スイスで29日、ビジネスにおける倫理観の向上を求める2つのイニシアチブ(国民発議)の是非を問う国民投票が実施された。両案とも否決された。
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540万人のスイスの有権者は、企業や投資家がより高い倫理基準に準拠するよう求める2つの左派提案のイニシアチブを否決した。11月上旬に世論調査機関gfs.bernが実施した調査では、両案の賛否が拮抗していた。「責任ある企業イニシアチブ」の支持率は57%、「軍需産業への融資禁止イニシアチブ」は50%だったが、両案の支持率は低下傾向にあった。
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投票数は賛成過半数でも否決
「責任ある企業イニシアチブ」は、超僅差で否決。投票者の50.7%が賛成に票を投じたが、3分の2の州がイニシアチブに反対したため、否決された。案件を可決するには、投票数と州の両方の賛成過半数が必要だからだ。
このようなケースは稀で、過去の国民投票では1度だけ。1955年に借家人と消費者保護に関する投票で、50.2%の支持を得たが、3分の2以上の州が反対し否決されて以来だ。
▼投票結果
同イニシアチブは、スイスに本・支社や事業所を置く企業が、国際的に認められた人権と環境基準を国外で尊重することを憲法で保障するよう求めていた。そして、人権侵害や環境破壊の被害者が、責任を負う企業に対して裁判で権利侵害を訴えることができる内容だった。しかし、スイス連邦政府と連邦議会は、経済に大きな打撃を与えるとして同イニシアチブを否決するよう勧告し、間接的対案を支持するよう国民に促していた。
投票が否決されたことで、政府と議会がイニシアチブの意を汲んで提出した間接的法案が自動的に成立し、憲法ではなく法律を法改正する。
改正案外部リンクは、スイスの多国籍企業は人権や環境、汚職といった問題に関して報告書を提出するよう求める。また、企業が紛争地帯や児童労働が問題となっている地域で原材料を調達する場合には、デューデリジェンスが義務付けられ、人権や環境へのリスクに対策を講じなければならない。
だが、イニシアチブと異なり、改正案の対象となる企業は限定的。社員500人、連続する2会計年度の間に年間売上高4千万フラン(約46億円)あるいは資産総額2千万フランの下限を超える企業のみ。そして、企業が責任を負うのは、法律で定められている子会社が行う活動、および身体、生命、財産に対する損害に限られる。
ビジネスが人権に与える影響への関心は国際的に高まりつつあり、2011年、国連はビジネスと人権に関する指導原則外部リンクを策定。欧州では半数以上の国がビジネスと人権に関する国別行動計画(NAP)を策定している。また、世界各地で人権と環境を尊重するよう法的ルールの構築が促され、法的枠組みとしては、欧州連合(EU)では2017年に「紛争地域産の鉱物に関する注意義務の遂行に関する規則」が成立。隣国フランスは同年に「企業注意義務法」を、オランダは昨年、「児童労働デューデリジェンス法」を制定している。
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軍需企業への融資禁止に反対多数
「軍需企業への融資禁止イニシアチブ」は、スイス連邦憲法により厳しい規制を追記するよう求めたが、投票者の57.5%が反対し否決された。
可決されれば、スイス国立銀行(中央銀行)やスイスの財団、年金基金は、軍需品製造が年間売上高の5%以上を占める企業に投融資できなくなるという内容だった。
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11月29日に行われる国民投票では、2件の提案の是非が問われる。「責任ある企業イニシアチブ」は、スイスに拠点を置く多国籍企業が国外で人権侵害や環境破壊を犯した場合に法的責任を負わせるよう求める。「軍需企業への融資禁止イニシアチブ」では、国立銀行や年金基金による軍需産業への投資を禁じる。
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障がい者にも参政権
ジュネーブ州で行われた住民投票では、州憲法を改定し、精神や心理に疾患がある成年被後見人に参政権を広げるかが問われた。賛成74.8%、反対25.2%で、可決した。投票率は45.6%だった。
2008年に発効した国連の障害者権利条約外部リンクは、加盟国に障がい者にも政治的・社会的生活への参加を保障するよう義務付けている。スイスは2014年、同条約を批准したが、連邦憲法および州憲法では被後見人の参政権は未だに剥奪されている。これまでジュネーブでは、州裁判所の判決で認められた場合にのみ、被後見人にも参政権が与えられていた。
今回の可決を受け、ジュネーブ州憲法ですべての障がい者の政治的権利が保障される。しかし、適用されるのは基礎自治体と州レベルのみで、国レベルでは依然として適用外になる。
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