スイス金融大手のクレディ・スイスは14日、世界各国の富裕度を調査分析した「グローバル・ウェルス・レポート2017外部リンク」を発表した。スイスの成人1人あたりの純資産額は53万7600ドル(約6千700万円)で世界最高額だった。
このコンテンツが公開されたのは、
1位のスイスに、オーストラリアが40万2600ドルで2位、米国が38万8600ドルで3位、ニュージーランドが33万7400ドルで4位と続いた。
同レポートでは金融資産と実物資産(主に不動産)の合計から、家計の負債を引いた額を純資産(または富)と定義。スイスの平均純資産額は2000年比で2.3倍に増えた。2001~13年のフラン高・ドル安が影響したとレポートは分析している。
スイスの家計の純資産はフラン換算で00年から17年に掛けて35%増加、年平均で1.8%増えた。中央値のランキングでもスイスは1人あたり22万9千ドルで1位。2位は19万5千400ドルのオーストラリアだった。
スイスの総資産の54%は金融資産。平均負債額は14万500ドルと、一人あたり負債額としては世界で最も高い国の一つで、総資産の21%を占める。
スイスに住む成人の3分の2以上は100万ドル以上の資産を持ち、スイスの人口830万人の8.8%は富裕層。レポートでは、5000万ドルかそれ以上の純資産を持つスイスの成人は2780人、1億ドル以上を1070人と算出した。
続く成長
レポートによれば、08年のリーマン・ショック後、世界の富は27%増加。クレディ・スイスのウルス・ローナー取締役会長は「世界的な金融危機から10年が経過し、世界の全ての地域で大幅な富の増加が見られる。クレディ・スイスの拠点であるスイスではこの間に、1人あたりの富が40%以上増加した。スイスは今後もランキングの上位をキープするだろう」と話した。
世界の富は過去5年で3.8%成長。22年には341兆ドルに達するという。新興国は先進国よりも早いペースでの成長が期待され、5年後には世界の富の22%を占めると予想されている。最も大きな伸びが期待されるのは中国で、この期間に最大10兆ドルもしくは33%の成長が見込まれる。
また1982年から2000年の間に生まれた「ミレニアル世代」は、高い教育を受けながらも、親より条件の悪い仕事に就き、低収入であると指摘。この世代は借り入れ審査の厳しさや住宅価格の上昇、不均衡の拡大という困難な状況に直面しており、技術や金融分野の優れた人物のみ将来の見通しが良いとした。
(英語からの翻訳・大野瑠衣子)
おすすめの記事
おすすめの記事
スイスの給与事情 意外と高収入な職種
このコンテンツが公開されたのは、
スイス労働者の給与は他の国と同様、学歴や職業経験よって異なる。チューリヒ州経済労働局の年次報告書2017年版外部リンクでは、一般的な年齢と経験を基にした、あらゆる職種の最低給与を知ることができる。そこから主な職業をいく…
もっと読む スイスの給与事情 意外と高収入な職種
続きを読む
おすすめの記事
スイスの貧困、大半が一時的
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦統計局が10日に発表した国民の貧困に関する調査で、長期間にわたり貧困状態にある人は人口の1%に満たないことがわかった。
もっと読む スイスの貧困、大半が一時的
おすすめの記事
スイス人口2割「急な出費に備えなし」 国の調査結果で
このコンテンツが公開されたのは、
連邦統計局は16日、スイス国民の賃金と生活状況に関する調査結果を発表し、2016年は人口の21.5%が2500フラン(約28万円)の請求書を1カ月以内に支払えない経済状態だったことがわかった。
もっと読む スイス人口2割「急な出費に備えなし」 国の調査結果で
おすすめの記事
スイスは30歳独身で月収69万円 本当に夢のような暮らし?
このコンテンツが公開されたのは、
スイス人は欧州諸国に比べてずっと高給取りだ。それも30歳で月6千フラン(約69万円)。外国人から見れば夢のような数字だが、生活費や税金を考慮すると、実はそうでもない。
もっと読む スイスは30歳独身で月収69万円 本当に夢のような暮らし?
おすすめの記事
スイスで牧師の給与が高いのはなぜ?
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・チューリヒ州では高所得者に位置づけられているプロテスタント教会の牧師だが、その給与は一体どれくらいなのか?
チューリヒ州経済労働局が先月公開した給与に関する年次報告書では、パン職人から政治家まで、あらゆる職種の初任給を知ることができる。
同報告書によるとチューリヒ州の牧師の月給は9084フラン(約101万7800円)で、スイス軍の将校、土木技師、ジャーナリストよりも高い。しかし給与が高い一方で、牧師の1週間の労働時間は48時間と、一般的なフルタイム労働者の週40時間労働よりも8時間多く働いている。また、カトリック教会の司教の場合、週の労働時間は42時間で月収は8595フラン。教区民を訪問したり式典に出向いたりすることが多い聖職者の労働時間は、通常よりも長い傾向にある。
もっと読む スイスで牧師の給与が高いのはなぜ?
