スイスのアラン・ベルセ内務相が21日、年末に退任すると発表した。直近まで続投の意欲を見せていただけに、突然の翻意は国内に波紋を呼んでいる。
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「閣僚の任期(4年)3期というのは、連邦議会から退くには良いタイミングだ」。ベルセ氏は21日正午過ぎに緊急開催した記者会見で満足げにこう語った。退任の噂は数カ月前から流れていたが、突然の辞意表明は驚きを与えた。
フランス語圏のフリブール州出身、左派の社会民主党(SP /PS)所属。初入閣した2012年以来、常に内務相の座にいた。閣僚歴は現在の7人の中で最長だが、51歳という年齢は最年少だ。その人物像にはさらなる特徴がある。アンケートでは常に好感度の高い政治家上位に入ってきた一方、右派には多くの敵がいた。特に新型コロナウイルス危機対応を巡り、批判の矢面に立つこともあった。
21日の記者会見でベルセ氏は、自身や家族がコロナ対応への反発者からの攻撃を受け、時には警察を呼んだこともあったと繰り返した。18日の国民投票で可決されたCOVID法についても触れた。新たな流行に備えるための同法が国民投票にかけられるのは今回が3度目だった。3回目も可決されたことで、パンデミックは真の終息を迎え、退任には理想的なタイミングだとベルセ氏は説明した。
ベルセ氏は数々のスキャンダルでも話題の中心になってきた。不倫絡みの脅迫、犯罪まがいのリークを犯した側近、プライベート飛行中のフランス領空侵入….メディアの見出しを飾る数は、他の連邦閣僚とは一線を画した。
だがその人気は揺るがなかった。アンチ勢がどれだけ頑張っても、ベルセ氏を失脚に追い込むことはなかった。記者会見でスキャンダルが退任の決断に影響を与えたかと問われたベルセ氏は、いつものように自信たっぷりにこう答えた。「私がそれらを気に病んでいたとお考えなら、それは間違いだ」
ベルセ氏不在の閣僚選
今年10月には連邦議会総選挙が予定され、その後にベルセ氏の後任となる新閣僚が選出される。上下院合同議会で行われる閣僚指名選挙は、総選挙の結果次第で波乱も予想される。
7人の閣僚ポストが配分される政党は「マジック・フォーミュラ」と呼ばれる比率で決まっている。議席上位3党が2ポストずつ、第4党が1ポストを握る。支持層の安定した第1党の右派・国民党(SVP/UDC)を除くと、他の主要政党(社会民主党、急進民主党、中央党、緑の党、自由緑の党)の議席数は横並びだ。秋の選挙は連邦閣僚の政党構成にも影響を与える可能性がある。
閣僚が辞任すると同時に後継者探しも始まる。ここでは言語圏や代表地域のバランスが考慮され、性別も大きな選考ポイントだ。現在の閣僚構成を踏まえると、ベルセ氏の後任にはドイツ語圏出身の男性が選出されることは確実だ。
≫ベルン、東京、ニューヨーク、バングラデシュを舞台に。ベルセ氏の12年を写真で振り返る
独語からの翻訳:ムートゥ朋子
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