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スイス都市部の観光 コロナ禍で未だに低迷

ビジネス旅行は新型コロナウイルスのパンデミックで激減した。ジュネーブの高級ホテルはその影響を今でも受け続けている
ビジネス旅行は新型コロナウイルスのパンデミックで激減した。ジュネーブの高級ホテルはその影響を今でも受け続けている Keystone / Martial Trezzini

都市部の観光業ほど新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で深刻な影響を受けたセクターはないだろう。ジュネーブも例外ではない。多くの課題を抱えながらも、ジュネーブ観光局のソフィー・デュビュイ局長は諦めない。

スイス経済の上層部で女性が占める割合はまだまだ低い。例えばスイスの主要株式指数SMIを構成する大手企業20社で、女性管理職の割合はわずか13%。国際比較ではスイスはこの点において劣っている。swissinfo.chでは今年1年間、世界に展開するスイス企業の女性経営者の意見に耳を傾けていく。スイス経済の代表たちが、新型コロナウイルス危機から世界経済におけるスイスの立ち位置まで、現在の最も差し迫った課題について語る。

swissinfo.ch:2020年はジュネーブの観光業にとって暗黒の年になりました。今後の見通しは?

ソフィー・デュビュイ:昨年はパンデミック前の3カ月間が好調だったにもかかわらず、ホテル宿泊数は68%も落ち込みました。今年は特に夏季が良かったこともあり、間違いなく少しは良くなるでしょう。ロシアのプーチン大統領とバイデン米大統領の米ロ首脳会談ももちろんプラスになりました。

また、ジュネーブを素晴らしいレジャー目的地として紹介する、大規模キャンペーン「ジュネーブ・リゾート」を展開しました。このキャンペーンのおかげで昨年より宿泊数が増え、チューリヒに比べ良い結果になりました。

今後数年間の見通しですが、観光業はスイス国内だけではなく海外の感染防止対策に全面的に左右されるため、いまだに不透明です。また、将来的にはいくつかの大きなイベントは、一部がオンラインで開催されるようになる可能性もあります。実際のところ、非常に短期的な対応をせざるを得ません。

2019年1月からジュネーブ観光局の局長を務めるソフィー・デュビュイ氏
2019年1月からジュネーブ観光局の局長を務めるソフィー・デュビュイ氏。スイスの観光高等専門学校で観光マネジメントの学士号を取得し、ジュネーブ大学でEMBAを取得した Adrian Moser / Tamedia AG

swissinfo.ch:22年2月に開催予定だったジュネーブモーターショーも3年連続で延期になりました。

デュビュイ:確かに痛手を受けました。ですが延期になったのは、ジュネーブが開催地としての魅力を失ったからではなく、自動車業界が直面している部品調達の問題やパンデミックに伴う不確実性が原因です。

swissinfo.ch:ジュネーブを観光地としてアピールする上で、国際メディアやソーシャルメディアが果たす役割とは?

デュビュイ:国際メディアの役割は非常に重要です。私たちはそうしたメディアと直接またはスイス政府観光局を介してコンタクトを取るために、あらゆる努力を惜しみません。また、インスタグラムや「微信(ウィーチャット)」などのソーシャルメディアは、従来のメディアよりもさらに重要なものになっています。

1500人のフォロワーを持つ1人の観光客がインスタグラムでポジティブな投稿をするだけでも、実際にプロモーション効果があるのです。ましてや米CNNの人気ジャーナリスト、ウルフ・ブリッツァーが米ロ首脳会談で訪れたジュネーブに感嘆して投稿したツイートの影響は、計り知れません。

swissinfo.ch:スイス政府観光局とはどのように連携していますか?

デュビュイ:非常に良い協力関係で、必要不可欠なことです。スイス政府観光局は観光地に様々なサービスの提供を提案し、その代わりに費用の一部を負担しています。私たちは、例えば観光目的地としてイベントに参加したり、スイス政府観光局が英国向けに行った観光促進キャンペーンなどに同行したりできます。もちろん私たちはコンテンツ、つまりアピールしたいと思う強みを伝えます。

年間売上高は数日間で1900万フランから900万フランに減った。

swissinfo.ch:ジュネーブ観光局のスタッフは皆ジュネーブ勤務です。国外ではスイス政府観光局が独占活動しているということですか?

デュビュイ:独占しているわけではありません。私たちの戦略は、明確で実践的なのです。海外での活動は政府観光局に一任した方が効率的です。

swissinfo.ch:もっと地域に密着したプロモーションが望ましいですか?

デュビュイ:望ましいだけではなく、ジュネーブ州との業務契約では不可欠な要素です。また、ヴァレー(ヴァリス)州やヴォー州、フランス近隣地域とは初となる共同地域プロジェクトを始めました。

swissinfo.ch:ジュネーブ観光局のウェブサイト外部リンクは6カ国語に対応していますが、ジュネーブの観光業にとって重要な言語である中国語とアラビア語は含まれていません。

デュビュイ:中国人はまず第一にウィーチャットや中国版ツイッターの「微博(ウェイボー)」など、他のプラットフォームから情報を得ています。一方、アラブ諸国の観光客は、英語に全く問題がありません。

swissinfo.ch:ジュネーブ観光局の成功を測る基準は?特に、観光局の取り組みが観光客増につながったと、どのように判断するのですか?

デュビュイ:とても重要なテーマですが、正確に答えるのは困難です。例えば、宿泊者数はコロナ危機などの外的要因に大きく左右されます。ですが、ある国にターゲットを絞ってプロモーションをし、その国からの宿泊数が増えれば、私たちの努力によるものだと言えるでしょう。また、メディアへの露出度やパートナー企業の満足度を測ることも当然あります。

ジュネーブ観光・会議財団(通称・ジュネーブ観光局)は、公益性の認められた私法上の財団。経済界・観光業界代表によって120年以上前に作られた同財団の役割は、2019年に改正されたジュネーブ観光法に定められる。ジュネーブをレジャーやビジネスの目的地として宣伝・販売し、観光客の受け入れ、情報提供、サポートなどを目的とする。

swissinfo.ch:財政面はどうですか?

デュビュイ:通常の年だと、資金の7割が観光客の払う宿泊税(1泊1人当たり3.65フラン、約450円)、3割がジュネーブ州の定めた「観光ゾーン」にある企業が払う観光振興税で賄われています。

当然、宿泊税収入は激減しました。また、企業の支援策としてジュネーブ州が観光振興税を半額にしたため、年間売上高は数日間で1900万フランから900万フランに減りました。昨年はジュネーブ州議会に450万フランの追加予算を要請し認められましたが、残念なことに、スタッフを60人から45人ほどに減らさざるを得ませんでした。

(仏語からの翻訳・由比かおり)

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