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「パラダイス文書」で浮上したスイスの大物たち

バミューダ諸島の船着場から望む夕陽
大手法律事務所・アップルビーの本社がある英領バミューダ諸島の港に夕陽が沈む。同社はタックスヘイブン(租税回避地)にペーパーカンパニーを設立する企業を支援する Keystone

タックスヘイブン(租税回避地)をめぐる膨大な量の投資関連データがリークされた。いわゆる「パラダイス文書」の関係者にはスイスの政治家や企業経営者、企業も含まれている。これまでのところ、違法行為を証拠づけるものは何もない。

 スイス当局が最も強い関心を持っている人物の一人に、2011年に有罪判決を受けたアンゴラ系スイス人のジャン・クロード・バストス氏がいる。対アフリカ投資に強みを持つ国際投資会社「クアンタム・グローバル・グループ外部リンク」の創設者で最高経営責任者(CEO)だ。


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 パラダイス文書によれば、バストス氏と取引があったスイス人のなかには、元閣僚やスイス連邦鉄道(スイス国鉄、SBB)を含むさまざまな企業のトップの名が挙がっている。

 11月6日、ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーの一面記事の見出しは「あるスイス人がアンゴラの億万長者から儲けた方法とは外部リンク」だった。ターゲス・アンツァイガーは、5日にパラダイス文書を発表外部リンクした国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)のメンバーだ。スイスの報道機関では、ドイツ語圏の日曜紙ゾンタークス・ツァイトゥング外部リンクとフランス語圏の日曜紙ル・マタン・ディマンシュ外部リンクも加盟している。

 バストス氏は11年、クアンタムの本社があるツーク州で企業の「度重なる違法経営」があったとして有罪判決を受けた。それでもなお同氏がスイス政財界の著名人を惹きつける企業ネットワークの中心に君臨していることが明らかになった。

 ターゲス・アンツァイガー紙は、SBB取締役会長のモニカ・リバー氏が15年5月に英領バージン諸島にあるバストス氏の会社「カポインベスト・リミテッド」の取締役会に加わった経緯を報じた(当時、リバー氏はSBB取締役副会長)。報道によると、リバー氏には顧問として10万ドル(約1060万円)の年俸が支払われていたが、16年6月の取締役会長就任を前にリバー氏は顧問を辞めた。

 ターゲス・アンツァイガー紙によれば、バストス氏の取引相手には、99年から03年まで法務相を務めたルート・メツラー氏や、連邦外務省開発協力局(DEZA/DDC)前局長のヴァルター・フスト氏もいる。

 先週のドイツ語圏の週刊経済紙ハンデルス・ツァイトゥングに、バストス氏の関係者の中には、スイスの大手銀行UBS前CEOのマルセル・ローナー氏、スイス有数の旅行会社クオニ前社長アルミン・マイアー氏、ダボス会議で知られる世界経済フォーラム(WEF)前社長のアンドレ・シュナイダー氏がいるとの記事が掲載された。

スイスのグローバル企業グレンコア

このたび明らかになった大量のファイルのほとんどは、英領バミューダ諸島に拠点を置くアップルビー外部リンクから流出した銀行取引明細書やメール、融資契約書だ。アップルビーは、タックスヘイブンでのペーパーカンパニーの設立支援などを手がける大手法律事務所だ。アップルビーはICIJに対し、同事務所が違法行為をしたという「証拠は何もない」と語った。

 その他のデータは、シンガポールに拠点を置く家族経営の法人設立サービス会社「アジアシティ外部リンク」から流出したものと、19の国や地域の法人登記書類だ。


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 鉱山開発や天然資源の取引を手がけるスイス企業グレンコア外部リンクもアップルビーの顧客の一つであることが明らかになった。ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)によれば外部リンク、ICIJがもつ1340万件の文書のうち、3万件余りがグレンコアに関するものだ。

 英ガーディアン紙は外部リンク、パラダイス文書を引用して、グレンコアはコンゴ民主共和国における採掘権を確保する見返りとして、イスラエルの事業家ダン・ガートラー氏に対し「数千万ドルを秘密裏に融資」していた、と報じた。

 ICIJ加盟のガーディアンの取材に対し、ガートラー氏は違法行為を否定した。

 グレンコアは5日、10月27日付けICIJ宛ての声明をロイター通信に送った。その声明で、グレンコアは09年、ガートラー氏が所有する関連会社に商業的融資を行い、また、そのすべての返済を受けたと述べた。ロイター通信はガートラー氏に接触できていない。

パナマ文書

 5日のリークは、タックスヘイブンの口座開設サービスを行っていたパナマの法律事務所から流出した記録が公表された昨年のケースと同じような経緯をたどっている。パナマ文書のリークが引き金となって、複数の国で捜査が行われ、アイスランドの首相が辞任し、パキスタンの首相が罷免された。

 タックスヘイブンに口座を開設することは合法だが、その規制が緩く、情報の匿名性が高い国や地域では、マネーロンダリング(資金洗浄)や脱税、監査逃れが容易になる。超富裕層とそれ以外の層との間に広がる経済格差を批判する人々は、パナマ文書で明らかになったタックスヘイブンの利用こそが危機を招く原因に他ならないと訴え、関係各国の政府は厳重に取り締まることを約束した。


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(英語からの翻訳・江藤真理)

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