スイスの企業では女性の活躍する場が広がっているが、昇進についてはまだ男性が優位なようだ。
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企業コンサルタントのアドバンス社とザンクト・ガレン大学は先月、女性の活躍と男女平等の実現に必要な処方箋を探る「ジェンダー・インテリジェンス・リポート外部リンク」第3版を発表。計26万3千人を雇用する55社を対象に、各階層における男女比率などの人事情報を分析した。
その結果、役職が上がるほど女性の割合が少なくなることが分かった。非管理職では男女比率が同じだが、トップマネジメント(経営者層)になると女性は18%にとどまる。
リポートは経営者・管理職全体では女性比率が3割の節目に迫っていることも指摘した。3割を超えると組織の文化が変わるとされ、女性の活路が広がっていることを示す。
リポートは女性の採用が特に経営者・管理職で増えていることを示した。マネジメント職の女性比率は29%だが、中途採用に限ると35%が女性だ。管理職以上になるとこの傾向はさらに強く、全体では22%にとどまるが中途採用は32%になる。
社員の定着率はどの階層でも男女差はない。経営者・管理職にも男女差がないことは、性差のない労働文化が背景にあるとリポートは指摘する。
最も性差が大きいのは昇進だ。調査対象のうち女性従業員は42%を占めるが、昇進する従業員における女性比率は36%にすぎない。昇進案件の64%は男性に充てられることを意味する。経営者・管理職への昇進の女性比率は40%だ。
処方箋
リポートは女性の活躍の妨げとなる無意識の偏見や不透明な昇進プロセスといったいくつかの課題を提示した。昇進の決定機関に女性が2人以上加わることや、昇進候補者を男女半々にするべきだと提案する。
ザンクト・ガレン大学経営学部のグドルン・サンダー教授外部リンクは「これまでの昇進プロセスをより透明にし、昇進の決定を目の前にいる人だけに任せないことが重要だ」と報道発表でコメントした。「加えて経営・管理者は積極的に女性の才能が目に見えるように支援し、キャリア形成について話し合いの場を持つ必要がある」
リポートは、伝統的な男女の役割意識が、経営・管理職ならフルタイムで働くものという考え方を招いていると指摘した。働く女性は多いが、多くはパートタイムだ。フルタイムでも柔軟な働き方ができるようにし、幹部に進むスキルを身に着けられる環境が必要だと提案する。
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