日本のアニメ映画監督、高畑勲氏が5日、82歳で死去した。高畑監督が1970年代に生んだテレビアニメ「アルプスの少女ハイジ」はスイスでもよく知られ、スイスの観光・文化に大きな影響を与えた。
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スイス人作家ヨハンナ・シュピリが生み、高畑勲監督が育てた少女・ハイジの笑顔は、世界中で愛された。マグカップやTシャツに商品化されたり、スイスの広告ポスターに登場したりと、特に日本人にとってはスイスを象徴する存在となっている。
テレビ放送のオープニング曲「おしえて」は日本のカラオケでもよく歌われ、スイス・ヨーデルの存在を世に知らしめた。多くのハイジ・ファンがクラブを作って集い、子供たちはハイジの人形で遊んだ。
高畑版ハイジはスイスにも大きな影響を与えた。ハイジの舞台となったグラウビュンデン州マイエンフェルトには、毎年多くの日本人観光客が訪れる。ハイジの家や山小屋を再現した観光スポット「ハイジ村」のホームページ外部リンクでも、高畑版ハイジが観光客の案内役を務める。
観光資源としての役割は今なお絶大だ。ザンクトガレン州のスキーリゾート・フラムザーベルクは、ハイジをテーマにした新しいテーマパーク「ハイジ体験村」の建設を企画している。ホテルやレストラン、ケーブルカーのほか、野外演劇の上演などを予定。建設には総額1億フラン(約112億円)かかると見積もられる。2020年の開園を目指すが、建設用地売却などの是非をめぐり、地元で6月10日に住民投票が実施される。
スイスに「逆輸入」
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ハイジの物語はスイスで繰り返し映画化されている。15年に公開された「ハイジ アルプスの物語」の監督アラン・グスポーナー氏は、日本のツタヤのインタビュー外部リンクで「私の中のハイジの姿は、髪が短くて、いつも笑っていて、高畑監督のアニメのイメージそのもの」と語っている。
2009年のロカルノ映画祭では、高畑監督に長年の映画界への貢献を表彰し名誉豹賞が贈られた。直近の作品「かぐや姫の物語」は15年に米アカデミー賞の長編アニメーション映画賞にノミネートされた。
ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)は、6日の放送外部リンクで「高畑監督は(共にスタジオ・ジブリを設立した)宮崎駿監督の陰に隠れがちだったが、高畑作品は宮崎作品に比べ静謐で哀愁が漂う。感情と孤独の物語だ」と評した。
また、「おもひでぽろぽろ」(1991年)で、初めて恋に落ちた主人公のタエ子が幸せいっぱいに空を泳ぐシーンを挙げ、その違和感を感じさせない手法に「(高畑監督は)現実描写と抽象、見ているものと感じているものを融合させる」ことを得意とし、観る人に「忘れがたい場面を作り出した」とつづった。
(独語からの翻訳&編集・ムートゥ朋子)
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同作品は2015年の初公開からスイスで百万人、さらに世界中で240万人の観客を動員。制作費は850万フラン(約10億4千万円)で、スイスとドイツで合作された。
スイス人監督アラン・グスポーナーはスイスインフォのインタビューで、ヨハンナ・シュピリの原作「ハイジ」により忠実な、美化されていない作品作りに注力したと答えている。
ハイジ役を演じたアヌーク・シュテファンは、原作の舞台となったグラウビュンデン州出身。演技の経験は無かったが、オーディションで500人の候補者の中から選ばれた。またハイジの祖父を、スイスの有名な俳優ブルーノ・ガンツが演じている。作中ではスイス特有の方言、スイスドイツ語も話されている。
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