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ノバルティス子会社サンドが分離上場 医薬品不足に対処できるか

薬が並んだ白い棚
収益を生まないジェネリック医薬品の製造を中止するジェネリックメーカーが増え、特定の必須医薬品を供給する企業は限られてきている © Keystone / Gaetan Bally

スイスの製薬大手ノバルティスのジェネリック(後発医薬品)部門のサンド(Sandoz)が分離上場し、世界最大級の後発薬メーカーとなった。薬価の引き下げと医薬品不足への対応をどう両立するか、ジェネリック業界は難しい課題に直面している。

サンドは4日、スイス証券取引所で株式を上場し、世界最大の独立したジェネリックメーカーの一つとなった。

サンドのギルバート・ゴースティン取締役はプレスリリース外部リンクで、「今日、サンドは独立した企業として新たな時代の幕開けを迎えた。しかし、我々の目的は変わらない。患者の(医薬品への)アクセスをさらに広げていくことだ」と述べた。

サンドの分離上場は、ノバルティスの収益力にプラスになるとみられている。これにより、ノバルティスは革新的医薬品事業に焦点を絞ることができるからだ。がんなどの疾患分野における医薬特許発明や遺伝子治療は治療効果を飛躍的に高め、製薬企業の大きな収益源になる可能性がある。

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だが昨今、ジェネリックメーカーに対しては風当たりが強い。各国政府からは薬価(公定価格)を引き下げ手頃な価格の製品を提供するよう圧力がかかり、アジア勢を中心に競合が急成長している。サンドはその激戦地に飛び込んだ格好だ。

サンドは上場するまで、ノバルティスという巨大製薬会社の一部門として財政的に支えられてきた。2022年のサンドの売上高は92億ドル(約1兆3千億円)。それに対し、ノバルティスの革新的医薬品部門の売上高は413億ドルだった。

サンドは今後、独立した企業として安価な医薬品を大衆に提供することは採算が合うと証明する必要がある。同社は調整後の売上高コア営業利益率を今年(予想)の18〜19%から2028年までに24〜26%に引き上げることを目標としている。

「遺伝学の世界は厳しい。サンド社にとって挑戦となる」。英製薬コンサルティング会社IDEAファーマのマイク・レア最高経営責任者(CEO)はそう話す。「世界がジェネリックを受容しているのは間違いない。しかし、その世界での競争はとても厳しい」

消える医薬品メーカー

先発医薬品(新薬)やバイオテクノロジー(遺伝子組換え技術や細胞培養技術)を用いて製造されたバイオ医薬品の特許が切れると、化学合成で作るジェネリック医薬品や生物学を利用したバイオ後続品(バイオシミラー)のメーカーが市場に参入し、これらの医薬品を低コストで開発できるようになる。

スイスのジェネリック医薬品の平均価格は他の欧州諸国よりも高い。だがそれでも、一部の古い治療薬の価格は過去10年間で大幅に下がった。例えば1960年代に発売され、現在も最も広く使われている鎮痛剤の一つである「イブプロフェン」のジェネリック品の場合、600ミリグラム配合の錠剤(1箱100個入り)の工場出荷価格(メーカーに支払われる価格)は2003年には1錠当たり0.33フランだったのが、20年の間に4回の価格改定を経て0.09フランにまで下がった。

いくつかの国ではジェネリック医薬品の価格が規制されており、スイスもそうした国の一つだ。企業はインフレやエネルギーコストの上昇に直面しても、簡単に価格を調整することができない。

そのため価格引き下げ圧力を受けた一部の企業は製品を完全に中止し、よりコストの低い地域への生産委託を増やしている。米国でも欧州でも、大半のジェネリック医薬品の製造元は1~2社しかない。欧州ジェネリック医薬品協会(Medicines for Europe)の調査によると、欧州17カ国平均で26%のジェネリック医薬品が過去10年間で姿を消した。

ジェネリック大手のTeva Pharmaceuticals(イスラエル)は5月、古いジェネリック品の生産を削減すると発表した。同社のCEOは、事業ポートフォリオの「希薄な、あるいは赤字の」分野を切り捨て、収益を生む製品に置き換えると述べた。

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医薬品不足

こうした変化は、多くの市場で深刻な医薬品不足を招いている。連邦経済省国家援護局(BWL/OFAE)が3月初旬にまとめた報告書では、配送遅延、入荷の見通しが立たない欠品、または市場から完全に撤退してしまった状態にある必須医薬品は約140品目に上った。これは2017年には48品目だった。

米国政府は9月12日、製造とサプライチェーンの問題により、抗がん剤15品目が供給不足に陥っていると報告した。このうち「シスプラチン」「カルボプラチン」「メトトレキサート」の3つは広く使用されているジェネリック品で、数十年にわたりがん治療の定番となっている。

「底辺への競争が必ずしも良いとは限らない」。医薬品アクセスの専門家で、オランダにPharmaceutical Accountability Foundationを設立したウィルバート・バネンバーグ氏は言う。「私たちは、価格が高すぎるという理由だけで新薬へのアクセスに問題を抱えているわけではない。それを製造したいと思う企業が少なくなり、医薬品の数が減少傾向にあるのだ」

収益事業に注力

企業は不採算部門を売却するだけでなく、利益率の高い専門分野や医薬品への投資を増やしている。

バイオ医薬品の多くが特許切れとなる中、サンドは現在売上の2割を占めるバイオシミラーにもっぱら注力している。バイオシミラーは開発が複雑でコストがかかるため、ジェネリックよりも価格が高くなる。同社は今後1年半の間に、少なくとも5品目のバイオシミラーの発売を目指す。開発中の医薬品は25品目にのぼる。

米ジェネリックメーカーViatrisは2日、利益率が悪化した一般用医薬品、女性用医薬品、原薬事業を売却し、アイケア事業に注力する計画を発表した。

こうした動きに対し、収益のみを重視して決断が下されるばかりでは患者にとって悲惨な結果を招きかねない、との懸念も出ている。

オランダの非営利団体(NPO)医薬品アクセス財団(Access to Medicine Foundation)で運営と調査を担うマライン・フェルホーフ氏は、「ジェネリックとバイオシミラー企業は今でも、世界中で使用されている医薬品の8~9割を製造している」と話す。「もし企業がより収益性の高い製品にのみ注力するような状況になれば、抗生物質や抗真菌薬だけでなく、がん治療薬も含め、医療の根幹を失うことになる――企業だけでなく調達組織に対してもこう強調し続けることが重要だ」

両立する手段は?

サンドのCEOであるリチャード・セイナー氏は、医薬品のアクセス低下への懸念を一蹴する。独語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーの取材に対し、医薬品へのアクセス向上は投資家にとって矛盾するものではないと語った。「より多くの患者がアクセスできるようになればなるほど、最終的にはより多くの収益を得ることができる」

しかし、アクセス向上への具体的な手段については、国と業界の間で意見が対立している。スイス国内におけるジェネリックとバイオシミラーの市場シェアは約25%と、欧州の約70%、アメリカの約90%を大きく下回る。スイス連邦政府は9月、ジェネリックとバイオシミラーの値下げなど利用促進策を打ち出した。

一方、欧州のジェネリック業界は、価格重視ではなく競合品の数やコストの上昇を考慮した新たな価格設定モデルへの移行を提唱する。

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英語からの翻訳:大野瑠衣子


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