The Swiss voice in the world since 1935

トランスジェンダー団体、職場での差別撤廃求めキャンペーン

トランスジェンダー
トランスジェンダーの人たちが立ち上げた「トランス・ウェルカム」キャンペーン Keystone

心と体の性が一致しないトランスジェンダーの人たちでつくる団体「トランスジェンダー・ネットワーク・スイス外部リンク(TGNS)」が7日、職場での差別撤廃を求める全国規模のキャンペーン「トランス・ウェルカム」を立ち上げた。

 同団体の弁護士の元には昨年、トランスジェンダーであることを理由に職場で差別を受けたという訴えが300件以上寄せられたという。このため、キャンペーンの立ち上げを決めた。

 キャンペーンの一環で開設されたウェブサイト外部リンク(独語)では「トランスジェンダーであること、職場でカミングアウトすること」などに関する情報を掲載している。

 スイス郵便やスイス連邦鉄道、連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)、イケアなど約50企業・機関が「トランスジェンダーに優しい会社」宣言をした。これらの会社はキャンペーンのサイトで紹介されている。

 団体は、トランスジェンダーの人たちが職場で受け入れられるよう、スイスの雇用主が率先して状況改善に努めて欲しいと要求。その中でもスイス連邦政府、州、自治体が最大の雇い主としてリーダーシップを取り、トランスジェンダーの人たちを受け入れる職場作りを実現して欲しいとしている。 

難題

 スイス国内に住むトランスジェンダーの人たちの失業率は20%で、国民平均の5倍に当たる。トランスジェンダー・ネットワーク・スイスの法律顧問の責任者、アレックス・レッヒャー氏によると、この失業率の高さは、職場で自分がトランスジェンダーだとカミングアウトした後、会社にいづらくなるのが主な原因だ。同氏はスイス通信に「(カミングアウトすることで)いじめられたり、レファレンス(転職する際に在籍元の会社に書いてもらう書類)に不当なことを書かれたりというネガティブな経験だけにとどまらず、セクハラや解雇に発展することもある」と指摘した。

>>「私は男性のまま死にたくなかった」農業営むトランスジェンダーの女性 

 レッヒャー氏によれば、調停に発展した場合、ほとんどのケースで雇用主からの経済補償はないものの、トランスジェンダーの人たちに有利な結果が出ている。だがレッヒャー氏は「(トランスジェンダーの)彼らが不当な扱いを受けたと言ってもらえることが非常に重要だ」と強調する。

 同団体が新たにスイスの独語圏、仏語圏に住むトランスジェンダーの140人に調査したところ、回答者の5人に1人が、カミングアウトは失敗に終わったと語った。

 連邦内務省男女均等待遇局(EBG)と共同で行った同調査では、約25%が職場でカミングアウトした後に解雇された、あるいは職場にいづらくなったなどと回答。カミングアウトした後、職場に受け入れてもらえたと感じた人は、全体の半数以下だった。自分が新しい性別で仕事を続けていくと公表した後、雇用主が何のサポートもしてくれなかった、もしくはサポートがほとんどなかったと答えたのは全体の25%に上った。

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

部分日食

おすすめの記事

スイスで29日に部分日食

このコンテンツが公開されたのは、 スイスでは29日に部分日食が観測される見込み。午前11時20分頃に月が太陽の前に重なり始める。

もっと読む スイスで29日に部分日食
チベットの旗とスイスの旗を掲げる亡命チベット人家族と子ども

おすすめの記事

ベルン大、チベット語コースの募集停止

このコンテンツが公開されたのは、 ベルン大学は、2025年度秋学期からチベット語コースの学生募集を停止する。同大はチベット語が学べる唯一のスイスの大学だった。

もっと読む ベルン大、チベット語コースの募集停止
UBSの看板

おすすめの記事

UBS、スイスからの本社移転を検討か 一部報道

このコンテンツが公開されたのは、 スイス政府が検討している国内銀行の規制強化案が実現すれば、UBSはスイスからの本社移転を検討すると、米ブルームバーグ通信が20日報じた。

もっと読む UBS、スイスからの本社移転を検討か 一部報道
スイス中央銀行

おすすめの記事

スイス中銀、フランの買い手から売り手に転じる 2024年報告書

このコンテンツが公開されたのは、 スイス国立銀行(中央銀行、SNB)が18日発表した年次報告書によると、2024年はフランの「買い手」から「売り手」に転じた。インフレ圧力が緩み、フラン安を食い止める必要性が薄れた。

もっと読む スイス中銀、フランの買い手から売り手に転じる 2024年報告書
両手を前に出して会見で説明するスーツ姿の閣僚

おすすめの記事

世界の特許出願、中国が首位 日本3位、スイス8位

このコンテンツが公開されたのは、 世界知的所有権機関は17日、昨年の国際特許出願件数の統計を公表した。国別では中国が出願件数の4分の1以上を占め首位を維持し、米国と日本が続いた。スイスは8位だった。

もっと読む 世界の特許出願、中国が首位 日本3位、スイス8位
マルティン・フィスター氏

おすすめの記事

スイスの新国防相にフィスター氏

このコンテンツが公開されたのは、 スイス政府の新大臣に選出されたマルティン・フィスター氏は、4月1日から連邦国防・国民保護・スポーツ省のトップに就任する。

もっと読む スイスの新国防相にフィスター氏
マルティン・フィスター

おすすめの記事

マルティン・フィスター氏が新閣僚に当選

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦議会は12日、今月末で辞任するヴィオラ・アムヘルト国防相の後任として、ドイツ語圏ツーク州出身のマルティン・フィスター氏(中央党、61歳)を選出した。

もっと読む マルティン・フィスター氏が新閣僚に当選

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部