スイスを南北に結ぶ世界最長の鉄道トンネル、ゴッタルドベーストンネル(全長57キロメートル)の責任者2人が、鉄道産業に多大な功績を与えた人たちに贈られる今年の欧州鉄道賞外部リンクを受賞した。
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受賞したのはスイス連邦鉄道で建設プロジェクトチームを率いたペーター・イェーデルハウザー氏と、工事を請け負ったアルプトランジット社のレンゾ・シモーニ元最高責任者(CEO)。二人は20日夜、ブリュッセルで開かれた授賞式に出席した。イェーデルハウザー氏は技術や組織がどれだけ進歩しても、「最後はヒトの手がプロジェクトを成功に導いた」とコメントした。
欧州鉄道賞は鉄道業界では最も権威のある賞とされ、欧州鉄道会社共同体(CER)および欧州鉄道産業連合(UNIFE)が選ぶ。
アルプスの地下を走るゴッタルドベーストンネルは、スイスの工業技術を結集させて完成。審査では、アルプスをまたぐ鉄道貨物輸送と欧州の交通政策に大きく寄与しているなどの点が評価された。CERのリボル・ロッハマン会長は「スイスでは、貨物輸送をトラックから鉄道にシフトする政策を政治が主導し、国民の明確な支持もある。ゴッタルドベーストンネルはその政策の一環であり、欧州市民にとって非常に価値が高い」と説明した。
UNIFEのフィリップ・シトローエン会長は「世界最長の鉄道トンネルは、欧州が持てる技術力を結集した偉大な産物というだけではない。地理、インフラ面の障害を克服し、鉄道交通がいかにして欧州における環境的に持続可能で効果の高い経済を支えることが出来るか。それを体現している」と評価した。
ゴッタルドベーストンネルは2016年6月1日、17年の建設期間を経て開通。貨物列車は同年9月に定期運転を開始。同年12月には旅客列車の運行も始まった。
スイスが欧州鉄道賞を受賞するのは今回が3回目。09年にはモーリッツ・ロイエンベルガー元連邦大統領、13年にはスイス連邦鉄道のベネディクト・ヴァイベル元CEOが受賞している。
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スイスのように直接民主制をとる国では、大規模な国家プロジェクトを実現させるのは容易なことではない。国民には常に、政府、議会の決定に対して「レファレンダム」を提起することで、その是非を国民投票にかける権利が与えられているからだ。そのような政治的背景があるからこそ、今年6月、ヨハン・シュナイダー・アマン大統領が全長約57キロのゴッタルドベーストンネルの開通を正式に宣言した際は、人々の喜びもひとしおだった。
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