スイスのシュナイダー・アマン経済相は中国の政財界要人と会談するために訪中した
Keystone
5~9日に訪中したヨハン・シュナイダー・アマン経済相は、中国がスイスの企業を買収できるのにその逆ができない現状は不公平だと指摘した。
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経済相は日曜紙シュヴァイツ・アム・ヴォッヘンエンデに9日掲載されたインタビューで、こうした現状を変える必要があるとの見方を示した。電力や通信事業のようなインフラについては、「国内企業が国外から買収される恐れがある場合」には政府が介入すべきだと語った。中国だけでなく米国企業による買収にも同じことが言えると述べた。
現在、中国でスイス企業は中国企業との合弁事業しかできない。経済相はスイス企業も中国企業を買収できるよう、相互主義を徹底すべきだと主張した。
≫スイスの通信相も中国企業によるスイス企業の「買いあさり」を批判
経済相はこの問題について中国当局とどう対応しているかは明かさなかった。訪中前、スイス・ドイツ語圏の公共放送(SRF)に対し「私の理解では、中国が(外国企業に)株式の過半数を譲り渡さなければいけなくなるのは、時間の問題だ」と語り、交渉が進んでいることをほのめかした。一方、外国企業の買収を規制するために許認可機関の新設をスイス議会が要求しているのに対しては「それは行き過ぎた対応だと考える。法制化の必要はない」と述べた。
今回の訪中の主眼は買収規制とスイスが中国と締結した2014年自由貿易協定(FTA)。経済相は「協定を見直しさらに障壁を取り除くことができるか協議する」と語った。フラン高や中国の経済減速にも関わらず、スイスの対中輸出額は「金を除いて年8%ペースで伸びている」という。
中国はスイスにとって欧州連合(EU)と米国に次ぐ輸出相手国で、17年の輸出額は370億フラン(約4兆2千億円)だった。スイスは医薬品や機械、時計の輸出が多く、中国からは機械や電気製品、衣料品などを輸入する。中国はスイス企業にとってアジア最大の投資先でもある。
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中国はスイスの大親友
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中国からはほぼ毎月、何らかの派遣団がスイスを訪れている。経済、金融、研究、環境や気候、文化、そして人権と、分野は多岐にわたる。このような両国関係の基礎を築いているのは、相互に寄せる敬意と信頼だ。
2016年4月、当時の連邦大統領ヨハン・シュナイダー・アマン氏が公式訪問で北京を訪れた。それから1年も経たないうちに、今度は中国の習近平(シーチンピン)国家主席がスイスの首都ベルンを訪れた。これほどの短期間に、国家元首が相互に訪問することはいたって珍しい。
連邦外務省アジア太平洋地域課のヨハネス・マティアッシー課長は「これは中国がスイスを重視している証だ」と言う。「今回の訪問が単なる表敬訪問ではなく、実質的な意味を伴う重要な訪問であることは明らかだ」
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中国企業がスイスを選ぶ理由
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スイスには今後数年、多くの中国企業が上陸する、と東軟グループ(Neusoft)の会長兼最高経営責任者、劉積仁(リュー・ジレン)会長は予想する。
数々の中国企業が昨年、スイス企業の合併・買収(M&A)を成立させニュースの見出しを飾った。バーゼルに本拠を構える農業バイオ大手のシンジェンタを、過去最高額の433億ドル(当時レートで約4兆8千億円)で買収した中国の大手国有企業「中国化工集団(ケムチャイナ)」もその一つだ。
さらに多くの中国企業が安定した政治、技術的なノウハウ、強固な金融システム、低い法人税率といったメリットを享受しようと、スイスに欧州支社を置こうと計画している。自由貿易協定(FTA)や1月中旬の習近平国家主席のスイス訪問は、両国間の外交関係が最良な状態を保ちつつ、一段とその傾向が強まることを物語っている。
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スイス投資に酔いしれる中国企業
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中国企業によるスイスへの昨年の投資額は48億ドル(約5400億円)と、前年の4倍に達したことが、法律事務所ベーカー&マッケンジーの調査で分かった。430億ドルにのぼった中国化工集団(ケムチャイナ)による農業バイオ大手シンジェンタの買収案は、規制当局の審査結果待ちにあり、同調査では除外している。
活発な中国投資の全体像を外観すると、同社の調査では中国による欧州全体への2016年の直接対外投資(FDI)は総額460億ドル(前年比90%増)、対北米では480億ドル(189%増)となった。
昨年、中国の海航集団(HNAグループ)はスイスの旅客機関連サービス、ゲートグループ・ホールディングやSRテクニクスを買収。その前に同社はスイスポートを買収していた。その他、近年の巨額取引としては、Haers社によるアルミ製ボトル製造のシグ(Sigg)社買収がある。
他の中国企業はスイス企業を買収せずにスイスに投資してきた。中国のソフトウエア大手、東軟グループ(Neusoft)は09年以来、欧州の拠点をアッペンツェルに置いている。東軟の劉積仁(リュー・ジレン)会長は先月の世界経済フォーラム(WEF)で、「最先端のサービス分野への多角化を図り、中国のFDIは今後数年でさらに増えるだろう」とスイスインフォに語った。
「中国において、スイスは透明性が高くて親しみやすく、ビジネス環境のさまざまなランキングで上位を占める安定した国、というイメージだ。海外展開を考えている中国企業は、今後さらにスイスに進路を向けるようになるだろう」
ベーカー&マッケンジーによると、中国企業による欧米への投資額はこの10年間で26億ドルから940億ドルに増えた。その過半は過去3年で急増した。
だが同社は、各国の規制当局が買収案件をより厳しく監視し、中国当局も資本の海外流出を抑えようとするため、中国によるFDIの増加ペースは減速するとみている。同社の調査では、昨年は欧米で計740億ドル以上に値する30の買収提案が阻止された。
ベーカー&マッケンジー中東アフリカ・中国グループのトーマス・ギレス会長は「政治的・規制的な監視の目はより厳しくなり、政治的なリスクの精査と規制への対応は、全体的な買収戦略として非常に重要になる」と話す。
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中国のスイス企業買収、「スイス製」と「中国製」を合併する難しさ
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中国にとって欧州は、一層魅力的な投資の対象になっている。農業バイオ大手シンジェンタ、商品取引マーキュリア、航空機の地上支援スイスポートなど約70社あまりのスイス企業が、すでに中国企業によって合併・買収(M&A)された。一方で、中国勢の一連のM&Aは一部のスイス人、そして中国人の間でも怒りや懸念を生み出し、さらに文化の違いをいかに克服するかという問題を浮き彫りにしている。
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