スイス連邦金融市場監督局(FINMA)は11日、米フェイスブック社が独自に発行を計画する仮想通貨「リブラ」について、決済システムに該当し関連法を順守するよう求める声明外部リンクを発表した。リブラの発行を司るフェイスブックの子会社「リブラ協会」がジュネーブに本拠を置くことから、スイス金融当局の対応が米国を始め世界から注目されていた。
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2016年からスイス在住。17年にswissinfo.ch入社。日本経済新聞社で8年間記者を務めた。関心テーマは経済、財政、金融政策、金融市場。
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リブラ外部リンクは相場を安定させるため複数の国の通貨や短期国債を担保にする「ステーブルコイン」に分類される。FINMAは2018年に仮想通貨などトークン(デジタル権利証)を3分類しそれぞれが順守すべき法令を整理した指針を発表したが、ステーブルコインそのものを規制する法制度はない。このためリブラ協会がFINMAに対し、どのような基準を満たすべきか照会していた。
FINMAは声明で、リブラは現在の発行計画によればスイスの金融市場インフラ法に基づく「決済システム」の認可が必要だと明記。スイスの決済システムは国際水準である「金融市場インフラのための原則」に基づき、サイバーリスクなどへの対処を求めている。反マネーロンダリング(資金洗浄)法にも則る必要がある。
「同じリスクには同じルールを」原則を踏襲し、一般の決済システムが備えるべき引当金も必要だとする。リブラは一般の決済システムよりリスクが高いことから、資本配分や流動性、リスク分散、引当金管理の分野などで追加的な要件が課される。銀行法の規定が適用される可能性があるとする。
FINMAは引当金の管理に関する収益とリスクは、ステーブルコインを所有する一般消費者ではなく、リブラ協会が引き受けるべきだと強調した。またコーポレートガバナンス(企業統治)や反資金洗浄については国際的な規制も考慮するよう求めた。税法や競争法、データ保護法に関してはFINMAの権限外だとする。
FINMAによる営業許可の手続きは、該当の申請をFINMAが受領してから始まる。それまで個別企業の認可の経緯については口外されないとした。一方、リブラ協会は11日、FINMAに決済システム業の許可を申請したと発表外部リンクした。
FINMAの声明に先立ち、スイス銀行協会は10日、ウェブサイトで「リブラは銀行業の認可が必要だ」とする見解外部リンクを表明していた。FINMAは「銀行に似たようなリスクはある」としながらも、銀行業に当たるとは認定しなかった。
5日にはスイス国立銀行(中央銀行)のトーマス・ジョルダン総裁が「外貨担保型のステーブルコインがスイスで流通すると、金融政策の効力が発揮されなくなる」との懸念を表明。10日には米国のシガル・マンデルカー財務次官(テロ・金融情報担当)がベルンの米国大使館で記者会見し、リブラは法人登録先に関わらず米国の資金洗浄対策の規制を守る必要があるとの認識を示していた。
一方、スイス連邦政府は8月、上院のビルラー・ハイモ・プリスカ議員から質問主意書外部リンクでリブラに対する政府見解を問われ、「(スイスの)経済的位置にとって前向きな動き」であり、関連規制に関して「改正は必要ない」と回答していた。
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