短期研修をきっかけにスイスから日本へ飛び立って以来、日本で働き続けるジャクリーン・チュミさん(32歳)。5年の月日が流れた今、彼女が一目ぼれした日本での日常生活で感じること、労働環境について話を聞いた。
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スイスインフォ: 日本に行こうと決めたきっかけは何ですか?
ジャクリーン・チュミ: 日本で就労経験が欲しかったのと、外交官の仕事を体験したくて、在日スイス大使館の研修制度に応募したのがきっかけです。
スイスインフォ: スイスに戻ることは考えていますか?
チュミ: 具体的にはわかりませんが、いつかはスイスに戻ると思います。
スイスインフォ: 来日したての生活はどうでしたか?
チュミ: 日本はスイスと全く違う世界で、新たな発見をする毎日でした。色んなことを一気に吸収しました。日本のことは、一瞬で気に入りました。
スイスインフォ: 現在の職に就くきっかけは何でしたか?
チュミ: 昨年の8月からネスプレッソ・ジャパン(ネスレネスプレッソ株式会社)のマーケティング部門で働いています。その前は、在日スイス大使館内にある「スイス・ビジネス・ハブ外部リンク」でスイス中小企業の日本進出支援をしていました。そこではスイスの中小企業や日本の労働環境について多くのことを学びました。来日して4年が経過した頃、別の立場から日本の労働環境に身を置いてみたいと思い、今働いている民間企業に転職しました。
スイスインフォ: スイスと比べて日本の労働環境はどうですか?
チュミ: 規則的、官僚的、そして柔軟性に欠けているからこそ非効率的だと感じます。だが、今の会社では今年の4月から、就労時間と場所を自分で決められるようになりました。日本ではとても珍しいことです。こうしたフレキシブルな働き方は、とりわけ子どもを持つ女性にとっては支援的なシステムだと思います。
スイスインフォ: 日本の政治に興味はありますか?
チュミ: 安倍首相の政治は保守的で愛国的な方向に向かう一方です。私の周りにいる多くの外国人は、こうした傾向を懸念しています。私自身、政治に特別関心があるわけではありませんが、最新の情報に触れるよう心がけています。
スイスインフォ: 今年の初めから日本ではプレミアムフライデーが始まりましたが、チュミさんの会社では導入していますか?
チュミ: それについては現在、会社が組合と議論しているところです。先に言ったように、4月からフレキシブルな就労形態は導入されましたが、そこではコアタイムや労働時間などの規定はなく、成果が評価される仕組みです。従って、残業手当はありません。
こうしたフレキシブルな労働環境のため、プレミアムフライデーは実際、私の会社ではほぼ意味を成しません。ただ、仕事のプレッシャーから(プレミアムフライデーが奨励する)午後3時に退社することはほとんどないので、現在、私の会社でも導入が検討されているというわけです。
スイスインフォ: 日本からスイスの国民投票に参加していますか?
チュミ:はい。毎回ではありませんが、オンラインで投票しています。
スイスインフォ: スイスと比べて日本のどんな所が好きですか?スイスでの生活との大きな違いは何ですか?
チュミ: 多様性に満ちた東京と、その他の都市が持つ全く違う顔。そして、手ごろな価格にも関わらず最高に美味しい料理の数々。温泉文化。そして、大都市の鼓動。
私の場合、スイスでの生活との最大の違いは、外食したり飲みに出かけたり、とにかく東京では頻繁に外出していることです。スイスでは出費がかさむし、選択肢が少なすぎるのでそうはいきません。
スイスインフォ: 日本生活は長いですが、未だに慣れないことや驚くことはありますか?
チュミ: たくさんありますよ。職員の効率の悪さから無駄に時間がかかることには驚かされます。日本は顧客第一を声高に主張しながらも、柔軟性に欠けていると感じることがあり、この点において、本当の意味で顧客第一とは言えないと思います。
また、スイスとの最大の違いは、(日本人は)固定概念を超えた考え方ができない点だと思います。はっきり言うならば、マニュアルに沿った考え方しかできず、自分で考えられない点です。
さらに、日本人は問うことをしません。こうした中で外国人が「なぜ?」と問うと、返ってくる唯一の答えが「以前からそうだったから」。日本では変化は好まれず、何かを変えようとしても手間と時間がかかるだけで、最終的には諦めるしかありません。
スイスインフォ: 一度離れてみて、改めてスイスをどう感じますか?
