スイスは15日、2011年の東京電力福島第1原子力発電事故後に導入した日本産食品の輸入規制を完全に撤廃した。スイスに輸出される一部の食品に対し義務付けられていた放射能物質の検査証明が不要となる。
このコンテンツが公開されたのは、
連邦内務省食品安全・獣医局(BLV/OSAV)の報道官はスイス通信社(SDA)に対し、これまでは福島県産の野生のキノコ類、一部の魚、山菜などが規制品目として定められていたが、現在の放射能のレベルであればこうした規制は必要ないと説明した。また、日本当局は食品に含まれる放射線物質の量を減らすために多大な努力をしてきたとも述べた。
同局外部リンクによると、動物由来食品に対する規制は今月3日に撤廃された。15日からは、植物由来の食品に対しても規制がなくなる。
輸入規制は特に日本経済に多大な影響を与えてきた。貿易の障壁が取り除かれたことは、日本にとって重要な一歩となる。
これまで規制品目として定められていた食品には、スイス輸出前に放射性物質の検査証明を提出する必要があった。一部の食品は追加検査の対象となることもあり、国境における手続きが煩雑化していた。
おすすめの記事
おすすめの記事
スイスに刻まれるフクシマの記憶
このコンテンツが公開されたのは、
大地震・津波・原発事故に見舞われた3.11から10年。スイスでは2011年はフクシマの年として記憶に刻まれ、世論とエネルギー政策を突き動かした。長い時間をかけて脱原発の道筋が定まった今、フクシマは忘れられていくのだろうか?
もっと読む スイスに刻まれるフクシマの記憶
福島第1原発の事故を受け、最大55カ国・地域が日本産食品の輸入規制をかけていた。米国は2021年に規制を廃止。今月3日には欧州連合(EU)加盟27カ国、ノルウェー、アイスランドが撤廃した。現在も規制を課すの国・地域は中国や韓国などの7カ国となっている。
英語からの翻訳:大野瑠衣子
おすすめの記事
おすすめの記事
震災の跡
このコンテンツが公開されたのは、
東日本大震災から6年。3月11日は、世界中から改めて被災地に想いを馳せる日だ。スイスインフォでは、震災後に現地へ足を運び、現実を肌で感じとったスイス人の視点で表現されたイラストと写真を10カ国語で紹介する。
もっと読む 震災の跡
おすすめの記事
氷河の融解でスイスとイタリアの国境に変化
このコンテンツが公開されたのは、
スイスはイタリアとフランスとの国境を変更した。イタリアとの国境は氷河の融解、フランスとの国境はジュネーブ地方の新しい路面電車と河川にそれぞれ関連している。
もっと読む 氷河の融解でスイスとイタリアの国境に変化
おすすめの記事
スイス中央銀行、0.25%の利下げ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国立銀行(中銀、SNB)は26日、政策金利を0.25%引き下げ、1%にすると発表した。
もっと読む スイス中央銀行、0.25%の利下げ
おすすめの記事
ムーティエのジュラ州編入 住民投票でも可決
このコンテンツが公開されたのは、
人口7200人の州境の町ムーティエが2026年1月1日にベルン州からジュラ州に編入する協定が、22日の両州の住民投票で可決された。
もっと読む ムーティエのジュラ州編入 住民投票でも可決
おすすめの記事
チューリヒ市の有権者、CO2回収プロジェクトを支持
このコンテンツが公開されたのは、
チューリヒ市の有権者は22日の住民投票で、市内の下水処理場における革新的なCO2回収プロジェクトを承認した。
もっと読む チューリヒ市の有権者、CO2回収プロジェクトを支持
おすすめの記事
広島被爆の三輪車レプリカ、ジュネーブで展示
このコンテンツが公開されたのは、
1945年8月6日、広島への原爆投下で被爆し死亡した子どもが乗っていた三輪車のブロンズ製レプリカが、ジュネーブの国際赤十字博物館に展示されている。
もっと読む 広島被爆の三輪車レプリカ、ジュネーブで展示
おすすめの記事
スイスの人口が900万人を突破
このコンテンツが公開されたのは、
連邦統計局(FSO)が19日に発表した2024年6月末のスイスの永住人口は900万2763人で、初めて900万人を突破したことがわかった。
もっと読む スイスの人口が900万人を突破
おすすめの記事
苦境のスイス時計業界 政策支援を要請
このコンテンツが公開されたのは、
スイス時計産業は難局を迎えた。スイス製時計への需要が緩み、フラン高が収益を圧迫する。業界は警鐘を鳴らしている。
もっと読む 苦境のスイス時計業界 政策支援を要請
おすすめの記事
重度障がい3歳女児を殺害した両親に禁錮8年判決 スイス
このコンテンツが公開されたのは、
スイス北部アールガウ州で、重度の障がいを持つ娘(3)を殺害したとして、地方裁判所は13日、両親を故意の殺人罪・殺人未遂罪でそれぞれ禁錮8年の実刑判決を言い渡した。
もっと読む 重度障がい3歳女児を殺害した両親に禁錮8年判決 スイス
おすすめの記事
キリスト絵画を的に射撃したスイス議員、辞職
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの自由緑の党(GPL/PVL)チューリヒ支部に所属するサニヤ・アメティ氏(32)は9日、党の役職を辞すると発表した。自身のインスタグラムでキリストと聖母マリアを描いた絵画を的に射撃の練習をする写真を投稿し、大きな批判を浴びていた。
もっと読む キリスト絵画を的に射撃したスイス議員、辞職
