スイスでは2020年12月23日に一部の州でコロナワクチン接種が始まった
Keystone / Jean-christophe Bott
スイス政府が、新型コロナウイルス感染症ワクチンの調達、接種をめぐる国の政策にいずれも「ためらい」があったとして批判されている。
このコンテンツが公開されたのは、
連邦内務省保健庁の元副所長アンドレアス・ファーラー氏は3日付の日曜紙ゾンタークス・ツァイトゥングに「スイスのやり方はあまりにも戦術的だ。候補に挙がる製造者に注文したワクチンは、本当に必要な量のごく一部に過ぎない」と語った。
同氏は「スイスは一定のリスクを負って、全人口に十分な量を各ワクチンメーカーに注文するべきだった。人は日々死に続け、経済は打撃を受け、1分1分が貴重な時だ。保健庁がなぜ、これほどまでワクチン購入をためらったのか、理解に苦しむ」と述べた。
スイス政府は、今夏までに600万人(スイスの全人口は860万人)への接種を目指す。これは1日あたり最大7万回分を意味する。26の州のうち11州は、昨年末までにワクチン投与を開始した。チューリヒ州などその他の州は4日から接種キャンペーンを始めた。
スイスは、メーカー3社から1580万回分のワクチンを予約済み。第1便の10万7000回分はすでに国内に到着しており、1月にはさらに25万回分が届く見込み。
スイスではワクチン接種を受けた91歳の男性がその後死亡。医薬品承認機関Swissmedicは30日、死因は複数の既往症によるもので、ワクチン接種との関連はなかったと発表外部リンクした。
影響力の強い経済団体エコノミー・スイス(ÉconomieSuisse)のチーフエコノミスト、ルドルフ・ミンシュ氏も、ワクチン接種ペースの遅さと経済への潜在的な影響を懸念する。
同紙は独語圏の日曜紙NZZ・アム・ゾンタークに「スイスの医療システムは世界で2番目に高額だ。夏までに国民へのワクチン投与が完了できないとすると、その高額な医療システムは何のためにあるのか」と批判した。
「許されない」遅れ
同紙の社説は、全国的な予防接種キャンペーンについても痛烈に批判。「予防接種キャンペーンはずっと前に予見できていたはずなのに、複数の州ではいまだに準備段階だ。特に、必要となる予約システム―これは標準的なソフトウェアだ―は、全ての地域で準備が整っているわけではない。これは許されないことだ」と記した。
スイスのギー・パルムラン連邦大統領は日曜紙ゾンタークス・ブリックのインタビューで、「(国内の感染状況がやや落ち着いた)7月から9月の間に、私たちは状況を過小評価した」と述べ、感染防止対策に誤りがあったと認めた。
パルムラン氏は、連邦と州の調整や理解が常に最適であるとは限らないとし 「必ずしも簡単ではなかった。現在もそうだ」と語った。「実施した(コロナ関連)措置は、健康、経済、国民の態度といった事項が絡み合う。すべてが白黒付けられるわけではない」
保健行政を担当するアラン・ベルセ内務相も昨年末、ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)で「我々は怠惰過ぎた」と述べ、政府の対応に誤りがあったと認めている。
一方、チューリヒ大学の調査外部リンクによると、Swissmedicがファイザー社製ワクチンを承認した後、予防接種を受けたいと考えている国内居住者の割合が41%から49%に上昇した。しかし、回答者の3人に1人が、現時点では接種を受けたくないと答えた。約20%は未定と答えた。
50歳以上では約60%が接種を受けたいと回答したが、15〜49歳では40%にとどまった。男性では約56%、女性は43%だった。
おすすめの記事
トランプ氏銃撃、スイス大統領「容認できない」
このコンテンツが公開されたのは、
ドナルド・トランプ前大統領が13日に銃撃された事件を受け、スイスのヴィオラ・アムヘルト大統領は「政治的な暴力は容認できない」と訴え、一日も早い回復を祈った。
もっと読む トランプ氏銃撃、スイス大統領「容認できない」
おすすめの記事
ツェルマット行き鉄道、少なくとも8月中旬まで一部区間で運休 大洪水で
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部を中心に発生した大規模な洪水の影響を受け、ツェルマット~ディセンティス間を結ぶマッターホルン・ゴッタルド鉄道(MGB)は、少なくとも8月中旬まで一部区間で運休するとの見通しを明らかにした。
もっと読む ツェルマット行き鉄道、少なくとも8月中旬まで一部区間で運休 大洪水で
おすすめの記事
スイスが対ロシア制裁リストを拡大
このコンテンツが公開されたのは、
スイスは対ロシア制裁リストを拡大した。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続いていることを受け、欧州連合(EU)が決定した変更を採用した。
もっと読む スイスが対ロシア制裁リストを拡大
おすすめの記事
AIによる失業懸念、スイスは最低
このコンテンツが公開されたのは、
