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ローザンヌで羽を広げるバレエダンサー

ローザンヌバレエ アクリ・堀本バレエアカデミーの堀本先生、「自分に何ができるかということを考えさせる力を生徒につけたい」

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「ローザンヌ国際バレエコンクールに2003年から毎年生徒を参加させていて、今年は15回目になる」と先生が語るバレエ学校がある。埼玉県の「アクリ・堀本バレエアカデミー」だ。ビデオでの予選が始まった2006年からも、毎年数人の生徒が出場。今までの入賞者も5人を数える。そして今年は出場者が4人もいる。先生の堀本美和さんに、この成功の秘訣やローザンヌ国際バレエコンクールの大切さ、そしてコンクールを通過した後の方向性などを聞いた。

スイスインフォ: まず、なぜ毎年ローザンヌに生徒を送り込めるのか?その秘訣を教えてください。

堀本美和: 私たちは日本の教室で、生徒を特別に扱うことはしていません。この子だけを特別に指導しようとか、この子だけをプロのダンサーにするためにローザンヌに出そうとか、そういうつもりがなくみんなを同等に扱っています。

ただ、同等に扱っても努力する子とか、やはり条件がいい子、例えば体型的に手足が長いとか顔が小さいといった、持って生まれたものもありますし、でもたとえ悪い条件でもそれをカバーするだけの努力をする子もいる。

そういう子たちが、(ローザンヌで入賞した)お姉さんたちを見て育ってきているのかな?という点がある。最初のころの2004年に贄田萌(にえだもえ)ちゃんがローザンヌ賞を取ってから、ローザンヌとの縁ができ、この子がその後バレエ学校や今いるスウェーデンの王立バレエ団に入団したりしたのと同じ道を目指すような、後を追うような雰囲気が稽古場の中にあるのかなと思います。

だから、外国に行きたい、留学したい、自分はプロとしてバレエ団で踊りたいという希望や欲望が、子どもたち全員の中にあると思います。それは上手な子でも下手な子でも。「ローザンヌに行きたい人?」と聞くと、本当に小さな子までが手を上げるんですよ。

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ただ、挫折する子もいるし、私のこの体型では無理というので諦める子もいるし。本当にいろんな子がいますが。

そして、いろんな子がいる中で、身長とか体型的な面でも、また技術的にも、「この子なら外国でやっていける」と思う子には、1年前に「じゃ、来年ローザンヌに行ってみようか」ということを言います。

今回参加した4人も、レベルではまだかもしれないとは思うけれど、彼らの気持ちがすごくローザンヌに向かっていて、ビデオを出したら次々に返事が来て、全員予選を通過したのです。正直驚きました。

スイスインフォ: でも、昨年6位で入賞された中村淳之介さんのときも、初めは謙遜されて「レベルは今一つだ」とおっしゃっていました。きっと今年もまたどなたか入賞されるでしょう。

堀本: そうですね。そういう子を見つけてくれるところがローザンヌのいいところなのです。つまり、そういう入賞するようなきっかけが1週間のうちに出てくる。急に伸びるって、すごいことじゃないですか。考えられないことです。だから、ここは特別。ずっと大切にしていきたいコンクールです。

それとやはり、こうして毎年ここに参加できたり、入賞したりする先輩がいるということは、後輩にとってすごい刺激になっていると思います。

私自身もここに毎年来られて、今年はこうだったとか、今の時代の傾向が分かり、勉強になる。例えば10年前に比べたら、今はもうダンサーのスタイルが抜群ですよね。特に韓国や中国の子は。

そういう中で、(日本の子でそれほどスタイルが抜群ではない場合に)、筋肉の使い方で足がきれいに見えるとか手が長く見えるといったことをこの10年間研究し、多くのことを学びました。

ただクラシックの基本は基本なので、それだけは常にやってないといけないと思っています。それプラスで、踊りにしたときに個性とか、その子にあったものとか、音の使い方といったものは、指導者と生徒の間で作り上げていきますが。

だから、本当に10年前にローザンヌバレエの予選に出したビデオと、今のビデオはまったく変わっていないのです。

スイスインフォ: 昨年16歳の中村淳之介さん、2009年に15歳の水谷実喜さんが入賞されたとき、「若いのにクラシックの基礎がしっかりしている」というお褒めの言葉を審査員からもらっていますよね。

堀本: それは本当にうれしいことですよね。

コンクールなどで、ブームなのか何回転もする子たちが増えているけれど、「実際レッスンやらせてみたら、今一つ…」というようなことは、うちでは絶対にさせないです。そんなに回れなくてもいいから、きちんとポジションができて、きちんとした姿勢がなくちゃいけないと私は思っています。

スイスインフォ: ところで、「ローザンヌ国際バレエコンクールを通過した後」についてですが、ここで入賞してもしなくても「気に入ってもらって学校に行くのが一番幸せだ」と数年前おっしゃいましたが、今も同じ考えですか?

堀本:ここ10数年、生徒を海外に送っていて、一番難しいと思うのは、バレエ学校のシステムとしてディレクターとかトップの人が交代したときに、いろんなことが変わってしまうことです。

例えば、バレエ団でもディレクターが代わると、去年までクラシックをやっていたのに今年はコンテンポラリーしかやらないとか、トウシューズもはかないとか、そういうことになる可能性があるというのが、今の世の中です。

またいろんなところが財政難で、ドイツなんかでもクラシックの「白鳥の湖」とかなら以前はセットを作って衣装も作っていた。でもそれではお金がかかる。だからコンテンポラリーばっかりなんですよ。

コンテンポラリーが悪いとは言いませんが、17、18才の子がそれまでトウシューズをずっとはいていて、これからバレエスクールでクラシックもやりたいと思っていて、ところが就職先がトウシューズをはかせないとなると、いろんなことが変わってくる。

だから、私の中で前は「気に入ってもらったところに行くのが幸せ」と思っていたのですが、人生の中でいろんなことが起こり得るということがここ数年で見えてきて、本当に変わってきたと感じます。

だったら、そこに行って自分に何ができるかということを考えさせる力を子どもたちに持たせることが、ベストだと思うようになりました。

だから、自分が行きたいと思った学校と自分が気に入ってもらって実際に行った学校が違ったとしても、またその反対であったとしても、最終的には自分が落ち着いた学校に、自分で合わせていくことも必要ではないかと思います。

やってみて、どうしても合わないのなら変わることも必要ですし、我慢も必要かと思います。

とにかく今は、「自分でいいところを探していきなさい」と言って生徒たちを送り出しています。

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