スイスの視点を10言語で

スイスハイキング、山の事故には要注意

ハイキング客
センティス山を眺めながら休憩を取るハイカーたち © Keystone / Gian Ehrenzeller

スイスのアッペンツェル・アルプスにあるアルプシュタイン山群で今年、ハイキング中の死亡事故が多発している。世界的に著名なレストラン「エッシャー」やゼーアルプゼーの周辺で5人が転落死した。

スイスが建国記念日を祝った今月1日。31歳の女性と5歳の娘が、エッシャーからアルテンアルプに向かう途中の坂道で転落。航空救助隊レガ(REGA)が駆け付けたが、既に死亡していた。

このほかにも、6月と7月に周辺で計3人が転落死した。この3件の事故はいずれもエッシャーからゼーアルプゼーに向かう急な下り坂で発生した。

毎年、山で遭難する人はどのくらいいるのか?ハイキング中に亡くなる人の数は?スイスでのハイキングはどのくらい危険なのか、数字を見てみよう。

山での緊急事態件数は増加している。事故か病気かにかかわらず、山岳救助隊が出動する事案は山岳緊急事態と呼ばれる。山岳救助隊の統計では、2021年の出動件数は合計3680回と、2019年に比べ20%増えた。

外部リンクへ移動

うち約4割に当たる1525件は、ハイキング客の救助だった。スキー客の救助に500回、高地登山家の救助に424回出動した。その他にマウンテンバイクやクライミング、デルタ・パラグライダー、山スキー・スノーボード中の事故に対応した。

原因のほぼ半数が転倒・転落だった。25%は疲労、17%は体調不良、8%は道に迷ったことが原因だった。

外部リンクへ移動

死亡事故件数は過去10年、わずかに増加傾向にある。ただ20年前もほぼ同数のハイキング客が死亡していた。

外部リンクへ移動

スイスアルペンクラブ(SAC)で緊急事態の統計を担当するブルーノ・ハスラー氏も、死亡事故が増加傾向にあると話す。その背景として、多くの人が自分の能力を過大評価しているという。「ハイキングをする人に情報が届きやすくしなければならない。当局には、登山の危険性についてできるだけ多くの情報を提供する義務がある」。連邦事故防止事務局(bfu/bpa)も啓発活動に取り組んでいるが、「周知すべき人全てに情報が届いていないのは明らかだ」。

事故の多発地帯はある?過去10年間の死亡事故を振り返ると、大半が中央スイスだ。ただスイスの山ではどこでも死亡事故が発生するリスクがある。特に人の往来が多い山は、事故が起きやすい。

独語からの翻訳:ムートゥ朋子

人気の記事

世界の読者と意見交換

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部