おすすめの記事
スイス検察、国民投票の不正疑惑を捜査
このコンテンツが公開されたのは、
スイス検察当局は、国民投票の提起に必要な署名が偽造されたとの疑惑を捜査している。収集代行業者が過去の署名を使い回したり、金銭を見返りに署名を集めた可能性がある。
もっと読む スイス検察、国民投票の不正疑惑を捜査
続きを読む
おすすめの記事
写真とイラストで震災後の福島で「生きる姿」を伝えるスイス人
このコンテンツが公開されたのは、
福島で震災が起きてまもなく6年。震災後の福島の様子を伝えようとするスイス人がいる。ジュネーブに住むマチュー・ベルトさんとジャン・パトリック・ディ・シルベストロさん。津波被害のあった海岸地区に未だに残る荒廃した光景や、福島第一原発事故により避難指示のあった町村へ帰還した人々の「生きる姿」を、イラストと写真を交えた「波の後―福島周辺」と題する本に映し出して海外に伝える。
福島では政府が提案していた避難指示が次第に解除され、帰還困難区域における復興政策が推し進められる。そんな中、イラストレーターのベルトさんは福島第一原発から15キロ圏内の立ち入り禁止区域に入り、「普通なら誰も行かない場所」での光景を白黒で、質朴な線で「事態の重大さ」を表現する。そして、一緒に報道の旅をした写真家のディ・シルベストロさんは、震災の跡をたどり、写真家にとって「誇張することのない現実」をカラー写真で紹介する。2人は『波の後―福島周辺』で、廃墟と化した町並みと共に避難解除によって帰還した住民がそこで「生きる姿」を紹介する。
まず目を奪われるのは、2014年3月に南相馬市小高区で撮った津波の威力を見せつけられる写真。津波によって三角形の防波堤のコンクリートが内陸3キロメートルのところまで打ち上げられている。この地域では、「ただ冷たい突風が吹いていて、壊れた家を吹き抜ける風の音が響き、たまにカラスの鳴き声があった。それ以外には何も無かった」と振り返って話す。そして、この放射能で汚染された地域で、ボランティア活動でゴミを拾う高齢者の方々に出会った。「荒廃した土地で一生懸命に掃除をするハノイさんという80代の女性に会った。『この土地で再び耕作することができるよう、後世代のために』と言って、何千年もかかるであろう無意味とも言える努力をしていた」とディ・シルベストロさんは語る。「しかし、この女性には普遍の笑顔があり、尊厳を感じた」とベルトさんが付け加える。
さらに2人は、「たとえ健康被害への危険性が高くても、将来への希望を持って、悲劇の後に再編成しようとする人々の日常生活」を描写する。当時、小高町で唯一開いていたという店での写真は、90歳近い女性が、客のいない店を清掃している。「店を閉じていてもしょうがないでしょ。生活が人生をもたらすのよ」と語ったのが印象的だったともディ・シルベストロさんは話す。
陸前高田でのイラストは、父親が赤ちゃんを抱きかかえ、母親が子供の手を引いて道路を渡ろうとする家族で、一見すると普通の日常の風景。だが、ベルトさんによると、背景にある海辺のカフェは震災の津波で完全に損壊したが、再び同じ場所に同じように再建されたもので、若い家族のシーンからは「生を感じて」描いたのだという。「イラストなので、角度を変えて時間をかけて何枚も撮る写真とは違って、さっとその場で感じたものを瞬時に描くことができた」
この報道をするため、何日間も「低放射能といわれる時期」を避難地区で過ごしたという2人。「危険でないとは言えない思う」と明かす。「低放射能を浴びるということで、今は健康被害がないかもしれない。でも、次世代への影響は分からない。分からないからこそ、危険だと思っている」と言う。
「この本は、人類がこれから先に抱えていく『課題の始まりの一つ』をちょっと報告するだけーー」
1969年にはスイスでもヴォー州リュサンの原子炉研究所で放射物質漏れが起きたことを忘れないで欲しい、と写真家は願いを込める。
『波の後―福島周辺』(Notari社出版)
ジュネーブ在住のマチュー・ベルトさんとジャン・パトリック・ディ・シルベストロさんが、震災後のフクシマの様子を白黒のイラストとカラー写真で伝える。ディ・シルベストロさんは、2013年3月から定期的に被災地を訪れているが、撮影は2014年3月にベルトさんと一緒に報道の旅をした時のもの。この本は、3月1日よりスイス仏語圏の書店で販売されているが、4月29、30日にジュネーブで開催されるブックフェアで紹介される。来月からはフランスを始め、カナダやベルギーの書店でも販売される予定。*3月11日には「波の後―福島周辺」に掲載されている写真とイラストの一部をギャラリーで、10カ国語にてご紹介します。
もっと読む 写真とイラストで震災後の福島で「生きる姿」を伝えるスイス人
おすすめの記事
放射性廃棄物処分 スイスで失敗した教訓を日本で生かそう
このコンテンツが公開されたのは、
「核のごみ」を安全で恒久的に処分することは、原子力生産国が何十年もの間直面してきた課題。今日で福島の原発事故から8年を迎える日本では、放射性廃棄物の地層処分場の候補地だったスイスのヴェレンベルクの実施計画で失敗した経験から得た知見が共有されている。日本における放射性廃棄物の処分場選びの第一歩として、放射性廃棄物処分に関する国民の理解を広めるのに役立っている。
もっと読む 放射性廃棄物処分 スイスで失敗した教訓を日本で生かそう
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。