おすすめの記事
教員の給与が世界一高いスイス
このコンテンツが公開されたのは、
教員の給与が世界一高いスイスだが、国内の他の専門職と比較してみても教員の給与は良い方だ。スイスの教員の給与事情について詳しく見てみた。 スイスドイツ語圏の教育指導者会議のデータによると、チューリヒ州では中等教育以上の教…
もっと読む 教員の給与が世界一高いスイス
おすすめの記事
スイスの億万長者上位300人、巨万の富を得るまで
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの政治誌ビランツによると、スイスに住む億万長者上位300人のうち、3人に1人は10億フラン(約1千94億円)以上の純資産を有している。その中には世界的に有名な企業の創業者一族の出身者もいる。約半分は国外からの移住者で、とりわけドイツ出身者が多い。1980年代以降は、金融業界で財を成した人々が増えている。以下では、様々な分野で巨万の富を得た億万長者を紹介する。 製薬
アンドレ・ホフマン(58歳) ― 莫大な遺産相続と慈善活動
スイス出身。製薬会社大手ロシュを創業したホフマン家の遺産相続者の一人。1996年から同社の執行役員。遺産相続者のホフマンとオエリ一族が所有する株式などの総資産は200億フランを超える。
2004年、ホフマン家共同投資資金の広報担当に就任。父ルーカス氏と同様、環境活動に尽力する。最近では、スイスが50年までに資源消費量を3分の2削減することを目指す、「グリーン経済」イニシアチブ(国民発議)を支持して注目を浴びた。金融ビジネスと化学
クリストフ・ブロッハー(76歳) ― 実行者から人民の指導者へ
スイス・シャフハウゼン出身。右派の国民党の代表的存在。2003年、連邦内閣閣僚に選出されたが4年後に落選。ビランツ誌によれば、ブロッハー家の資産は70~80億フランとされる。
ブロッハー家は過去10年で急速に資産を増やした。ブロッハー氏はとりわけ金融ビジネスで財を成したとメディアは報じている。1983年、化学大手エムス・ケミーの従業員だった際に、創業者一族から会社を格安で買収。ドイツ語圏の日刊紙NZZは87年、ブロッハー氏が買収した後のエムス・ケミーは工場というより「投資ファンドのようだ」と報じた。
しかし、エムスグループが実際にブロッハー家の資産にどれだけ寄与したかは不明。現在は娘のマルトゥロ・ブロッハー氏に引き継がれた同グループは、高性能ポリマーと特殊化学薬品を世界中で販売している。プラスチック
ヨブスト・ワグナー (58歳) ― 1万7千人の従業員を抱える政治活動家
ドイツ・バイエルン州レーアウ生まれ。欧州連合(EU)との二国間関係を守ることを目的とした団体「スイスの利点」を設立し、保守派のブロッハー氏と対立。このためメディアから「意に反したアンチ・ブロッハー」と呼ばれた。
同氏は両親からプラスチック関連会社レーアウを引き継ぎ、8億フラン超の資産保有者となった。自動車産業の下請け企業である同社は自動車産業の下請けとして約50カ国に支社があり、約1万7千人の従業員を抱える。資源取引
イヴァン・グラゼンバーグ ― 資源取引を追求
南アフリカ出身。商品取引会社大手グレンコアの最高経営責任者(CEO)で大株主。商品取引で名をはせたマーク・リッチ氏の会社(のちのグレンコア)に入り、南アフリカで商品取引を学ぶ。同社の要職人員は2011年までに500人を数える。株式市場上場により経営者らは莫大な利益を得た。最多の資産保有者はグラゼンバーグ氏で当時93億ドル(約1兆円)保有していたとされる。
スイスのツークを拠点とする鉱山採掘会社エクストラータと合併後、スイスは同社の要衝となる。税金のほか環境被害や人権侵害などをめぐる問題で批判されることも多い。巨匠ピカソの孫
マリーナ・ピカソ ― 祖父の作品を売って大富豪に
画家ピカソの孫娘。祖父の絵を複数売却し、上位300人に仲間入りした。売却した作品には、祖母でピカソの一人目の妻オルガ・コクローヴァさんの肖像画「Portrait de femme」(1923年)も含まれる。この肖像画は約6千万フランの値が付いた。
作品を手放すことにためらいはなかったという。唯一の相続人のマリーナ氏のもとにはまだ絵画約400点と素描画7千点が残る。祖父の良い思い出はないと言い、2001年に出版した伝記ではピカソを「エゴで塗り固められた怪物」「周りの人を愛せない」と酷評。「この天才による重圧」の下で長い間苦しんできたと明かしている。不動産王
ロバート・ホイベルガー (94歳)― 貧しい幼少時代から富豪へ
チューリヒ近郊の産業都市ヴィンタートゥール出身。スイスの不動産王の一人で、上位300人の中では最高齢とみられる。住居約2千件のほかホテル、ショッピングセンター、オフィス複合施設などの不動産を所有。ビランツ誌によれば、同氏の資産は4億5千~5億フラン。F1ドライバー
セバスチャン・ベッテル (29歳)― 猛スピードで富豪に
ドイツ出身。上位300人の中ではおそらく一番の若手。資産額は1億5千~2億フラン。4度の世界チャンピオンに輝き、2016年の年収3千万フランプラスボーナスで、F1レーサーでは最高額獲得選手の一人となった。現在は不動産事業に数百万フランを投資している。スポーツデータ分析
カールステン・コエル (51歳)― テクノロジーと斬新なアイデア
ドイツ出身のエンジニア。トップスポーツ業界の製図家と言える存在だ。スイスの富豪リストに最近仲間入りした一人。米国のITバブルが崩壊する前、共同創設したブックメーカー会社Betandwinの所有株式を売却し、1億5千~2億フランに上る莫大な資産を得る。現在は、国際スポーツビジネス事業に身を置き、スポーツのデータ分析をメディアやブックメーカーに提供する会社スポーツラダーを経営。
もっと読む スイスの億万長者上位300人、巨万の富を得るまで
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。