スイスの視点を10言語で

ビクトリノックスとスイス政府が商標登録「スイス・ミリタリー」の使用権で合意

スイスアーミーナイフ
ナイフの他にも、時計や旅行バック、香水などが「スイス・アーミー」のブランド名で販売されている Keystone

赤いアーミーナイフで有名なメーカー、ビクトリノックスは18日、連邦国防省装備局(Armasuisse)がスイス軍を代表し、米国で「スイス・ミリタリー」の名称を商標登録することに合意した。ビクトリノックスは同名の香水販売の独占権を獲得した。

ビクトリノックス外部リンクは今後も「スイス・アーミー」の名称を使った製品の販売を継続する。同社は米国での「スイス・ミリタリー」の商標登録をめぐり装備局外部リンクと対立していた。

ベルン州商業裁判所の聴聞会で装備局はビクトリノックスに対し、数年前に米国で商標登録した「スイス・ミリタリー」を放棄するよう要請。同時に100万フラン(約1億1327万円)の賠償を求めた。ただ、「価値ある長年のパートナー」のブランドイメージを損なうつもりはないと訴えた。

ビクトリノックスは1891年以来、政府のサプライヤーを務めてきた。また、同社製アーミーナイフは国際的にも知名度が高い。

しかし2013年、紋章保護に関する法律が制定されたことから、政府は軍用商標をより保護する必要性が生じた。

装備局は今年1月、「スイス・ミリタリー」の名称を使った時計を販売していた時計メーカー、シャルメックス(本社・バーゼル)を相手取った裁判に勝訴。連邦行政裁判所は、「スイス・ミリタリー」という用語は政府が認可した時計にしか使用できないとの判決を下した。

裁判所でビクトリノックスの弁護士は、「スイス・アーミー」ブランドは既に同社に属していると主張。2004年の政府契約では、商標を無条件に使用する権利をビクトリノックスに認めていると述べた。また弁護士は、「スイス・ミリタリー」の名称は米国で既に長年使用しているが、これまで装備局は異議を唱えてこなかったと付け加えた。しかし、2013年に国家知的財産権に関する案件が議会を通ったことを受け、スイス政府は商標権の喪失を回復するよう装備局に圧力を掛け始めた。

和解する可能性が大

法的には対立しているが、双方とも妥協に向けた交渉を行う準備ができていた。交渉は18日の午後に開始。しかし装備局の弁護士は、米国における双方の法的対立は今後も継続する可能性があるという。両社はまずスイスでの紛争を解決することを優先するため、現在米国での手続きは中断されていると述べた。

おすすめの記事

​​​​​​​

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

おすすめの記事

スイス鉄道、国外へ乗り入れせず

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦鉄道(SBB)取締役会長のモニカ・リバー会長は、自社列車で国外に乗り入れないとする同社の決定を擁護した。

もっと読む スイス鉄道、国外へ乗り入れせず
スイス事故防止協議会(BFU)によると、シートベルトの着用により、過去10年間の国内交通事故で負傷事故5700件、約650件の死亡事故を未然に防いだ

おすすめの記事

命を救う後部座席のシートベルト スイスで義務化30年

このコンテンツが公開されたのは、 スイスでは、30年前から車の後部座席のシートベルト着用が義務付けられている。スイス事故防止協議会(BFU)と連邦統計局の最新データによって、この安全対策の有効性が裏付けられた。

もっと読む 命を救う後部座席のシートベルト スイスで義務化30年
握手を交わすスイスのアムヘルト大統領と岸田首相

おすすめの記事

アムヘルト大統領、岸田首相と会談 FTA改定を改めて要望

このコンテンツが公開されたのは、 訪日中のヴィオラ・アムヘルト大統領兼国防相は7日、官邸で岸田文雄首相と会談し、日本・スイス間の自由貿易協定(FTA)改定というスイスの要望を改めて表明した。

もっと読む アムヘルト大統領、岸田首相と会談 FTA改定を改めて要望
UNRWAの前でたむろす子どもたち

おすすめの記事

UNRWA、「イスラエル襲撃に関与した可能性」の9人を解雇

このコンテンツが公開されたのは、 国連は5日、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の職員9人が昨年10月7日のイスラム過激派ハマスによるイスラエル襲撃に「関与していた可能性がある」との内部調査を発表した。

もっと読む UNRWA、「イスラエル襲撃に関与した可能性」の9人を解雇
診察を受ける赤ちゃん

おすすめの記事

スイスで小児科医が不足

このコンテンツが公開されたのは、 スイス小児科医協会は医師が足りず、特に地方部で子どもが十分な治療を受けられなくなる可能性があると警告する。背景には柔軟な働き方を求める世代の増加や役所・企業の「官僚主義化」があると批判する。

もっと読む スイスで小児科医が不足
注射を打たれる男性

おすすめの記事

コロナ再流行のスイス、ワクチン不足に

このコンテンツが公開されたのは、 スイスでは現在、新型コロナウイルス感染症が再び流行している。それ自体はさほど深刻ではないものの、ワクチンを受けたくても薬局や診療所に在庫がない事態が発生。背景には7月初めの制度変更がある。

もっと読む コロナ再流行のスイス、ワクチン不足に
座り込む女性の横顔

おすすめの記事

スイスで人身取引被害が増加

このコンテンツが公開されたのは、 「人身取引と闘うプラットフォーム(Plateforme Traite)」は2023年、スイスで197件の人身取引(人身売買)事案を記録した。前年比で11%増加した。

もっと読む スイスで人身取引被害が増加
耳を抑える子どもと打ち上げ花火

おすすめの記事

「建国記念日に花火欠かせない」半数 スイス世論調査

このコンテンツが公開されたのは、 スイス人の半数が、打ち上げ花火は8月1日の建国記念日に欠かせないと考えていることが最新の調査で分かった。しかし、回答者の大多数は個人での花火打ち上げに反対している。

もっと読む 「建国記念日に花火欠かせない」半数 スイス世論調査

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部