スイスの視点を10言語で

スイス原発 廃炉完了に15年、作業員300人

nuclear cleanup
© Keystone / Peter Klaunzer

ベルン州にあるミューレベルク原子力発電所の廃炉作業は順調に進んでいる。しかし、原発の跡地を再利用できるようになる2034年までには、まだ長い道のりがある。

スイス通信が現地の訪問取材で運営会社のベルン電力(BKW)から聞いた話によると、原発の運転を停止した2019年から4年間で運び出された廃材は5400トン。これは全解体廃棄物の3分の1に相当する。

9月初旬には最後の使用済み核燃料がアールガウ州ヴューレンリンゲンの高レベル放射性廃棄物中央中間貯蔵施設に移し替えられた。

使用済み核燃料の取り出しは、廃炉作業において重要度の高いプロセスだった。BKWの原子力戦略責任者を務めるウルス・アムヘルト氏は「これでミューレベルクには核に関するリスクが存在しなくなった」と語った。

同原発の建設には1967年から1972年までの5年を要したが、解体作業にはその3倍となる15年の歳月が必要となる。参加する作業員は300人超。原発がまだ稼働していた頃と同じ数だ。

おすすめの記事

おすすめの記事

スイス初の原発解体、その行程は?

このコンテンツが公開されたのは、 カウントダウンが始まった。約150日後、スイスで初めて原発が廃炉となる。その後、15年かけて解体が行われる。運転停止はこれまでにも定期的に行われてきたが、さてその後は…?

もっと読む スイス初の原発解体、その行程は?

厳しい安全基準は今も守られている。原発の敷地内に入るには、防護服と被ばく線量測定に用いられる線量計を身につけなければならない。セキュリティチェックも頻繁に行われる。

膨大な作業

解体作業では、すべてのボルトを一つひとつ取り外し、洗浄・汚染検査を行ったうえで廃棄処分しなければならない。そのため作業量は膨大で、細心の注意が必要となる。

専門家らがこれらを放射性廃棄物、除染が必要な解体廃棄物、汚染されていない解体廃棄物に分け、それぞれ適切な集積所に運ばれる。

アスベストと鉛含有塗料

予想以上の発がん性物質アスベスト(石綿)や散在する鉛含有塗料が作業を複雑にした。前出のアムヘルト氏は「放射能ではなく、有毒な化学物質から身を守るために作業服を着替える必要があった」と説明した。

ミューレベルク原発はスイスで初めて廃炉になった原発だ。廃炉は2013年に決定した。アムヘルト氏は「電気代が高騰する今、こうした決断が下ることはもはやないだろう」と語った。

おすすめの記事

おすすめの記事

スイスの一つの原発の終わり

このコンテンツが公開されたのは、 11月27日の国民投票では、緑の党が提起した脱原発イニシアチブで「原発の運転期間を45年に限定すること」が問われる。では、原発の停止・廃炉とは具体的には何を意味するのだろうか。どのような課題が想定されるのか。今回の国民投票の結果とは関係なく、2019年末に廃炉を決めたミューレベルク原発の例を追った。

もっと読む スイスの一つの原発の終わり

英語からの翻訳・大野瑠衣子

最も読まれた記事
在外スイス人

世界の読者と意見交換

ニュース

スイス中銀

おすすめの記事

スイス中銀、807億フランの黒字 2024年決算

このコンテンツが公開されたのは、 スイス国立銀行(中央銀行、SNB)が3日発表した2024年度決算確報は、807億フラン(約13.5兆円)の黒字だった。速報時点の見込み通り、連邦政府・州に30億フランを配当する。

もっと読む スイス中銀、807億フランの黒字 2024年決算
スイス中銀のマルティン・シュレーゲル総裁

おすすめの記事

スイス中銀総裁、ビットコインの準備金化に反対

このコンテンツが公開されたのは、 スイス国立銀行(中央銀行、SNB)のマルティン・シュレーゲル総裁はスイス紙のインタビューで、中銀の準備金にビットコインを追加する国民投票案に反対する考えを示した。暗号資産(仮想通貨)は資産として多くの問題を抱えていると指摘した。

もっと読む スイス中銀総裁、ビットコインの準備金化に反対
ドナルド・トランプ米大統領

おすすめの記事

スイス、米国の死刑推進に「深い懸念」表明 人権理事会で

このコンテンツが公開されたのは、 スイス政府は3日の国連人権理事会(HRC、本部・ジュネーブ)で、ドナルド・トランプ米大統領が連邦・州レベルの死刑制度を強化する大統領令に署名したことを「深く懸念している」と表明した。

もっと読む スイス、米国の死刑推進に「深い懸念」表明 人権理事会で
株価ボード

おすすめの記事

スイス株式相場、初めて1万3000の大台に

このコンテンツが公開されたのは、 スイス株式市場で24日、代表指標のSMIが一時1万3000の大台を超え、史上最高値を記録した。前日のドイツ連邦議会選挙で保守派が勝利したことを受け、安心感が広がった。

もっと読む スイス株式相場、初めて1万3000の大台に
ゼンティス山の山岳ケーブルカーとスイス国旗

おすすめの記事

ゼンティス山の山岳ケーブルカー、改修工事へ

このコンテンツが公開されたのは、 東スイスの有名観光地ゼンティス山の山岳ケーブルカー「Säntisbahn」運営会社は24日、強風に対する安定性向上を目的にケーブルカー施設の全面改修工事に着手すると発表した。

もっと読む ゼンティス山の山岳ケーブルカー、改修工事へ
牧草をはむ牛

おすすめの記事

スイス、PFASの規制強化を検討

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦政府は「永遠の化学物質」の異名を持つ有機フッ素化合物(PFAS)の規制強化に着手した。飲み水の上限値は来年から引き下げられる。

もっと読む スイス、PFASの規制強化を検討
ツークの街並み

おすすめの記事

スイス検査・認証SGSが本社移転 ジュネーブからツークへ

このコンテンツが公開されたのは、 世界有数の試験・検査・認証機関であるスイスのSGSは、本社をジュネーブ州からツーク州に移転する。大手多国籍企業の移転は、ジュネーブ州の税収にも影響を及ぼしそうだ。

もっと読む スイス検査・認証SGSが本社移転 ジュネーブからツークへ
鏡を見るバレエダンサー

おすすめの記事

ローザンヌ国際バレエコンクール2025始まる 日本から13人出場

このコンテンツが公開されたのは、 スイス西部ローザンヌで2日、第53回ローザンヌ国際バレエコンクールが始まった。23カ国から集まった85人の若手ダンサーが8日の最終選考進出を目指し、さまざまな課題曲に挑戦する。

もっと読む ローザンヌ国際バレエコンクール2025始まる 日本から13人出場

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部