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スイスの高い物価、どうしたら引き下げられる?

依然として「高物価の島」のスイスでは、より物価の安い隣国へ国境を越えて買い物に行く「ショッピングツーリズム」をする倹約家が跡を絶たない。非常に高い物価やショッピングツーリズムの悪影響を懸念する政治家や消費者団体が政府に対策を要求している。

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flag of Switzerland and France over an image of shopping cart from the two countries

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ショッピングカートの中身を比較 お買い得な国は?

このコンテンツが公開されたのは、 スイスインフォがスイスと隣国フランスのスーパーマーケットで食料品14品を対象に実施した簡易調査で、同類の商品を両国で購入した場合、スイスの総額がフランスに比べ91%も高かったことがわかった。

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※本記事は2017年に英語で配信されました。

冒頭の動画が示すように、隣国のフランスやドイツ、オーストリア、イタリアで食料品を買ったことがあるスイスの住民なら誰でも、スイスのスーパーマーケットとは商品の価格がまるで違うことを知っている。

欧州連合統計局(ユーロスタット)の統計はその価格格差を裏付ける。スイスの消費者物価は2017年、アイスランドやノルウェーを上回り欧州で最も高く、欧州連合(EU)平均より61%高い。

この年、スイスは2年連続で食料品やノンアルコール飲料の価格が欧州で一番高い国になった(EU平均の73%高)。さらに、ホテル・飲食サービス業(67%高)や衣料品(43%高)の価格でも欧州トップだ。一方で個人輸送機器(3%高)や家電製品(3%安)、家具(3%安)の価格はEU平均に近い。 


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収入の高いスイス人が、隣国で低価格の商品を買い求める動きは以前からあった。特に、バスに20分も乗れば、隣国フランスの一番近いスーパーに行くことができるジュネーブでは比較的容易なことだ。スイス国立銀行(SNB)がフランの対ユーロ相場の上限(1ユーロ=1.20フラン)を撤廃し、フランが高騰した15年1月、ショッピングツーリズムは消費者にとって一層魅力的なものになった。

専門家によると、ショッピングツーリズム熱がおそらくピークに達した15年に、スイス人が隣国でモノやサービスに支払った総額は110億フラン(約1兆2千万円)相当とみられる。その後も購入総額はほぼ横ばいが続き(16年は100億フラン)、今後もこの水準が続くと予想されている。また、スイス銀行大手のクレディスイスによると、スイス通貨の約1割が国外で使われている。

スイスインフォのフェイスブック上にコメントしたミゲル・フェレイラさんは、2週間に1度、国境を越えて買い物に行く。「スイスで買い物かご1つ分の商品に支払う金額で、車のトランクいっぱいに買い物できる状況が続く限り、隣国で買い続ける」と話す。

価格引き下げの圧力にさらされるスイスの小売業

フラン高や相変わらずの物価高、ショッピングツーリズムやオンラインショップの普及は、小売業を筆頭にスイス経済界に大きなプレッシャーをかけ続けている。

独市場調査会社GfKの報告書によると、小売部門の売上高は、15年の2.2%減に続いて、16年はさらに1.5%減少し、07年以来最低の水準だった。

ビジネスへの悪影響を懸念する多くの連邦議会議員や国境沿いの町は、国境を越えて買い物に行く「ショッピングツーリスト」に狙いを定めた対策を検討しているようだ。

17年6月初旬、スイス地方自治体協会に所属する国境沿いの町が集まり、どうやってショッピングツーリズムに対抗すべきかを議論したとドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーが報じた。引き続きこのような集まりを開催するという。

「渋滞があちこちで見られ、ドイツのコンスタンツにある店は、途切れることのない買い物客の列でいっぱいだ。スイス人消費者が思い描くような買い物の仕方ではない。毎週末同じことの繰り返しで、我々には何の利益ももたらさない。このような状態はもはや放置できない」とコンスタンツと国境を接するスイス・クロイツリンゲンのアンドレアス・ネッツレ町長は同紙に語った。


