スイスの視点を10言語で

クレディ・スイスの緊急買収、訴訟不可避か

ロゴ
UBSによるクレディ・スイス買収で、投資家や株主が悲鳴を上げている © Keystone / Michael Buholzer

スイス最大の金融機関UBSによる同業のクレディ・スイス買収が、法廷闘争に発展する可能性がある。

スイス年金基金などで構成されるエトス財団は20日、声明外部リンクを発表。UBS、クレディ・スイス(CS)両行の株主として株主総会で買収について投票できないなど不利を被ったとし「この大失敗の責任を明らかにするため、法的手段を含めあらゆる選択肢を検討する」と発表した。

UBSによるCS買収は株主投票を経ないで成立した。

CSが発行した160億フラン(約2兆2千億円)相当の特別社債が買収の一環で無価値化されたことを問題視する声もある。債券保有者の1人は米紙フィナンシャル・タイムズの取材に対し、この行為が「スイスの金融債務に長期的な影響を与えるだろう」と憤った。

おすすめの記事
クレディ・スイスのロゴ

おすすめの記事

クレディ・スイスの崩壊、これからどうなる?

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの銀行は保守的で、危機時における資産のセーフヘイブン(安全な退避先)であるはずだった。だが、UBSによるクレディ・スイス(CS)の緊急買収はこのイメージを打ち砕き、スイスの銀行業界の信頼性を傷つけた。

もっと読む クレディ・スイスの崩壊、これからどうなる?

同紙の報道では、英資産運用会社アルジェブリス・インベストメンツのダビデ・セラ最高経営者(CEO)は投資家らに電話で「彼らは法律を変え、実質160億フラン相当の債券を盗んだ」と語った。

独語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーによると、米国の国際法律事務所Quinn Emanuel Urquhart & Sullivanは買収に関連し法的措置を検討するチームを作った。CSの社債を所有している投資家と既に協議中だという。同事務所はチューリヒにも拠点がある。

法学者のペーター・V・クンツ氏は、独語圏のスイス公共放送(SRF)に対し、国外の株主らが訴訟を起こす可能性があると発言。「一連の出来事はパニック行為以外の何者でもない。法の支配の観点からも問題がある」と述べた。

クンツ氏は、クレディ・スイスの筆頭株主であるサウジ・ナショナル・バンクが、買収を巡る意思決定プロセスから締め出されたことに対し法的手段に訴えることも考えられるとした。

買収前の段階で、米国ではクレディ・スイスにだまされたと訴える人たちが同行を相手取って訴訟を起こした。

※英語の原文に一部加筆しました。

英語からの翻訳編集・宇田薫

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

茶色い除湿器

おすすめの記事

ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)は10日、電気を使わない除湿器を開発したと発表した。壁や天井の建築材として、空気中の湿気を吸収し一時的に蓄えることができる。

もっと読む ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
Xマークの画面

おすすめの記事

スイスでX離れ進む

このコンテンツが公開されたのは、 スイスで「X」から撤退を表明する企業や著名人が相次いでいる。

もっと読む スイスでX離れ進む
ベルジエ報告

おすすめの記事

「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱

このコンテンツが公開されたのは、 スイス最大手のUBS銀行の資料室には、第二次世界大戦中の行動に関する秘密がまだ残されている可能性がある――。過去にスイスの銀行と独ナチス政権とのつながりを調査した歴史家、マルク・ペレノード氏は、再調査の必要性を強調する。

もっと読む 「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱
整備中の飛行機

おすすめの記事

スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠

このコンテンツが公開されたのは、 スイスインターナショナルエアラインズ(SWISS)のブカレスト発チューリヒ便が先月オーストリアのグラーツで緊急着陸した後、客室乗務員(23)が死亡した事件で、死因は酸欠だったことが分かった。複数のスイスメディアが報じた。

もっと読む スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠
署名の入った箱

おすすめの記事

国民投票に向けた署名がまたも偽造

このコンテンツが公開されたのは、 医療品の安定供給を求める国民投票に向けて集められた署名のうち、3600筆以上が無効な署名だったことが明らかになった。

もっと読む 国民投票に向けた署名がまたも偽造
エリック・ヘンニさん

おすすめの記事

スイスの柔道家エリック・ヘンニ、86歳で死去 東京五輪柔道銀メダリスト

このコンテンツが公開されたのは、 1964年東京オリンピックで銀メダルを勝ち取ったスイス人柔道家のエリック・ヘンニ(Eric Hänni)さんが25日、86歳で死亡した。スイス柔道・柔術協会が発表した。

もっと読む スイスの柔道家エリック・ヘンニ、86歳で死去 東京五輪柔道銀メダリスト

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部