スイスの視点を10言語で

スイス原発、ロシアからのウラン調達見直し

Axpo
ベツナウ第1原子力発電所 © Keystone / Ennio Leanza

スイスの2つの原子力発電所はロシアの国営原子力企業ロスアトムから燃料を調達している。ウクライナを侵攻したロシアに制裁が強まる中、ロシアからの燃料調達の見直し作業が進む。

スイスの電力会社アクスポは、アールガウ州のベツナウとライプシュタット原発での発電用にロスアトムから燃料のウランを購入している。

環境NGOのグリーンピースは先月31日に発表した声明で、アクスポを所有する7州の当局に対しロスアトムからのウラン購入を止めるよう要請。ウランを購入すればロシアのウクライナ侵攻を財政的に支援することになると指摘した。

現行契約は維持

アクスポの原発部門責任者のヴィリバルト・コールパイントナー取締役はドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)で「安全・品質技術上必要な品質を間違いなく提供してくれるサプライヤーがいるのなら、それを(他に)替えるのは簡単ではない」と述べた。

同氏によると、アクスポはロスアトムとの現行の契約は継続するが、新規の契約は結ばない方針だ。アクスポは総燃料の4分の3をロスアトムから調達している。

ベツナウ原発の原子炉2基は全燃料をロシア産に依存する。ライプシュタット原発では濃縮ウランの半分がロシア産だ。

コールパイントナー氏は、アクスポが現在「ロシア産燃料への依存をどう減らせるか、集中的に精査している」と明かした。同社は緊急事態に備え、天然ウランと低濃縮ウランを西欧に備蓄している。

スイスにある原子炉4基のうち、アルピックが運営するゲスゲン原発(ソロトゥルン州)だけがロシア産のウランを使っていない。環境適合性やサプライチェーンの透明性を考慮し、2016年に調達を取りやめた。以来、カナダとオーストラリアからウランを調達し、西欧で濃縮している。

SRFによると、現在スイス全体で原子力用燃料の50%がロシアから供給されている。ロスアトムはロシア軍の弾頭を製造し、3月4日の戦闘で制圧したウクライナのザポリージャ原発など複数のウクライナの原発を管理している。

(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

笑顔で握手を交わす閣僚

おすすめの記事

2025年のスイス連邦大統領はカリン・ケラー・ズッター氏

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦議会は11日、カリン・ケラー・ズッター副大統領兼財務相(急進民主党、60歳)を新大統領に選出した。新副大統領にはギー・パルムラン経済・教育・研究相(国民党、65歳)が選ばれた。

もっと読む 2025年のスイス連邦大統領はカリン・ケラー・ズッター氏
健康保険カード

おすすめの記事

医療費の高騰、依然としてスイス国民の最大の関心事 調査

このコンテンツが公開されたのは、 大手金融機関UBSが12日発表した調査「心配事バロメーター」によると、依然として医療費と健康保険料の高騰が最大の懸念事項だったことが分かった。環境と年金も懸念事項にあがっている。

もっと読む 医療費の高騰、依然としてスイス国民の最大の関心事 調査
連邦工科大学の校舎

おすすめの記事

スイス連邦工科大、留学生の授業料3倍引き上げ決定 25年秋学期から

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)と同ローザンヌ校(EPFL)が、留学生の授業料をスイス人学生の3倍に引き上げ、2025年秋学期から1学期当たり2190フランにすることを決めた。

もっと読む スイス連邦工科大、留学生の授業料3倍引き上げ決定 25年秋学期から
ベツナウ原発

おすすめの記事

世界最古の原子力発電所、2033年に稼働終了

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの電力会社アクスポは5日、世界で最も古いベツナウ原子力発電所の稼働を2033年に終了すると発表した。33年までの運転継続にかかる追加事業費は3億5000万フラン(約600億円)を予定している。

もっと読む 世界最古の原子力発電所、2033年に稼働終了
アルコール検査

おすすめの記事

スイスのドライバー、2割が飲酒運転

このコンテンツが公開されたのは、 欧州など39カ国のドライバーを対象にした調査で、スイスでは2割超が飲酒運転をしたことがあると回答した。

もっと読む スイスのドライバー、2割が飲酒運転
銃口

おすすめの記事

狩猟中の事故で男性死亡 スイス西部

このコンテンツが公開されたのは、 先月29日午後、スイス西部ヴォー州で64歳の男性が狩猟中に死亡した。イノシシを撃とうとした 猟友会のメンバーに射たれた。

もっと読む 狩猟中の事故で男性死亡 スイス西部
サルコ

おすすめの記事

自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が釈放 70日拘束

このコンテンツが公開されたのは、 今年9月にスイスで初めて使われた自殺カプセル「サルコ」について、連邦内閣は、当分の間、立法措置は必要ないとの見解を示した。サルコ運営団体は2日、身柄を拘束されていたフロリアン・ヴィレ代表が釈放されたと発表した。

もっと読む 自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が釈放 70日拘束
金塊

おすすめの記事

スイス在住長者番付2024 トップはシャネルのオーナー

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの金融誌ビランツがまとめた長者番付2024年版によると、スイス在住の富豪トップに輝いたのは、仏高級ブランド・シャネルのオーナー家族の1人、ジェラール・ヴェルテメール氏だった。上位の顔ぶれはほぼ前年と同じだが、香料メーカーのフィルメニッヒ(Firmenich)創業家が初のトップ10入りを果たした。

もっと読む スイス在住長者番付2024 トップはシャネルのオーナー
ポイ捨てされた空き缶と小鳥

おすすめの記事

スイス、ポイ捨て「少ない」8割 アンケート調査

このコンテンツが公開されたのは、 スイス・ポイ捨て防止コンピテンスセンター(IGSU)の年次アンケート調査によると、「スイスでは多くのゴミが適切に処理されていない」と考える人は16%にとどまった。

もっと読む スイス、ポイ捨て「少ない」8割 アンケート調査

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部