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2023年6月18日の国民投票

「脱タックスヘイブン」大差で可決、環境保護法なども全て可決 スイスの国民投票

スイスの氷河
Keystone / Urs Flueeler

スイスで18日、9カ月ぶりに国民投票が行われた。多国籍企業の最低法人税率、環境保護法、COVID-19法の3つの案件は、いずれも可決された。 

多国籍企業の最低法人税率

多国籍企業の最低法人税率の下限を一律15%にするという国際ルールに従うための憲法改正案は、賛成78.5%という圧倒的大差で可決された。すべての州で賛成が過半数を獲得した。

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2008年の金融危機後、スイス連邦政府は経済の崩壊を防ぐために莫大な財源を必要とした。そんな中、グーグルやアップル、フェイスブック、アマゾンなどの巨大IT企業を筆頭とする多国籍企業が、利益を合法的にスイスなどの「タックスヘイブン(租税回避地)」に移転し、法人税の節税や回避を行うことはもはや容認されなくなった。

経済協力開発機構(OECD)は世界規模での税の公平性確保を目指し、長い交渉活動の末、年間売上高が7億5千万ユーロ(約1070億2千万円)を超える多国籍企業には法人税率の下限を一律15%にするという国際ルールの合意にこぎつけた。

頭を抱えたのはルクセンブルク、アイルランド、スイスといった国々だ。これらの国々は税率を低く設定してきたおかげで、長きにわたり大手多国籍企業にとって魅力的な場所とされてきた。しかしOECDの決定を無視すれば報復措置を受ける可能性もあったため、一律15%の国際ルールを国内に適用せざるを得なくなった。

スイスの場合、法人税は州の管轄だ。OECDルールを適用するために憲法を改正し、15%との差分を連邦が「補完税」として徴収する。連邦議会による憲法改正案は、どんなに小さな修正であっても国民の意見を問う必要がある。

連邦政府と連邦議会及び各州は、今回の憲法改正案を強く支持していた。最低税率導入が不可避ならば、せめて税収基盤は国内にとどめるべきとの観点からだ。

唯一、反対を表明したのは大企業への課税強化に取り組んできた左派勢力の社会民主党(SP/PS)だ。ただ、同党の不満は課税そのものではなく、増収の配分比率(75%を州、25%を連邦政府に配分)にあった。同党は連邦政府への配分比率を5割に引き上げることで、全国民が増収の恩恵を受けやすくなると訴えていた。

今回の可決を受け、新たな競争が始まることに疑いは無い。経済連合エコノミースイスのモニカ・リュール会長は、スイスは企業誘致の面で激しい国際競争にさらされることになると指摘。スイス労働組合連合(SGB/USS)のチーフエコノミスト、ダニエル・ランパート氏は、余分な税収の一部が「普通の人々」に届くことを依然として期待していると話した。

唯一反対を表明していた社会民主党(SP/PS)のファビアン・モリーナ国民議会(下院)議員は、ここまでの圧倒的大差による可決は予想していなかったが、同党の「明確な敗北」だと述べた。

連邦財務省は、改革による増収効果は10億〜25億フラン(約1450億7千万〜3622億8千万円)との概算を公表している。

同憲法改正案の詳細は:

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環境保護法 

2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指す環境保護法は賛成59.1%で可決された。中央及び東スイスの一部の州では反対票が上回ったが、その他の州では賛成票が過半数を超えた。

スイスは、2050年までに温室効果ガス( CO₂)排出量の実質ゼロを目指す。そのためスイス議会は2022年9月、気候対策に関する新しい法案「気候保護目標・イノベーション・エネルギー安全保障の強化に関する連邦法(KIG/LCI)」を可決した。

同法案は「氷河イニシアチブ(国民発議)」への対案として起草された。2021年6月の国民投票で改正CO₂法否決の原因となった新税案は含まれていない。

氷河イニシアチブはスイス気候保護連盟が発議した。2050年までにCO₂排出量ゼロを達成し、それ以降は化石燃料の使用を完全に禁止するといった内容だった。 しかし連邦政府と議会の過半数が、化石燃料の使用禁止は行き過ぎだとして反対。政府は同イニシアチブの骨組みは変えずに、化石燃料「禁止」を明記しない対案を練った。代わりに、10年間の気候対策予算として20億フラン(約2900億円)を積むことを盛り込んだ。ガス・石油暖房の気候配慮型への買い替えを促す家庭向け補助金や、企業の技術開発に対する奨励金に充てられる。

連邦議会は直接的対案ではなく、間接的対案という形式を選んだ。憲法改正を伴わない法律レベルの改正になるため、国民投票で可決されると迅速に施行できる。気候保護連盟は議会の決定に満足し、イニシアチブを取り下げ、間接的対案を支持すると表明した。

この対案は、左派から右派まで幅広い支持を得る妥協案とみなされていた。しかし、議会第1党の右派・国民党(SVP/UDC)がこれに反対。議会の可決した法律の施行に反対するレファレンダム(国民表決)を立ち上げ、必要数(5万筆)の2倍を超える有権者の署名を集めた。

国民党は環境保護法を、経済と国民に有害な「電力無駄食い法」と批判していた。2050年までに気候中立を達成するには化石燃料の使用を禁止しなければならず、結果的に電力の需要が増えると試算。ただでさえエネルギー価格が高騰する今、こうした負担を増やすことに猛反対していた。

可決後の賛成派・反対派インタビュー動画:

同法案の詳細は:

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COVID-19法

Covid-19法を2024年6月まで延長するCovid-19法改正案は賛成61.9%で可決された。

ほとんどのスイス人にとって、新型コロナウイルス感染症は過去の遺物になりつつある。そんな中、政府が通常の議会審議を経ずに決定を下す際の法的根拠となる「COVID-19法」を巡り、市民団体によるレファレンダムが提起された。スイスでCOVID-19法に関する国民投票が実施されるのは2021年6月、2021年11月に続き3回目。特にワクチン接種、陰性、治癒の「COVID証明書」とアプリ「SwissCovid」のトラッキングシステムについて法的根拠の是非が有権者に問われた。

Covid-19法は、コロナ対策を再導入するための法的根拠となる。同法を延長すれば新たなパンデミックが起きた時に、連邦内閣は的確で素早い対応を取ることが可能だ。そうすることで重症化リスクの高い人を守り、医療機関の機能を維持することができる。同改正案には「COVID証明書」や追跡アプリのトラッキングシステムの再導入、国境が閉鎖された場合の外国人や越境労働者への特別措置、重症化リスクの高い人を守るための規制も含まれる。さらにコロナ重症患者の治療薬で、スイスでは未承認のものでも必要に応じた輸入、使用が可能となる。

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10言語で意見交換
担当: Isabelle Bannerman

同じ問題について国レベルの国民投票が何回も行われることについてどう思いますか?

皆さんは、一般市民が既存の法律に異議を唱えたり、憲法の改正を提案したりできるスイスの政治システムについてどう思われますか?

26 件のコメント
議論を表示する

賛成派のロレンツ・ヘス下院議員(中央党)は、スイス通信に対し「COVID-19法のおかげで、緊急時には公衆衛生や弱い立場の人たちを守るための迅速な措置を講じることができる」と可決の喜びを語った。

一方、ジャン・リュック・アドール下院議員(国民党)は仏語圏スイス公共放送(RTS)のラジオ番組で、今回の可決によって「COVID証明書や追跡アプリなど、差別的なツールを復活させることができるようになってしまった」と非難した。

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投票率は42.4~42.5%(提案ごと)だった。

仏語からの翻訳:大野瑠衣子 

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