シリア和平、憲法委員会の協議は「失望」
内戦が続くシリアの和平に向け、スイス・ジュネーブで2019年から開かれているシリア憲法委員会の第5回が先月、「失望」のまま幕を閉じた。
先月25~29日、ジュネーブでシリア憲法委員会の第5回会合が開催された。同会合ではシリアの新体制を形づくることを目指しているが、ゲイル・ペダーセン国連シリア担当特使は記者会見で、「新憲法の新たな原則と条文を議論する、次のステップへ進むメカニズムについて、協議は合意に至らなかった」と話した。
swissinfo.chに送られた文書によると、同特使はシリアの出席者に対し「協議をこのまま続けることはできなかった」と述べた。
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また、「第5回会合では、従来のアプローチでは成果があがらないことや、今後の会合開催に向けた行動計画の策定が急務であることが明らかになった」と語った。
協議の枠組みを再考
ペダーセン特使は、今後の会合を成功させるために必要なすべての条件を取りまとめるため、近くシリアの首都ダマスカスを訪問する意向を表明した。「シリア政府が提案する新たなメカニズムや国連安全保障理事会決議第2254号外部リンクが定めるシリア和平プロセスの実施方法について、シリア政府と話し合う」予定。
同特使は、この政治プロセスは確実にシリアの国民次第だと話す一方で、9日の事前説明で安全保障理事会理事国に対し「シリアにおける紛争は高度に国際化したため、解決への道はシリア国民だけに委ねられていると考えることも、国連だけが成功に導くことができると考えることも適切ではない」とも語った。
解決は影響力のある国次第…
国連の努力と並行して、ロシア・トルコ・イランは17年から独自に行っている和平協議(アスタナプロセス)の第15回会合を16、17日にロシア南部のソチで開催すると発表した。
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3カ国は共同声明の中で、「和平協議の有効性と持続性を確保するために、シリアの代表らやゲイル・ペダーセン国連シリア担当特使と絶えず連携しながら憲法委員会の作業を支援する用意がある」とした。これに対し、ペダーセン特使は速やかに第15回会合への参加を表明。米国のバイデン新政権とも連絡を取ることを明らかにした。
ジュネーブ国際開発高等研究所(IHEID)の政治学者で現代シリア専門のスハイル・ベルハジ氏はswissinfo.chの取材に対し「シリア危機の政治的解決は米国の中東復帰に懸かっている。地政学的バランスを回復し、シリア内戦に関与する3カ国が時間を稼ぎ、事態を悪化させるために採用した戦略に終止符を打つことができるのは米国だけだ」と強調する。
さらに、「3カ国を合意から離脱させることができるのは米国だけだ」としたうえで、「シリアの政治情勢とパワーバランスが変わらない限り、新憲法の起草は何の役にも立たない」と話した。
(仏語からの翻訳・江藤真理)
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