途上国を含む全ての国が、温暖化防止に取り組むことを定めた「パリ協定」の行方に暗雲が漂っている。同協定からの脱退を公約したドナルド・トランプ氏が米国の次期大統領に決まったのが一因だ。スイスメディアや政府関係者の間では、温暖化対策の後退は避けられないとの見方が広がっている。
このコンテンツが公開されたのは、
モロッコで開かれていた国連の気候変動枠組み条約第22回締約国会議(COP22)は19日、パリ協定の実現に向けて具体的なルールを2018年までに策定することで合意し、閉幕した。それに先立つ4日にはパリ協定が発効した。
「地球温暖化の取り組みで最も重要な人物、ドナルド・トランプ氏は現れず」。
COP22の閉幕にあわせて、スイスの有力紙NZZはこんな見出しの記事を掲載した。温室効果ガスの排出量世界2位の米国がトランプ氏の公約通り脱退すれば、パリ協定前に逆戻りしかねないと警鐘を鳴らした形だ。
トランプ氏は選挙戦中、地球温暖化を「でっち上げだ」と一蹴。パリ協定からの脱退に加えて、オバマ政権の環境・エネルギー政策の白紙撤回や、米環境保護庁(EPA)の解体を主張してきた。
NZZによると、COP22の会期中に参加国は、米国が脱退した場合の対抗措置についても議論。メキシコやカナダは、米国からの輸入品に炭素税を課すことを検討中だと報じている。
一方、日刊紙ターゲス・アンツァイガーは、温暖化問題に取り組む国際交渉に影を落としたのは、「トランプ・ショック」だけではないとも指摘。COP22では、パリ協定のルール作りをめぐり、先進国と途上国の対立が再燃した場面があったことを示唆した。
パリ協定では先進国と途上国の双方が温室効果ガスの削減で努力することが決まった。
だが、途上国側からすると、温暖化を招いた責任は先進国にあり、先進国は温室効果ガスの削減に積極的に取り組むと同時に、途上国の温暖化対策に資金や技術を提供すべきとの考えが根強い。
ドリス・ロイトハルト環境相はCOP22の会期中、途上国への資金・技術援助として500万フラン(約54億800万円)提供すると表明した。
(英語からの翻訳・あだちさとこ)
続きを読む
おすすめの記事
環境団体、異常気象で温暖化対策をスイス政府に訴え
このコンテンツが公開されたのは、
国際環境団体グリーンピースが8日、スイス政府の気候変動政策 に対する抗議活動を起こした。別の市民団体は来春、2050年までに化石燃料の使用の全面禁止を連邦政府・議会に求める「氷河イニシアチブ」の立ち上げを計画している。
もっと読む 環境団体、異常気象で温暖化対策をスイス政府に訴え
おすすめの記事
「パリ協定」温暖化対策で歴史的合意を達成、今後の課題は対策の具体化
このコンテンツが公開されたのは、
パリで開催された国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)では12日、地球温暖化を阻止するための「歴史的合意」と評される「パリ協定」が採択された。今後の最大の課題は、この野心的な目標の達成に向け対策をどう具体化するかだ。そこには大きな仕事が待ち受けているが、スイス各紙は経済にとって気候変動対策は一つのチャンスになりうるとし、むしろ楽観的な見方をしているようだ。
もっと読む 「パリ協定」温暖化対策で歴史的合意を達成、今後の課題は対策の具体化
おすすめの記事
スイスの都市、緑化でヒートアイランド対策
このコンテンツが公開されたのは、
立ち並ぶ若木の陰に設置されている公共のバーベキュー台はまだ未使用のままで、誰かが火を点けてくれるのを待ちわびているようだ。テーブルがないことを除けばヴァリス(ヴァレー)州の州都、シオンの住民がすぐにでもくつろげる状態だ…
もっと読む スイスの都市、緑化でヒートアイランド対策
おすすめの記事
原発事故後、日本のエネルギーシフトはどう進んでいるのか?
このコンテンツが公開されたのは、
「脱原発」が、今月27日の国民投票でスイス国民に問われる。だが、もともとこのイニチアチブが提案された直接の原因は、福島第一原発の事故だった。では、この事故の当事国であり、原発ゼロが1年半も続いた日本で今、エネルギーシフトはどう進んでいるのだろうか?また、節電はどこまで行われ、人々のエネルギーに対する考えはどう変わったのだろうか?「環境エネルギー政策研究所」の飯田哲也所長に電話インタビューした。
もっと読む 原発事故後、日本のエネルギーシフトはどう進んでいるのか?
おすすめの記事
エネルギー効率の向上を求め、進化するスイスの住宅
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは、家庭からの二酸化炭素(CO2)の排出量が減少している。しかも、調査された2000年から2013年の間に、人口と1人当たりの居住面積が増えたにもかかわらずだ。専門家の間でも注目を集めているこの現象の背景には、何があるのだろうか?
もっと読む エネルギー効率の向上を求め、進化するスイスの住宅
おすすめの記事
スイスの景観、地球温暖化で100年後には様変わりか
このコンテンツが公開されたのは、
スイスを代表するアルプスの美しい景観が、地球温暖化によって危機にさらされている。昨年パリで開かれた国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で、世界全体が一層の温室効果ガス削減を目指す「パリ協定」が採択されたが、この歴史的な協定でさえも状況を打破出来そうにない。
もっと読む スイスの景観、地球温暖化で100年後には様変わりか
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。