人工知能(AI)は日々の仕事に影響を与えている。スイスでは、多くの人たちが仕事を含めAIを使っているが、この新しいテクノロジーのせいで仕事を失うと心配している人は比較的少ないことが最新の調査で分かった。
もっと読む AIによる失業懸念、スイスは最低
おすすめの記事
核兵器禁止条約への加盟求めスイスで署名集め開始
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの市民団体「核兵器禁止を求める同盟」は、国連核兵器禁止条約への加盟を求めるイニシアチブ(国民発議)を立ち上げた。必要な署名が集まれば国民投票が実施される。
もっと読む 核兵器禁止条約への加盟求めスイスで署名集め開始
おすすめの記事
スイス民族衣装祭りに観光客10万人
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・チューリヒで6月28~29日、連邦民族衣装祭りが14年ぶりに開催され、延べ約10万人の観客が訪れた。
もっと読む スイス民族衣装祭りに観光客10万人
おすすめの記事
クレディ・スイスのスイス法人が消失
このコンテンツが公開されたのは、
スイス二大銀行だったUBSとクレディ・スイスの現地法人の合併が1日、完了した。今後スイス国内でも「クレディ・スイス」の看板撤去が進むことになる。
もっと読む クレディ・スイスのスイス法人が消失
おすすめの記事
スイス人の平均寿命、過去最高に 男性は82.2歳
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの平均寿命は2023年時点で女性85.5歳、男性82.2歳と、過去最高記録を更新した。
もっと読む スイス人の平均寿命、過去最高に 男性は82.2歳
おすすめの記事
連邦内閣、マルティン・シュレーゲル氏をスイス中銀新総裁に任命
このコンテンツが公開されたのは、
連邦内閣はスイス国立銀行(SNB、中銀)の新総裁に予想通りマルティン・シュレーゲル副総裁を任命した。ペトラ・チュディン氏が新たな理事会メンバーとなる。
もっと読む 連邦内閣、マルティン・シュレーゲル氏をスイス中銀新総裁に任命
おすすめの記事
職場のワンコ、従業員の満足度を向上 スイス調査
このコンテンツが公開されたのは、
犬は職場の雰囲気を良くし、飼い主だけでなく他の従業員にとっても良い影響を与える――スイスの労働者を対象に実施された調査は、職場に犬がいることの効用を強調する。
もっと読む 職場のワンコ、従業員の満足度を向上 スイス調査
続きを読む
おすすめの記事
ワクチン接種、まだ長く待たされる理由とは
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が数カ国で始まった。スイスの一部の州では今週始まる。だが世界の需要に見合う量を製造できるようになるまでには、何年もかかりそうだ。
もっと読む ワクチン接種、まだ長く待たされる理由とは
おすすめの記事
スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし
このコンテンツが公開されたのは、
スイスは4月1日、新型コロナウイルス感染症に対する全国的な感染対策を全て撤廃した。秋冬の感染再拡大が懸念される中、スイス公衆衛生当局はマスク義務の再開は必要ないとしている。
もっと読む スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし
おすすめの記事
ここがポイント 2021年のスイス政治
このコンテンツが公開されたのは、
対EU関係、ブルカ着用禁止イニシアチブ、WTO改革……スイスの内政・外交が抱える2021年の課題を展望する。
もっと読む ここがポイント 2021年のスイス政治
おすすめの記事
さらば憧れの外国暮らし
このコンテンツが公開されたのは、
ロッティ・プフィルさんの夢は破れた。コロナ危機の影響で、5年にわたるドイツ暮らしを諦め、2021年2月に祖国スイスに戻ることにした。帰国に当たっての思いを日記につづった。
もっと読む さらば憧れの外国暮らし
おすすめの記事
コロナ自主隔離の英観光客、数百人が姿消す スイスで
このコンテンツが公開されたのは、
イタリア・フランスの国境に近いスイス西南部の山岳リゾート地ヴェルビエで、自主隔離の対象となった英国人観光客数百人が滞在施設から姿を消した。夜中に立ち去った例が多いという。
もっと読む コロナ自主隔離の英観光客、数百人が姿消す スイスで
おすすめの記事
スイス経済に「スキー場」が重要な理由
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、一部のスイス周辺国はスキー場を閉鎖した。それとは対照的に、スイスはスキー場の営業を原則認めている。アルプス地方の経済は、スキー場と冬場の観光に大きく依存している。
もっと読む スイス経済に「スキー場」が重要な理由
この記事にコメントする