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22年5月15日の国民投票 臓器提供、ネトフリ法、シェンゲン外国境警備

動画配信大手、スイス映画に出資すべき?国民投票のポイント解説

署名提出
急進民主党、国民党、自由緑の党の青年部メンバーらが昨年1月20日、ベルンの連邦内閣事務局に約6万5千筆の署名を提出。映画文化・映画制作法改正案の施行に反対するレファレンダムを提起した © Keystone / Peter Schneider

ネットフリックス、ディズニー、アマゾンは、スイスの映画やシリーズ番組の制作に出資するべきか?来月15日の国民投票では、これらの大手動画配信サービスに新たな義務を課すか否かが問われる。

国民投票の目的は?

映画文化・映画制作法改正案は、5月15日の国民投票で有権者に是非が問われる案件の1つだ。通称「ネットフリックス法」。同案は動画配信サービスにスイスで得た収益の最大4%を同国の映画やシリーズ番組の制作に出資することを義務付ける。今回、この法律施行に反対するレファレンダムが提起された。

動画配信サービスに出資を義務付ける理由は?

全国・地域のテレビ局には既に、収益の4%を自国の映画産業に出資することが義務付けられている。また、これらのテレビ局が放送するコンテンツの50%はスイスか欧州で制作されたものでなければならない。

連邦政府は動画配信サービスにも同様の義務を課したい考えだ。改正案の主な対象はネットフリックス、アマゾン、(米ワーナーメディア参加の)HBOやディズニーなど。スイスの映画制作への支援を強化し、テレビ局と動画配信サービスの扱いの差をなくすのが狙いだ。

改正案の内容は?

改正案は動画配信サービスに対し、スイスで得た収益の4%を同国の映画やシリーズ番組の制作に出資するよう義務付ける。出資しない場合、相当額をスイス映画産業の振興を目的とした税金として徴収する。スイスの視聴者を対象とした広告を放送する外国のテレビ局にもこの規定を適用する。

連邦内務省文化局(BAK/OFC)外部リンクは、法改正でスイスの映画産業の年間予算が1800万フラン(約22億5千万円)増えると見込む。増収分は、スイスの独立系制作会社やスイスが参加する国際共同制作映画、ドキュメンタリー、ドラマシリーズに充てる。

スイスの独立系プロダクションに給付される助成金は年間約1億500万フラン。財源は政府からの3900万フラン、スイス公共放送協会(SRG SSR)からの3600万フラン、民間テレビ局からの600万フラン、その他民間の出資で賄われている。

改正案はまた、動画配信サービスに対し、配信コンテンツの最低30%をスイス・欧州で制作された作品にするよう義務付ける。

他の欧州諸国の法規制は?

欧州諸国の約半数は動画配信サービスに自国や欧州の映画制作への出資を義務付けている。収益に対する出資割合は国によって異なる。ポルトガルは1%、デンマークは2%、スペインは5%、イタリアは20%、フランスは26%だ。ドイツ、ベルギー、クロアチアなど一部の国は動画配信サービスに課税し、税収を映画振興機関に投入する。課税の他、出資義務も課すことが多い。

欧州連合(EU)も動画配信サービスのコンテンツの30%は欧州作品でなければならないという制約を課す。より高い割合を導入した国もあれば、自国作品の配信割合を追加した国もある。これに加え、EU圏内でサービスを提供する動画配信プラットフォームは、欧州の映画やシリーズ番組を宣伝するよう義務づけられている。

レファレンダムを提起したのは誰か?

中道右派・右派政党の青年部が改正案に反対し、レファレンダムを立ち上げた。レファレンダム委員会のメンバーは、中道右派・急進民主党、保守系右派・国民党、中道・自由緑の党の若者たちだ。ドイツ語圏の消費者保護団体(Konsumentenforum外部リンク)や民間放送局の利益団体(Telesuisse外部リンク)もレファレンダムを支持する。

反対派は、スイスの音響・映像プロダクションは既に十分な助成を受けており、民間企業の追加支援は必要ないと主張。動画配信サービスに対する出資の義務化は経済的自由を侵害し、定額制サービスの料金引き上げにつながるほか、最終的には消費者にしわ寄せが来ると訴える。

また、動画配信サービスにコンテンツの30%をスイスや欧州の作品に割り当てるよう義務付けたクオータ制についても、品質についての基準がなく、他の作品を差別していると批判する。反対派は主張の中で、このような義務は多様性を損ない、利用者の自由を制限すると訴える。

反対派には右派の2大政党の後ろ盾がある。国民党は連邦議会での審議で、映画文化・映画制作法の改正案に全面的に反対した。急進民主党は支持者に5月15日の国民投票で改正案に反対するよう呼び掛けている。

改正案賛成派の主張は?

連邦議会では大多数が連邦政府の改正案に賛成した。急進民主党議員の間で賛否が分かれたものの、左派の社会党や緑の党、中道の自由緑の党や中央党は同案を承認した。国内のテレビ局と動画配信サービスは平等に扱う必要があるとみなしたからだ。

賛成派議員は、他の欧州諸国で導入されている課税や出資義務は定額料金の引き上げにつながらなかったと指摘する。さらに、動画配信サービスに収益の4%をスイスのプロダクションに再投入するよう義務付けることは、映像業界に新たなプレーヤーの出現を促すという。

また、配信コンテンツの30%を欧州作品にする義務は動画配信サービスのコンテンツに一定の多様性を保証すると強調した。なお、スイスがEUの文化産業振興策「クリエイティブ・ヨーロッパ」に復帰する条件としてEUが要求しているのも30%の割り当てだ。

スイスの映画業界で活動する個人や団体外部リンクも法改正への支持を訴える。新たな措置が総じてスイス経済に利益をもたらすと考えているからだ。より意欲的なプロジェクトが実施されることで、雇用の創出、ロケの増加、地元企業の紹介につながる可能性があると期待する。

映画業界はまた、動画配信サービスは演出、脚本、技術面など出資先を自由に選べると指摘。動画配信サービスのビジネスモデルには、世界の映画・シリーズ番組の購入や共同制作が含まれるとしている。

(仏語からの翻訳・江藤真理)

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