「ヨーロッパの安定化がスイスフランを抑える」
スイス国立銀行 ( SNB/スイス中銀 ) のフィリップ・ヒルデブラント総裁は、ヨーロッパが再び安定すれば、今後数年間はこれ以上スイスフランが高くなることはないとみている。
さらに、外国の投資家が購入できるスイスの不動産や有価証券の数も非常に限られていると言う。
仮の港
2月27日付の日曜新聞「ゾンターク ( Sonntag ) 」のインタビューで、ヒルデブラント総裁は次のように語った。
「これまでのようなスイスフラン高に陥る危険性は限られている。債券市場も株式市場も不動産市場も、スイスには小規模なものしかない」
そのため、スイスフランに対する需要は実質的な投資よりも第一に金融派生商品 ( デリバティブ ) 市場にはっきりと現れていると言う。「つまり、大部分は一時的な投資なのだ」
「 ( スイスに対する ) 『安全な港』という表現は、そういう意味では正しくない。どちらかというと『仮の港』だ。嵐から身を守ってくれる小さな入り江だが、設備の整った大規模の永久的な港ではない」
ユーロとの連結は不可能
スイス中銀としては、スイスフランをユーロと連結させることはできない。
「そんなことをすれば、独立したマネー政策も通貨政策も取ることができなくなる。これらは連邦憲法や法律で定められている。周辺諸国がスイスと同じくらい安定していなければ、スイスは独自の通貨を長期的に流通させることはできない。したがってわが国にとっても、マネー政策、国庫管理政策、構造政策において、また人口統計学的にヨーロッパが再び安定化することが最重要だ」
現在、救済が必要な銀行に対する規制の施行が検討されているが、ヒルデブラント総裁は新たにこの規制を後押しする姿勢も明白にした。
「これらの規制は、救済の価値のある大銀行を国が救済しなければならなくなる、あるいはアイルランドのように国家が破綻してしまうリスクを大幅に減らすものだ」
銀行側は新規制によってスイスの金融機関の競争力が制限されると批判しているが、これに対しヒルデブラント総裁は
「『つぶすには大き過ぎる ( Too big to fail ) 』という問題に取り組み、解決策を実施すれば、スイスの金融業界の競争力は改善される。世界は変わったのだ」
と反論する。
「5年後には、市場は資本力が最もしっかりしている金融機関を最も評価するようになる。わたしはそう確信している。それらの機関のリファイナンス ( 借り換え ) 金額は最小限になる。新しい世界では、強力な資本が絶対に有利になるはずだ」
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