直接民主制の専門家でジャーナリストのブルーノ・カウフマン氏が、日本のインターネットメディアのインタビューで、世界の民主主義の現状や日本の憲法改正を巡る展望について語った。
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マルチメディア・ジャーナリスト。2017年にswissinfo.ch入社。以前は日本の地方紙に10年間勤務し、記者として警察、後に政治を担当。趣味はテニスとバレーボール。
インタビューは今年3月、ネットメディア「IWJ(インディペンデント・ウェブ・ジャーナル)外部リンク」の東京都内の事務所で行われた。IWJを運営するジャーナリスト岩上安身氏が、「直接民主制のワールドツアー」で来日したカウフマン氏に日本の民主主義の問題点などを聞いた。
カウフマン氏はスイスの直接民主制について「初めから存在していたのではなく、国民が戦って勝ち取り、150年間の年月をかけて発展させてきたもの」と歴史を説明。スイスでは、一定の署名を集めれば国民がイニシアチブ(国民発議)を提起し憲法改正案を出したり、レファレンダムを起こして連邦議会で承認された法律の是非を国民投票にかけたりすることが出来る。カウフマン氏は「国民が『この政策決定に関わりたい』と思ったときに行動を起こせる。このシステムが間接民主制をより良くし、一つの機関による政策決定の独占を防ぐ」と利点を語った。
>>スイスのイニシアチブとは?
>>スイスのレファレンダムって何?
>>国民投票が可決された後はどうなる?
今年、直接民主制のワールドツアーで世界各国を回ったカウフマン氏は、最近、民主主義が発展している台湾や韓国の現状を紹介。この2カ国と日本は一定の共通項があるといい、「韓国と台湾は対話や議論を尽くして国内の対立を解消し、成功例となった。これは日本にとって良い教訓になりえる」と話した。
インタビューでは安倍晋三首相が目指す憲法改正の問題点などについても議論が交わされた。
インタビューは約1時間50分。以下のリンクから視聴可能(全編視聴は会員登録が必要)。
>>IWJのウェブサイト外部リンク
ブルーノ・カウフマン(Bruno Kaufmann)
スイスとスウェーデンの国籍を持つ作家、ジャーナリスト。世界の民主主義のプラットフォームPeople2Power外部リンクの編集長。自身が主催する国際会議「現代直接民主制のグローバルフォーラム外部リンク」は今年9月、イタリア・ローマで開かれる。スイスインフォでは直接民主制の特別顧問を務める。
今年は民主主義の現状を探索する世界ツアーで4大陸20カ国を訪問。日本では広島県や福島県などを回った。スイスインフォはカウフマン氏の現地レポートを非定期で配信した。
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