スイス国立銀行(SNB、中央銀行)は21日、政策金利を1.75%に据え置いた。据え置きは6会合ぶり。市場では0.25%の引き上げが予想されていた。
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SNBは声明外部リンクで、中期的な物価安定のために追加の引き締めが必要になる可能性は排除できないと述べた。
SNBは3カ月毎に開かれる理事会で5回連続、計2.50%政策金利を引き上げた。インフレ率は昨年の3.5%をピークに鈍化しており、過去3カ月は中銀目標の0~2%に収まっている。8月は1.6%だった。輸入品やサービス価格の下落が主な要因だ。
ただSNBは今後もスイスのインフレは緩やかにしか低下しないと想定している。21日発表したインフレ見通しでは、7~9月期は1.7%で推移するが、持続的に2%の基準を下回るのは2025年以降と予想する。
SNBは適切な金融状況を確保するため、引き続き外国為替市場で積極的に介入する構えだと強調した。現状ではフラン相場の下落を食い止めるためのフラン買い・外貨売り介入を意味する。
SNBのトーマス・ジョルダン総裁は同日、ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)のインタビュー外部リンクで、金利据え置きの理由として全体的にインフレ圧力がわずかに低下していること、またフラン相場がある程度上昇していることを挙げた。「これら2点を踏まえ、SNBは次に何が起こるかを様子見し、金融政策の追加引き締めが必要かどうかを12月に改めて決めることとした」
物価の押し上げ要因として、家賃とエネルギー価格を注視する。賃金と物価のスパイラルが起きるリスクについては「賃金がどのように動くかに拠るが、それについてはSNBは関与しない。とにかくインフレが中期的に上昇しすぎないようにすることが非常に大事だ」と述べるにとどめた。
日本以外の主要中銀は利上げを続けてきたが、ここにきて引き締めに一服感が出ている。米連邦制度準備理事会(FRB)は20日、6月以来2会合ぶりに利上げを見送った。欧州中央銀行(ECB)は14日に10会合連続の利上げを決めたが、打ち止めの可能性を示唆した。
英語・独語からの翻訳:ムートゥ朋子
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