クレディ・スイス買収、競争委員会の見方は?
連邦競争委員会(COMCO)は今後、UBSによるクレディ・スイス(CS)の買収を審査する予定だ。国家主導の買収は既定路線になっているが、スイス金融市場に対する影響をどう判断するかが注視される。
UBS はCSの買収によりスイス金融業界の巨人となる。買収を発表した19日夜の会見では、独占禁止法を順守する必要はないという雰囲気があった。だが連邦競争委員会(COMCO)のパトリック・デュクレー事務総長は、買収に関する今後の審査で、主導権を握らないにしても「重要な役割」を果たすと説明する。
主導権は金融市場監督機構(FINMA)に
19日夜の記者会見で、スイス金融市場監督機構(FINMA)のマレーネ・アムシュタート理事長は、買収が競争法上デリケートな問題を引き起こすか問われ、こう答えた。「この件については、金融の安定性の面から、金融市場法制によりFINMAに競争状況を判断する権限が与えられる。ここではそれを利用する」
競争法は、大規模な合併案件はCOMCOが審査することを原則としているが、銀行の合併については例外とする。銀行に関してはFINMAが審査を担う。
だがデュクレー氏は、これにより競争法に基づくCS買収の審査が免除されることを意味するものではないと強調する。FINMAが審査を遂行し、COMCOがそれに関与する必要がある。「COMCOは間違いなく重要な役割を担っています。その責任はFINMAにあり、COMCOが負うものではない。だがCOMCOは、この合併が競争法にもたらし得る影響について意見を述べることができる」
スイス史上初
COMCOの意見は声明として発表できる。デュクレー氏は、「これは我々にとっても新境地だ。これまで一度もやったことがない」。声明をまとめるにあたり、COMCOはあらゆる重要事実と書類を入手できる。
FINMAがUBSによるクレディ・スイス買収に待ったをかける可能性はもはやない。19日夜の買収発表は既にFINMAのお墨付きだったからだ。だがパトリック・デュクレー氏によれば、FINMAは買収の条件と義務を指示できる。具体的にどのような条件になりそうかについて同氏はコメントを避けた。
次に、合併でUBSが独占的立場を得そうな分野はあるかどうか、スイスの市場に与える影響を調査する。その後、COMCOは書面による声明をFINMAに提出する。審査プロセス後の最終決定に向けた根拠の1つとなる。
各国市場で審査も
審査の最後にFINMAが買収に関する決定を下し、UBSの条件と義務をとりまとめる。審査全体には時間がかかる。デュクレー氏は「数カ月を要するだろう。プロセスはまだ始まってもいない。UBSが合併申請を提出したときに初めて開始される」と説明する。
審査はスイス内で完結しない。欧州連合(EU)や米国、アジアの一部でも審査の対象になるとみられる。各国それぞれの審査プロセスがあり、最終的な手続きが完了までに時間がかかる。
独語からの翻訳:ムートゥ朋子
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