インタビューに応じる髙橋大輔
swissinfo.ch
現在スイスで開催中のアイスショー「アート・オン・アイス(Art on Ice)」にプロフィギュアスケーターの髙橋大輔が出演している。世界のトップスケーターたちが彼らのさらに新しい側面を創り出すアートショーで、髙橋はどのようにショーを作り上げようとしているのか、スイスインフォがリハーサルの合間にインタビューをした。
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2017/02/09 16:12
上原 亜紀子
横浜市出身。1999年からスイス在住。ジュネーブの大学院で国際関係論の修士号を取得。2001年から2016年まで、国連欧州本部にある朝日新聞ジュネーブ支局で、国際機関やスイスのニュースを担当。2016年からswissinfo.chの日本語編集部編集長。
今回は「ニューヨークのあらゆる人々ーーそれぞれの人に物語がある」というコンセプトを基に、ジェイムス・モリソンの「The Person I Should Have Been」のライブ演奏に合わせて、大都会の片隅にいる「ホームレスのような役」を演じる髙橋大輔。「やさぐれた感じ」を演出したいと語る髙橋は、「スケートというもので表情だったりとか、それでその歌とあわせてっていう、その一つの世界観を作り上げる」と言う。
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舞台では、暗闇のリンク上にひっそりと置かれたダンボール箱から這い上がるようにして登場し、長めのコートを脱ぎ捨てる場面があるが、こうした演劇性を取り入れた場面について髙橋は、「小物を使ったりしたことがなかったので、いい経験になる」と話す。このような舞台を作り上げるということは髙橋にとって「演出の人が求めるものを自分で全力でやっていくということ」。また、「僕自身がまた新しいショーをしたいなと思ったときにはすごく勉強になるショーだと思っている」。「ここで見るもの全てを盗んでいけたらな」とも語る。
髙橋のアート・オン・アイス外部リンク への参加は今回で2回目。「前回アート・オン・アイスに参加したときと、今このアート・オン・アイスに参加するときの周りの状況だったり自分の心境ってのも変わっている。そういった部分でまた新しい経験です」。
昨年のアイスレジェンドを含め、今年で3年連続スイスのアイスショーに参加することになる髙橋。国外でのアイスショーへの参加はあまりないが、そのなかでもスイスでの参加が一番多いという。アート・オン・アイスの観客は単にスケートの好きな観客とは異なり、「他とはまた違う反応っていうのがある」と明かす。しかし、「スイスの方は僕のことをはまだ知らないと思うので、自分でもアピールできたらなと」。そして、「日本からのファンにはまた違った自分らしさを見せられたらなと思っている」と新しい挑戦を続ける髙橋は結んだ。
髙橋大輔
1986年3月16日生まれ。2014年に競技会から引退を表明した後、現在は国内外のアイスショーを中心に活動。2015年にはスイスのアイスショー「アート・オン・アイス」、16年には同じくスイスの「アイスレジェンド」に参加した。
アート・オン・アイス
トップクラスのアイスフィギュアスケーターが、世界的に有名なアーティストのライブ演奏に合わせて氷上を舞うスイスのアイスショー。2013年には日本公演も行われた。
今年のアーティストはチャカ・カーンとジェイムス・モリソン。髙橋大輔の他、ステファン・ランビエール(05年・06年世界選手権優勝)、サラ・マイヤー(11年欧州選手権優勝)など世界的な選手権で優勝したスケーターたちが参加する。15年に引退を表明したマイヤーは、長年の希望だったモリソンとの共演を果たすため、今年、再びアート・オン・アイスのリンクに上がる。
2月2~5日にチューリヒ、7~8日にローザンヌ、10~11日にダボスで開催されている。
