ロシアの元富豪セルゲイ・プガチェフ氏が仏ニースの自宅でswissinfo.chとの独占インタビューに応じ、ロシア政府やソシエテ・ジェネラル銀行スイス支店との裁判、そしてスイスの銀行がいかにしてオリガルヒ(新興財閥)が制裁を回避するのを手助けしているかを語った。
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▼インタビューの全容はこちら(日本時間2023年9月7日午後11時公開。英語・ロシア語)
プガチェフ氏は故ボリス・エリツィン元ロシア大統領の顧問を務めた。そのキャリアは現在のウラジーミル・プーチン大統領が権力を握るのを助ける役割を果たしたと自省する。一時はロシア大統領府のあるクレムリンを定期的に訪問し、国際的に著名な投資家だったが、今はフランス国籍を取得しフランス国家の保護を受けながら、仏ニースの別荘で暮らしている。
プガチェフ氏がメディアに別荘への立ち入りを許したのは初めてだ。swissinfo.chとの独占インタビューで、「英国とフランスで何度か暗殺されかけた。(取材を)恐れるだけの理由がある」と語った。
フォーブス誌は2008年、推定2億ドルの資産を持つプガチェフ氏をロシア第50位の富豪にランク付けした。2014年にはロシアで横領と違法な資金流出の罪で告発された。現在、ハーグの仲裁裁判でロシア政府が押収した資産120億ドル(約1.7兆円)超の返還を求めている。
仏ソシエテ・ジェネラル銀行スイス支店との法廷闘争にも関与している。同行は、ロシア高官が偽造署名でプガチェフ氏の個人口座からロシアに1億ドルを送金することを許可したと主張している。これに対してプガチェフ氏は、資金はロシア国営のVTB銀行のアンドレイ・コスティン会長の経営する企業と銀行に送金され、書類はプガチェフ氏自身に代わってロシア連邦保護局の大佐が署名したものだと反論している。
ソシエテ・ジェネラル銀行スイス支店はswissinfo.chの取材に対し、「スイスに存在するすべての銀行と同様に機密性と職業上の秘密を順守する義務があり、個別の事実関係についてはコメントしない」と回答した。
プガチェフ氏はswissinfo.chとのインタビューで、スイスの銀行はオリガルヒ(新興財閥)の制裁逃れを援助したと非難した。「ロシア人顧客を担当する特別なマネージャーたちが、お金を遡及的に処理したり、有価証券を購入した証拠を提示したり、資金をドバイに移したりしている。顧客への忠誠心を示すためだ」
英語からの翻訳:ムートゥ朋子
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