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「国境沿いの町同盟」と国民党のヴェルナー・ヘースリ議員などの連邦議会議員は、スイスの税関手続きと税法を変えることで解決できると考えている。輸入の免税金額の上限を300フランから50フランに引き下げることをヘースリ議員は提案する。スイス住民が国外で買い物する意欲をそぐ狙いだ。

連邦政府は成り行きを注意深く見守っている。連邦政府はヘースリ議員の提案は上手く行かないだろうと見ている。しかし、ショッピングツーリズムによって失われる付加価値税(VAT)の額と、企業が価格に反映させていない輸入製品の為替差益について報告するよう連邦政府は要請されている。

全州議会(上院)の経済委員会も高物価の引き下げ案を含む一連の動議を提起した。17年秋の国会で議論される予定だ。物価引き下げ案には、並行輸入の促進、商品ラベルの簡素化、EUの「カシス・ド・ディジョン」原則(1つのEU加盟国で合法的に製造され、市場に出された商品は他のEU加盟国でも規制無しに販売することができるという原則。スイスでは10年に導入された)の拡大、競争法の改正が含まれる。

イニシアチブ「高物価の島に終わりを―フェアな価格のために」

スイスの消費者団体も対策に乗り出した。16年9月、輸入製品に不当に高い価格を付けることを防止しようとするイニシアチブ(国民発議)の立ち上げに協力した。国境沿いの町同盟は、17年3月までに十分な数の署名を集め、全国レベルの国民投票に持ち込みたい考えだ。

フランス語圏消費者連盟(FRC)によると、スイスが「高物価の島」である理由はいくつかある。まず、スイスの小売業界は2大スーパーマーケットのミグロとコープとの寡占状態で競争がほとんどない。また、不動産賃貸料や農場経営費、広告宣伝費、物流コストが高い。しかし、特に問題なのは、輸入製品の卸売業者が高い価格を付けていることだ。

他方、ミグロとコープは、為替レートの上限をなくすなど、高価格を引き下げるために最善を尽くしていると主張する。何千もの取扱商品の価格を引き下げ、為替差益を価格に反映させるため、ユーロ圏の卸売業者と厳しい交渉を続けていると両社は強調する。

  
swissinfo.ch

高物価の問題は、あらゆる方面で数字の戦いになっているようだ。コープの広報担当者アンドレア・ベルクマンさんはswissinfo.chに対し、「当社は一貫して全ての為替差益を消費者に還元している」と話す。その額は、過去2年間で1万5千個の製品を合わせて2億3千万フランに相当するという。ミグロも同様に2億7千万フラン相当の為替差益を消費者に還元したと話す。以前、両社は一部ブランドの商品を並行輸入しようとした。しかし、並行輸入は外国の製造業者と卸売業者によって厳しく管理されているため今も難しいという。

両社の16年の売上総利益率が非常に高かったとの報道を受けて、売上総利益率を外国の同業他社と比較することはできない、スイスの高い給与と不動産賃貸料が問題だと両社は反論する。さらにミグロは、取扱商品の4分の3は自社製品であるため、結果として売上総利益率が高いと説明する。バーゼル経済研究所(BAK)が17年5月に発表した調査結果によると、スイスの小売業者のコストは近隣諸国の競合他社より平均して5割高い。

その一方で、スイスの高い給与が高物価の主な原因ではないとフランス語圏消費者連盟は指摘する。例えば、スイス人の小売業従業員は非常に生産性が高いため、近隣諸国と比べて高い給与は釣り合いが取れているという。

「スイス人の購買力は諸外国と比べて高いため、スイス人はモノやサービスに対してより多く支払う用意がある。特に外国の製造業者や卸売業者は、この高い購買力に付け込んでいるのだ」と同連盟は結論付ける。

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