を得た第三国出身者は4366人にのぼる。

おすすめの記事

おすすめの記事

越境労働者

このコンテンツが公開されたのは、 外国から国境を超え、スイスの会社に通勤する人の数は近年着実に増え、現在は31万2000人強。越境労働者に発行されるGタイプの滞在許可証保持者は今日、スイスの労働者全体の6%を占める。

もっと読む 越境労働者

起業家のドリアン・セルツ氏は、インド出身の従業員を雇用するために複雑な手続きを踏まなければならなかった。SRFの取材で、スイスで学ぶ外国人学生には機会が与えられるべきだと語った。「私の理解が正しければ、大学は公的資金で運営されている。(法改正は)何らかの恩返しをする機会になる」

卒業生400~500人が就職?

エリザベット・ボーム・シュナイダー司法相によると、連邦内閣も改正案に憲法上の問題はないとの見解だ。対象となる第三国労働者は約400~500人と推定される。連邦内閣は、その多くはスイスの教育を受け、通常はスイス社会にうまく溶け込んでいると主張していた。

連邦統計局によると、第三国出身の卒業生の約3分の2が1年後もスイスに住んでいる。うち何人が就職しているかは不明だが、経済団体「エコノミー・スイス」は10~15%と見積もる。

下院は「大学の学位に関連する職務で、資格のある有益な雇用であれば」 スイスの大学の学生も対象となると述べている。

※2023年6月7日7:30(スイス時間)に配信した記事を修正しました。修正前は既に改正法案が可決済みとしていましたが、正しくは委員会に再諮問を決めたところです。

英語からの翻訳:ムートゥ朋子

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

牧草をはむ牛

おすすめの記事

スイス、PFASの規制強化を検討

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦政府は「永遠の化学物質」の異名を持つ有機フッ素化合物(PFAS)の規制強化に着手した。飲み水の上限値は来年から引き下げられる。

もっと読む スイス、PFASの規制強化を検討
ツークの街並み

おすすめの記事

スイス検査・認証SGSが本社移転 ジュネーブからツークへ

このコンテンツが公開されたのは、 世界有数の試験・検査・認証機関であるスイスのSGSは、本社をジュネーブ州からツーク州に移転する。大手多国籍企業の移転は、ジュネーブ州の税収にも影響を及ぼしそうだ。

もっと読む スイス検査・認証SGSが本社移転 ジュネーブからツークへ
鏡を見るバレエダンサー

おすすめの記事

ローザンヌ国際バレエコンクール2025始まる 日本から13人出場

このコンテンツが公開されたのは、 スイス西部ローザンヌで2日、第53回ローザンヌ国際バレエコンクールが始まった。23カ国から集まった85人の若手ダンサーが8日の最終選考進出を目指し、さまざまな課題曲に挑戦する。

もっと読む ローザンヌ国際バレエコンクール2025始まる 日本から13人出場
自転車で遊ぶ子ども

おすすめの記事

スイス政府、国際養子縁組を禁止へ

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦政府は29日、国外から子どもを迎える国際養子縁組を将来的に禁止する意向を表明した。虐待防止措置の一環としている。

もっと読む スイス政府、国際養子縁組を禁止へ
生殖治療の画像

おすすめの記事

スイス、全てのカップルへの精子・卵子提供を合法化へ 政府方針

このコンテンツが公開されたのは、 スイス政府は29日、生殖補助医療法を改正し、カップルに対する卵子提供を合法化する方針を発表した。政府はまた既婚・未婚問わず全てのカップルへの精子・卵子提供を解禁する意向を示した。

もっと読む スイス、全てのカップルへの精子・卵子提供を合法化へ 政府方針
研究施設で働くマスク姿の人

おすすめの記事

スイスに感染症情報解析センター発足

このコンテンツが公開されたのは、 感染症に関する情報を収集・解析する「病原体バイオインフォマティクスセンター(CPB)」が23日、スイスの首都ベルンに新設された。集約したゲノムデータを管理・解析し、スイスの感染対策を改善する役割を担う。

もっと読む スイスに感染症情報解析センター発足
茶色い除湿器

おすすめの記事

ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)は10日、電気を使わない除湿器を開発したと発表した。壁や天井の建築材として、空気中の湿気を吸収し一時的に蓄えることができる。

もっと読む ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
Xマークの画面

おすすめの記事

スイスでX離れ進む

このコンテンツが公開されたのは、 スイスで「X」から撤退を表明する企業や著名人が相次いでいる。

もっと読む スイスでX離れ進む

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部