スイスの生活水準はとても高く、オアシスだと感じます。しかし、スイス人は就労をはじめとし、どれほど恵まれた環境にあるかを自覚していません。また美しくて良い国だと思う反面、スイス人は時に偏狭で、自分の世界から一歩出たところから物事を見る必要があると感じます。
スイスインフォ: スイスの何が恋しいですか?
チュミ: やはり自然です!夏に湖に足を浸して涼んだり、川に飛び込んだり、すぐに自然の中に身を置ける環境です。あと、人が少ないので並ばなくても済むことや、交通量が少ないので郊外に出るまでに3時間以上もかからないところなどです。
※ 本記事はメールでのインタビューを基にしています。
本記事で表明された意見はインタビュイーの陳述によるものであり、必ずしもスイスインフォの見解を反映するものではありません。
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スイスインフォ: 日本に行こうと決めたきっかけは何ですか?
ルカ・オルドゥニャ: 私の両親がチューリヒで旅行代理店を経営している関係で、幼い頃からアジアの文化と言語に興味を持っていました。
そして学生時代にザンクト・ガレン大学で受けた講義を通して、多様性溢れる日本文化の虜になりました。これをきっかけにスイス日本商工会議所の奨学金制度を使って日本へ旅立ちました。22歳でした。
スイスインフォ: 今の職に就くきっかけは何ですか?
オルドゥニャ: 1年間の奨学金制度を終え、将来について考えていた頃、スイスの友人が一緒に会社を立ち上げないかと声をかけてきました。
こうして仲間4人で、アジアを中心にスイス時計の輸入代理販売を行う会社を立ち上げました。1人がスイスに本社を構え、他の2人が香港と台湾に、そして私が日本でSwissPrimeBrands社を設立しました。
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「権利と義務の上に立つスイスの民主主義」
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女性参政権の導入が大幅に遅れたスイス。徴兵制の存在がその原因の一つなのか?スイス出身の政治・歴史学者、レグラ・シュテンプフリ氏に話を聞いた。
シュテンプフリ氏は1999年に発表した博士論文「Mit der Schürze in die Landesverteidigung(エプロン姿の国家防衛)」の中で、1914年から45年にかけてのスイスにおける軍事政策と女性政策の関係性を調査した。スイスインフォは著名知識人であるシュテンプフリ氏に、市民の権利と義務との結びつきについて話を聞いた。
スイスインフォ: 1971年、スイスでようやく女性参政権が認められました。導入の遅れは徴兵制が原因だったのでしょうか?
レグラ・シュテンプフリ: それが一因だったのは間違いない。だが、他にも直接民主制の影響があった。女性参政権を認めるにも男性の過半数の賛成が必要だったのだ。しかし、徴兵制が密接に関係していたのも確かだ。スイスでは、武器を持った男性たちが何世紀ものあいだ戦争と平和に関する決定権を握っていた。戦争決定に関する意思表示の権利は、兵役という義務と表裏一体の関係にあったのだ。それが女性の参政権獲得の大幅な遅れにつながった。ちなみにスイスの女性たちは、公に平等の権利を獲得する前からもしっかりと国の制度に組み込まれていた。
スイスインフォ: つまり、女性が抑圧されていたというよりは、参政権と兵役義務が切り離せないものだったという意味ですか?
シュテンプフリ: その通り!いずれにせよ歴史は見直される必要がある。自分も博士論文やその他の著作でそれを試みてきた。女性を甘く見ないように!
スイスインフォ: ヴァレー州ウンテルベッヒの町議会は1957年、ある動議に関して女性に非公式の投票権を与えました。その動議のテーマは、女性の民間役務(兵役の代わりとしての社会奉仕活動)の義務導入。これは単なる偶然ではありませんね?
