精神病患者に対し自殺ほう助を行ったとして起訴されたスイスの自殺ほう助団体代表エリカ・プライシヒ被告
Keystone / Ronald Wittek
精神疾患を持つ女性の自殺をほう助したとして、殺人罪などに問われた医師でスイスの自殺ほう助団体ライフサークル代表エリカ・プライシヒ被告に対する控訴審が7日、バーゼル・ラント準州裁判所であり、裁判所は第1審に続き、殺人罪では無罪とした。
このコンテンツが公開されたのは、
州裁判所はまた、同被告に対し、精神病患者への医療活動を4年間禁止とする第1審判決を破棄。致死薬の管理を巡る医療製品法違反は原則維持したが、執行猶予付き懲役15カ月は破棄し、罰金額も減額した。
同被告は精神疾患を持つ66歳の女性に致死薬を提供し、自殺をほう助したとして起訴された。公判では、同被告が女性の健全な判断能力の有無について、精神科の専門医の意見を得なかった点などが問われた。
検察側は故意の殺人だったとして懲役5年を求刑していたが、地元の刑事裁判所は2019年、殺人罪については無罪と判断。ただ致死薬の管理に落ち度があったとして医療製品法違反は有罪とし、執行猶予付き懲役15カ月、罰金2万フラン(約220万円)の判決を言い渡した。この判決に対し、被告、検察の双方が控訴していた。
州裁判所は精神科医の意見の必要性について、患者の精神状態を考慮した結果、意見を得る必要はなかったと結論付けた。
スイスでは利己的な動機でない自殺ほう助が合法化されているが、精神病患者については「患者本人の健全な判断能力」の証明が困難なため、自殺ほう助団体が支援を行うケースはまれだ。精神病患者の自殺ほう助の基準に言及した過去の連邦裁判決も過去あるが定義はあいまいで、具体的にどのような症状だと専門医の意見が必要なのか、法的に明確に定められているわけではない。
そうした精神病患者の自殺ほう助について、一定の司法判断を示した今回の判決は画期的と言える。
判決は上告される可能性がある。
おすすめの記事
スイスで人身取引被害が増加
このコンテンツが公開されたのは、
「人身取引と闘うプラットフォーム(Plateforme Traite)」は2023年、スイスで197件の人身取引(人身売買)事案を記録した。前年比で11%増加した。
もっと読む スイスで人身取引被害が増加
おすすめの記事
スイス最高裁、中期中絶に父親の発言権認めず 「被害者ではない」
このコンテンツが公開されたのは、
妊娠中期に中絶した女性を元恋人の男性が告訴した事件で、スイスの連邦裁判所(最高裁)は25日、男性は「被害者」に当たらないとして訴えを却下した。
もっと読む スイス最高裁、中期中絶に父親の発言権認めず 「被害者ではない」
おすすめの記事
「建国記念日に花火欠かせない」半数 スイス世論調査
このコンテンツが公開されたのは、
スイス人の半数が、打ち上げ花火は8月1日の建国記念日に欠かせないと考えていることが最新の調査で分かった。しかし、回答者の大多数は個人での花火打ち上げに反対している。
もっと読む 「建国記念日に花火欠かせない」半数 スイス世論調査
おすすめの記事
スイスで水の事故相次ぐ 週末に3遺体発見
このコンテンツが公開されたのは、
スイス各地で気温が上がった20~21日の週末、水の事故が相次いだ。
もっと読む スイスで水の事故相次ぐ 週末に3遺体発見
おすすめの記事
スイス、EV・ハイブリッド車が好調
このコンテンツが公開されたのは、
スイス自動車輸入組合オート・スイスの最新データによると、今年上半期のスイスの新車登録台数の58%はハイブリッド車と電気自動車(EV)だった。
もっと読む スイス、EV・ハイブリッド車が好調
おすすめの記事
大雨被害で多くの登山・ハイキングコースが閉鎖 スイス
このコンテンツが公開されたのは、
大雨による洪水や地滑りが発生したスイスでは、依然として約620カ所の登山・ハイキングコースが閉鎖されている。特に南部のヴァレー(ヴァリス)州で大きな被害が出ているという。
もっと読む 大雨被害で多くの登山・ハイキングコースが閉鎖 スイス
おすすめの記事
ジュネーブ空港、遅延対策で割増料金を導入へ
このコンテンツが公開されたのは、
ジュネーブ空港は騒音対策のため、割当て制度を導入する。午後10時以降に離陸するフライトに割増料金を課す。
もっと読む ジュネーブ空港、遅延対策で割増料金を導入へ
おすすめの記事
スウォッチ1~6月期売上高14.3%減 中国の需要低迷が重荷に
このコンテンツが公開されたのは、
スウォッチが15日発表した1~6月の純売上高は34億5000万フラン(約6070億円)と、前年同期比で14.3%減った。中国の高級品需要の落ち込みが、スイス時計業界全体の重荷になっている。
もっと読む スウォッチ1~6月期売上高14.3%減 中国の需要低迷が重荷に
おすすめの記事
トランプ氏銃撃、スイス大統領「容認できない」
このコンテンツが公開されたのは、
ドナルド・トランプ前大統領が13日に銃撃された事件を受け、スイスのヴィオラ・アムヘルト大統領は「政治的な暴力は容認できない」と訴え、一日も早い回復を祈った。
もっと読む トランプ氏銃撃、スイス大統領「容認できない」
おすすめの記事
ツェルマット行き鉄道、少なくとも8月中旬まで一部区間で運休 大洪水で
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部を中心に発生した大規模な洪水の影響を受け、ツェルマット~ディセンティス間を結ぶマッターホルン・ゴッタルド鉄道(MGB)は、少なくとも8月中旬まで一部区間で運休するとの見通しを明らかにした。
もっと読む ツェルマット行き鉄道、少なくとも8月中旬まで一部区間で運休 大洪水で
続きを読む
おすすめの記事
スイスで安楽死の権利を得た日本人が思うこと
このコンテンツが公開されたのは、
重い神経性疾患を持つ20代後半の日本人女性が、スイスの自殺ほう助機関で自死する許可を得た。生活の質が著しく低い患者が豊かに生きるための「お守り」として、日本でも安楽死を認めて欲しいと感じている。
もっと読む スイスで安楽死の権利を得た日本人が思うこと
おすすめの記事
年間1500人超が選択 スイスの安楽死
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは安楽死を求め自殺ほう助団体に登録する人が増えている。国内には外国人を受け入れる団体もあるが、自殺ほう助を受けるには厳しい条件をクリアしなければならない。
もっと読む 年間1500人超が選択 スイスの安楽死
おすすめの記事
スイスの安楽死支える「死の付添人」
このコンテンツが公開されたのは、
スイスには「自殺付添人」という仕事がある。安楽死する患者の元に致死薬を届け、最期の日を迎えるまで患者本人や家族に寄り添う。スイス最大の自殺ほう助団体エグジットでは、退職世代がその役割を担う。
もっと読む スイスの安楽死支える「死の付添人」
オピニオン
おすすめの記事
スイスの自殺ほう助「すでに収拾つかない」
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで安楽死した女性の本を出したマティアス・アッケレット氏は、スイスの自殺ほう助団体や自殺ほう助そのものを抜本的に考え直すよう訴えている。
もっと読む スイスの自殺ほう助「すでに収拾つかない」
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。