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「人生の新しい章へ移った」と笑顔で話し、今の新しいスケート人生は「大きな喜び」と言うステファン・ランビエール(32)。現在、フィギュアスケートのコーチとして活動することは「情熱に近いもの」であり、「自分の多くを捧げなければならない」と語る。スイスの地元でスケート学校を立ち上げ、教える立場になったランビエールは、動きで情感を表現する感性豊かで繊細なスケーターをどのように指導しているのか?また、現在の関心事や日本とのつながりについても聞いてみた。
2010年に選手生活を終え、プロスケーターに転向してからは、「氷上で別の形で自分を表現するため」現在はショーに出演しながらスケートを楽しむ。その一方で今、コーチとして教えるという仕事にも専念している。それは、「全力で取り組まなければならないもので、自分にとっては情熱に近いものだ」と感じているという。
「コーチとしても大きな喜びを感じる」ランビエールは、スイスで昨年夏からラトビアのデニス・ヴァシリエフス選手(17)を指導しており、現在9カ月目。今シーズンは初めて、世界選手権でコーチを務めた。ヴァシリエフス選手は、ラトビアのスポーツ選手のための優遇教育制度を利用して勉強を続け、週に20時間ランビエールの指導を受けている。「氷上でお互いが自分を出し尽くすことで、お互いのエネルギーを感じるような指導を目指している。2人の間で何か言葉では言い表せない、素晴らしいものを築きあげられている」という。
また、最近は興味や関心も広がり「新しいものを追求することが多くなり」、音楽、料理、映画、ダンスなど「最新の流行に耳を傾け、目を光らせている」という。例えば、最近チューリヒの歌劇場で行われた、クラシックバレエ振付家アレクセイ・ラトマンスキーの「白鳥の湖」には感激したと話す。「私の憧れのラトマンスキーの振付作品は、衣装も目を見張るものがある。そういった流行のデザイン、素材、色にも興味がある。美を体現するものに幅広く興味がある」と語る。
今月末には、ファンタジーオンアイスに出演するため日本へ行くが、「日本に行くと、友情を家族の絆のように感じる。そういった日本が大好きだ」とも言う。また、ランビエールは伊藤みどりの大ファンで、「彼女が現在でもスケートを続けていることには感銘。彼女のコーチだった山田満知子コーチにはただ感服している」とも話す。山田のアシスタントコーチである樋口美穂子コーチが指導する宇野昌磨は、「10年ほど前、ドリームオンアイスでジュニア・スケーターとして小さな昌磨が出演したのを今でも覚えている。本当に素晴らしい選手だ」と高く評価する。
「日本には、優れた実力のあるフィギュア界のヒーローがたくさんいる。今年の夏には、織田信成、宮原知子、宇野昌磨を始めとするそういったスケーターの振付けをする機会があるが、それを今から楽しみにしている」とほほ笑みを浮かべて話す。
ステファン・ランビエール(Stéphane Lambiel)
1985年4月2日、スイスのヴァレー州マルティニに生まれる。
7歳からスケートを始める。
2005年、世界フィギュアスケート選手権で1位。
2006年2月、トリノ冬季オリンピックで銀メダル。3月、カルガリーでの世界フィギュアスケート選手権で1位。2007年、世界フィギュアスケート選手権で3位。
2008年、ザグレブでのヨーロッパ選手権で2位。
2008年10月、左内転筋の負傷のため、競技生活に終止符を打つと宣言。
2009年1月、プロ宣言後初めて「アート・オン・アイス」に出演。
2010年1月、バンクーバーオリンピックを目指し再び競技生活に戻った後、エストニアでのヨーロッパ選手権で2位。2月、バンクーバーオリンピックでは、4位。3月、再び引退を表明。
2014年、ヴァレー州シャンペリにスイス・スケート学校を創設。
2016年8月からデニス・ヴァシリエフスのコーチを務める。
現在、さまざまなショーに出演しながら、振り付けなど新しいチャレンジをしている。技術面もさることながら、アーティスティックな表現は評価が高く「リンク上のプリンス」と呼ばれている。
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