シュテンプフリ: そう、決して偶然ではない。興味深いのは、そもそも直接民主制、いや、民主主義そのものが、社会的排除から社会的包摂(社会的弱者を含めあらゆる市民を社会の一員として取り込むこと)へと発展する点だ。
スイスインフォ: どういう意味でしょう。
シュテンプフリ: つまり、参政権は社会的マイノリティの間に徐々に広がっていくということ。たとえばフランスの場合ならばアルジェリア出身者といった外国人。ドイツでは、プロイセンで行われていた三級選挙法(納税額の多い順に有権者を1〜3次まで区分した、高額納税者層に有利な選挙方式)が1918年に男子普通選挙制に改められ、ワイマール憲法でついに女性参政権を認めるに至った。
それに対し、スイスの民主主義で常に重視されてきたのは権利と義務の概念。これは、1848年に連邦憲法が成立して以来、女性の女権論者たちが「女性は選挙権と引き換えに兵役に就く必要はない。我々はすでに母としての義務を果たしている。出産育児は兵役以上の社会貢献であり、一種の民間役務だ。したがって女性が参政権を持つのは当然だ」と主張してきたことからも分かる。欧州初の女性法律家であるスイス人、エミリー・ケンピン・シュピーリもその一人だ。
スイスの民主主義は、軍事面に関してもそうだが自由主義的な制度面でも、権利と義務の長い伝統を基盤としている。ところがこれは今日、直接民主制の議論のなかで置き去りにされがちな点でもある。「国家からの自由」、つまり国家を操作するというメンタリティがあまりに安易に実践されている一方で、「国家への自由」、つまり国家への義務を果たすのは「持たざる者」ばかりという状況になっている。
スイスインフォ: スイスにも外国人が自治体・州レベルで投票できる地域がありますが、女性と同じく兵役義務は課せられません。筋が通らないのでは?
シュテンプフリ: ああ、その時代遅れで馬鹿げた主張は聞き飽きた。スイスに住んで税金を納めている以上、政治参加する権利もあるはずだ。ただ、スイスに住む者は全員なんらかの社会奉仕活動をすべきということは、私も以前から言っている。これは啓蒙思想の系譜に連なる考えであり、この点において自分は保守的革命家と言えるかもしれない。誰が国家に帰属するのかしないのか、その議論はもう2世紀以上も続いている。すでに近代フランスのサロンでも女性参政権を求める声があった。それを忘れないように!ユダヤ人というマイノリティの人権問題もかなり早くに取り上げられていた。そして実際、フランス革命後にユダヤ人に市民権が与えられた。
ところがこれらの概念はすべて、「民主主義とは何か」という意識の中からいつのまにか消えてしまった。民主主義においては生物学上の違いや出身地、年齢は重要ではない。民主主義とは、共同で事に当たる平等な人間により作られるものだ。その人が「誰か」ではなく、その人が「何をするか」、それが大事なのだ。したがって、ここに住み、働き、地域社会に参加している人間に参政権を与えるのは当然だと考える。
そういう意味で、19世紀というのは世界史において事実上の「中世」だったと言える。あの時代に世界はきわめて非民主主義的で差別的なものを背負わされてしまった。それ以降、世界政治は国家主義と男性優位主義によって決定されている。この二つの組み合わせがファシズムを産んだのだ。これらすべてについて、今、議論されなくてはならない。
民主主義において権利と義務は一体だと考えますか?コメント欄に皆さんのご意見をお寄せください。レグラ・シュテンプフリ
レグラ・シュテンプフリ(哲学博士、コーチングスペシャリスト)。歴史、政治哲学、政治学およびジャーナリズムを専攻。1999年ベルン大学で博士号を取得。博士論文「Mit der Schürze in die Landesverteidigung, 1914-1945, Staat, Wehrpflicht und Geschlecht(エプロン姿の国家防衛――1914〜1945年。国家、兵役とジェンダー)」は2002年に出版された。以後、民主主義、欧州の政治参加、ハンナ・アーレント派政治哲学およびデジタル化社会などをテーマに、7本の研究論文を発表している。専門家、講師、著者としてスイスならびに欧州で活動中。ドイツ語圏メディアへの登場も多く、鋭い切り口のコラムで知られる。欧州連合(EU)の首都ブリュッセルで数年を過ごし、スイスに帰国後も自称「民主主義の出張販売員」としてドイツ、フランス、オランダ、英、ベルギーなどの国々を勢力的に飛び回る。
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