スイスの視点を10言語で

スイス検察、クレディ・スイス買収巡り調査開始

Ermotti at a press conference
In the hot seat: New UBS CEO Sergio Ermotti takes his seat at a press conference in Zurich on Wednesday next to UBS Chairman Colm Kelleher (centre) and outgoing CEO Ralph Hamers © Keystone / Michael Buholzer

スイス金融最大手UBSによる同業クレディ・スイス(CS)の買収について、連邦検察庁(BA/MPC)が調査を開始した。英フィナンシャル・タイムズ(FT)が2日報じた。

検察庁は、CSの緊急買収で政府関係者、規制当局担当者、両行幹部らによる法令違反がなかったかを調べる。

同庁は「CSを巡る動きには(調査を必要とする)多くの側面があり」、「(検察の)権限対象となる可能性を含んだ犯罪を特定する」ための分析が必要だと述べた。

FTによると、シュテファン・ブレットラー連邦検事総長はすでに政府機関に対し、多くの「調査命令」を出したという。また、検察庁は国や州の政府に接触しており、買収に関わった主要関係者の聞き取り調査を行う見通し。

同庁は、買収交渉のどの側面が調査対象となるかや、調査期間は明らかにしていない。

UBSとCSはコメントを控えた。

「驚くべきこと」

刑法と犯罪学が専門のマーク・ピース・バーゼル大名誉教授は「検察がコメントを発表するのは驚くべきことだ」と言う。ただ、今回の買収劇は「あまりに常軌を逸しているため、何かを言う必要があった」とも述べた。

ピース氏によると、当局による秘密保持義務違反や内部情報に基づく取引が、調査の焦点になっている可能性がある。それに加え、CSが発行したAT1債の無価値化にも問題があるという。

スイスの金融最大手UBSは19日、経営不振に陥った同2位のCSを30億フラン(約4260億円)で買収することに合意した。スイスの金融システムの崩壊を回避するため、同国政府、スイス国立銀行(中銀、SNB)、スイス金融市場監督機構(FINMA)が買収合意を後押しした。

スイスの経済学者を対象とした世論調査では、半数近くがCSの買収は最善策ではなかったと回答し、金融業の中心地としてのスイスの評判を下げたと考えていることが分かった。

ドイツ語圏の日刊紙ターゲスアンツァイガー日曜版は2日、UBSはCSの買収手続きを終えたあと、国内外の全従業員の20~30%に上る人員削減を検討していると報じた。世界で2万5千人~3万6千人、スイス国内だけで1万1千人が対象になる可能性があるとしている。

英語からの翻訳:大野瑠衣子

おすすめの記事
Credit Suisse

おすすめの記事

クレディ・スイス買収交渉の舞台裏

このコンテンツが公開されたのは、 UBSによるクレディ・スイスの買収は、わずか3日間の交渉で決まった。長年の宿敵同士の契約を電光石火で推し進めたのは、スイスの「三位一体」だった。

もっと読む クレディ・スイス買収交渉の舞台裏

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

机に座るスーツ姿の男性

おすすめの記事

スイス、ロシアに追加制裁 輸出規制を強化

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦政府は16日、ウクライナに侵攻するロシアへの追加制裁を発表した。ロシアの産業・軍事・技術に必要な製品の輸出規制が強化されるほか、政党、NGO団体、報道機関がロシア政府からの寄付を受け取ることが禁止される。

もっと読む スイス、ロシアに追加制裁 輸出規制を強化
パン屋の陳列棚

おすすめの記事

チューリヒの一等地にパン屋開業 高級街に転機か

このコンテンツが公開されたのは、 高級ブランドが立ち並ぶチューリヒのバーンホフ通りにパン屋が開業し、大きな話題を呼んでいる。通りを象徴する百貨店の撤退や再開と合わせ、街の大きな転機になるとの指摘もある。

もっと読む チューリヒの一等地にパン屋開業 高級街に転機か
カメラ目線で微笑む女性の顔

おすすめの記事

チューリヒ映画祭、最優秀賞にルンガーノ・ニョニ監督 伊藤詩織監督作品は2部門受賞

このコンテンツが公開されたのは、 第20回チューリヒ映画祭(ZFF)が10月3日~13日開かれ、ルンガーノ・ニョニ監督のコメディ映画「On Becoming a Guinea Fowl」が最優秀作品賞を受賞した。2位には伊藤詩織さんが監督したドキュメンタリー映画「Black Box Diaries」が選ばれた。

もっと読む チューリヒ映画祭、最優秀賞にルンガーノ・ニョニ監督 伊藤詩織監督作品は2部門受賞
ETHの校舎

おすすめの記事

世界大学ランキング 連邦工科大学チューリヒ校は欧州1位

このコンテンツが公開されたのは、 英教育誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)」が9日発表した世界大学ランキング(25年度)で、スイス連邦工科大学チューリッヒ校が前回に続き11位にランクインし、欧州内では1位の評価を獲得した。

もっと読む 世界大学ランキング 連邦工科大学チューリヒ校は欧州1位
チーズのにおいをかぐ審査員ら

おすすめの記事

スイスでチーズ品評会 最優秀賞決まる

このコンテンツが公開されたのは、 スイス南部ティチーノ州ルガーノで開かれたチーズ品評会「スイスチーズ・アワード」で4日、1100品を超えるチーズの中から、最も優れた3品が選ばれた。

もっと読む スイスでチーズ品評会 最優秀賞決まる
事件現場

おすすめの記事

チューリヒ、男がナイフで園児襲撃 命に別状なし

このコンテンツが公開されたのは、 チューリヒ市北部で1日、路上を歩いていた園児の集団に男が刃物で切りつけ、子ども3人が負傷した。チューリヒ市警察は中国人留学生の男(23)を逮捕した。

もっと読む チューリヒ、男がナイフで園児襲撃 命に別状なし
氷河

おすすめの記事

氷河の融解でスイスとイタリアの国境に変化

このコンテンツが公開されたのは、 スイスはイタリアとフランスとの国境を変更した。イタリアとの国境は氷河の融解、フランスとの国境はジュネーブ地方の新しい路面電車と河川にそれぞれ関連している。

もっと読む 氷河の融解でスイスとイタリアの国境に変化
スイス中銀

おすすめの記事

スイス中央銀行、0.25%の利下げ

このコンテンツが公開されたのは、 スイス国立銀行(中銀、SNB)は26日、政策金利を0.25%引き下げ、1%にすると発表した。

もっと読む スイス中央銀行、0.25%の利下げ

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部