スイスの視点を10言語で

トランスジェンダー団体、職場での差別撤廃求めキャンペーン

トランスジェンダー
トランスジェンダーの人たちが立ち上げた「トランス・ウェルカム」キャンペーン Keystone

心と体の性が一致しないトランスジェンダーの人たちでつくる団体「トランスジェンダー・ネットワーク・スイス外部リンク(TGNS)」が7日、職場での差別撤廃を求める全国規模のキャンペーン「トランス・ウェルカム」を立ち上げた。

 同団体の弁護士の元には昨年、トランスジェンダーであることを理由に職場で差別を受けたという訴えが300件以上寄せられたという。このため、キャンペーンの立ち上げを決めた。

 キャンペーンの一環で開設されたウェブサイト外部リンク(独語)では「トランスジェンダーであること、職場でカミングアウトすること」などに関する情報を掲載している。

 スイス郵便やスイス連邦鉄道、連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)、イケアなど約50企業・機関が「トランスジェンダーに優しい会社」宣言をした。これらの会社はキャンペーンのサイトで紹介されている。

 団体は、トランスジェンダーの人たちが職場で受け入れられるよう、スイスの雇用主が率先して状況改善に努めて欲しいと要求。その中でもスイス連邦政府、州、自治体が最大の雇い主としてリーダーシップを取り、トランスジェンダーの人たちを受け入れる職場作りを実現して欲しいとしている。 

難題

 スイス国内に住むトランスジェンダーの人たちの失業率は20%で、国民平均の5倍に当たる。トランスジェンダー・ネットワーク・スイスの法律顧問の責任者、アレックス・レッヒャー氏によると、この失業率の高さは、職場で自分がトランスジェンダーだとカミングアウトした後、会社にいづらくなるのが主な原因だ。同氏はスイス通信に「(カミングアウトすることで)いじめられたり、レファレンス(転職する際に在籍元の会社に書いてもらう書類)に不当なことを書かれたりというネガティブな経験だけにとどまらず、セクハラや解雇に発展することもある」と指摘した。

>>「私は男性のまま死にたくなかった」農業営むトランスジェンダーの女性 

 レッヒャー氏によれば、調停に発展した場合、ほとんどのケースで雇用主からの経済補償はないものの、トランスジェンダーの人たちに有利な結果が出ている。だがレッヒャー氏は「(トランスジェンダーの)彼らが不当な扱いを受けたと言ってもらえることが非常に重要だ」と強調する。

 同団体が新たにスイスの独語圏、仏語圏に住むトランスジェンダーの140人に調査したところ、回答者の5人に1人が、カミングアウトは失敗に終わったと語った。

 連邦内務省男女均等待遇局(EBG)と共同で行った同調査では、約25%が職場でカミングアウトした後に解雇された、あるいは職場にいづらくなったなどと回答。カミングアウトした後、職場に受け入れてもらえたと感じた人は、全体の半数以下だった。自分が新しい性別で仕事を続けていくと公表した後、雇用主が何のサポートもしてくれなかった、もしくはサポートがほとんどなかったと答えたのは全体の25%に上った。

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

牧草をはむ牛

おすすめの記事

スイス、PFASの規制強化を検討

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦政府は「永遠の化学物質」の異名を持つ有機フッ素化合物(PFAS)の規制強化に着手した。飲み水の上限値は来年から引き下げられる。

もっと読む スイス、PFASの規制強化を検討
ツークの街並み

おすすめの記事

スイス検査・認証SGSが本社移転 ジュネーブからツークへ

このコンテンツが公開されたのは、 世界有数の試験・検査・認証機関であるスイスのSGSは、本社をジュネーブ州からツーク州に移転する。大手多国籍企業の移転は、ジュネーブ州の税収にも影響を及ぼしそうだ。

もっと読む スイス検査・認証SGSが本社移転 ジュネーブからツークへ
鏡を見るバレエダンサー

おすすめの記事

ローザンヌ国際バレエコンクール2025始まる 日本から13人出場

このコンテンツが公開されたのは、 スイス西部ローザンヌで2日、第53回ローザンヌ国際バレエコンクールが始まった。23カ国から集まった85人の若手ダンサーが8日の最終選考進出を目指し、さまざまな課題曲に挑戦する。

もっと読む ローザンヌ国際バレエコンクール2025始まる 日本から13人出場
自転車で遊ぶ子ども

おすすめの記事

スイス政府、国際養子縁組を禁止へ

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦政府は29日、国外から子どもを迎える国際養子縁組を将来的に禁止する意向を表明した。虐待防止措置の一環としている。

もっと読む スイス政府、国際養子縁組を禁止へ
生殖治療の画像

おすすめの記事

スイス、全てのカップルへの精子・卵子提供を合法化へ 政府方針

このコンテンツが公開されたのは、 スイス政府は29日、生殖補助医療法を改正し、カップルに対する卵子提供を合法化する方針を発表した。政府はまた既婚・未婚問わず全てのカップルへの精子・卵子提供を解禁する意向を示した。

もっと読む スイス、全てのカップルへの精子・卵子提供を合法化へ 政府方針
研究施設で働くマスク姿の人

おすすめの記事

スイスに感染症情報解析センター発足

このコンテンツが公開されたのは、 感染症に関する情報を収集・解析する「病原体バイオインフォマティクスセンター(CPB)」が23日、スイスの首都ベルンに新設された。集約したゲノムデータを管理・解析し、スイスの感染対策を改善する役割を担う。

もっと読む スイスに感染症情報解析センター発足
茶色い除湿器

おすすめの記事

ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)は10日、電気を使わない除湿器を開発したと発表した。壁や天井の建築材として、空気中の湿気を吸収し一時的に蓄えることができる。

もっと読む ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
Xマークの画面

おすすめの記事

スイスでX離れ進む

このコンテンツが公開されたのは、 スイスで「X」から撤退を表明する企業や著名人が相次いでいる。

もっと読む スイスでX離れ進む

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部