「その芸術性に惹かれて」7歳の時から始めたスケート。「スケートのことを考えなかった日は1日もない」とステファン・ランビエルは話す。「ここは私が最初の一歩を踏みだし、成長した場所だ」と話すスケート場で、子供の頃の思い出や引退を決心するまでの選手としての人生を、懐かしみながら振り返る。
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横浜市出身。1999年からスイス在住。ジュネーブの大学院で国際関係論の修士号を取得。2001年から2016年まで、国連欧州本部にある朝日新聞ジュネーブ支局で、国際機関やスイスのニュースを担当。2016年からswissinfo.chの日本語編集部編集長。
スケートを始めたのは7歳のとき。マイケル・ジャクソンの音楽、踊り、個性が大好きで憧れ、家では何時間も踊りを真似ては、「マイケル・ジャクソンのことしか頭にない」頃だった。その頃、母親は何かスポーツをさせたいと考えていた。テレビでスケート・ショーを見てその音楽、衣装、振り付けの感性に惹かれ、アイスショー『オペラ座の怪人』に大感動したのがきっかけで、「エレガントなスポーツをやりたい」と思ったランビエルは、「その芸術性に惹かれて」姉が習っていたスケートを選んだ。アイスホッケーのような団体スポーツ競技には興味が持てなかったという。「後に、ダンスをやりたくなったが母が反対し、スケートを続けることになった。でも、ダンスが大好き」とも語る。
スケートの練習は、学校が終わった後に地元スイス・ヴァレー州のヴィラール・スケート場で行い、週末はジュネーブへ行きホームステイをしながら泊りがけで練習に取り組んだ。ポルトガル人の母親は、地元のスケート場で練習する時、入り口そばにあるカフェからランビエルが滑る様子をうかがい、いつも見守ってくれた。7歳の時に自分の楽しみのために始めたスケートだったが、厳しい規律に沿った練習が始まった10歳頃から意欲が薄れることもあった。だが両親が励まし、後押ししてくれたおかげでスケートを続けることができ、14歳、15歳の時に「スケートが、自分のやりたいことだと確信した」という。
ランビエルにとって約10年に渡る競技生活は、「人生で素晴らしい時で、とても楽しい時」だったと振り返る。だが、左内転筋を負傷して最初の引退を決意するまでの間は、「ケガが原因で目標を定めて練習することができず、本当に辛い時期だった」と、当時の心境を語る。
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「競技生活は人生で最高の時期だったが、引退を後悔してはいない」。現在は、「人生の新しい章へ移った」と言う。「氷上で別の形で自分を表現するため」プロのスケーターとしてショーを自分で演出する人生も愉しんでいる。
また、自身が創設したスイスのスケート学校で、今は自分が教えるという立場に立ち、「自分の経験と知識を共有することを嬉しく感じている」と言う。今シーズンは初めて世界選手のコーチを務め、平昌オリンピック出場を目指すデニス・ヴァシリエフス選手(ラトビア)を指導している。
*次回は、コーチとして活動しているステファン・ランビエルの新しいプロ生活の様子をご紹介します。記事はこちら外部リンクへ
ステファン・ランビエル(Stéphane Lambiel)
1985年4月2日、スイスのヴァレー州マルティニに生まれる。
7歳からスケートを始める。
2005年、世界フィギュアスケート選手権で1位。
2006年2月、トリノ冬季オリンピックで銀メダル。3月、カルガリーでの世界フィギュアスケート選手権で1位。2007年、世界フィギュアスケート選手権で3位。
2008年、ザグレブでのヨーロッパ選手権で2位。
2008年10月、左内転筋の負傷のため、競技生活に終止符を打つと宣言。
2009年1月、プロ宣言後初めて「アート・オン・アイス」に出演。
2010年1月、バンクーバーオリンピックを目指し再び競技生活に戻った後、エストニアでのヨーロッパ選手権で2位。2月、バンクーバーオリンピックでは、4位。3月、再び引退を表明。
2014年、ヴァレー州シャンペリにスイス・スケート学校を創設。
2016年8月からデニス・ヴァシリエフスのコーチを務める。
現在、さまざまなショーに出演しながら、振り付けなど新しいチャレンジをしている。技術面もさることながら、アーティスティックな表現は評価が高く「リンク上のプリンス」と呼ばれている。
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「人生の新しい章へ移った」と笑顔で話し、今の新しいスケート人生は「大きな喜び」と言うステファン・ランビエール(32)。現在、フィギュアスケートのコーチとして活動することは「情熱に近いもの」であり、「自分の多くを捧げなければならない」と語る。スイスの地元でスケート学校を立ち上げ、教える立場になったランビエールは、動きで情感を表現する感性豊かで繊細なスケーターをどのように指導しているのか?また、現在の関心事や日本とのつながりについても聞いてみた。
2010年に選手生活を終え、プロスケーターに転向してからは、「氷上で別の形で自分を表現するため」現在はショーに出演しながらスケートを楽しむ。その一方で今、コーチとして教えるという仕事にも専念している。それは、「全力で取り組まなければならないもので、自分にとっては情熱に近いものだ」と感じているという。
「コーチとしても大きな喜びを感じる」ランビエールは、スイスで昨年夏からラトビアのデニス・ヴァシリエフス選手(17)を指導しており、現在9カ月目。今シーズンは初めて、世界選手権でコーチを務めた。ヴァシリエフス選手は、ラトビアのスポーツ選手のための優遇教育制度を利用して勉強を続け、週に20時間ランビエールの指導を受けている。「氷上でお互いが自分を出し尽くすことで、お互いのエネルギーを感じるような指導を目指している。2人の間で何か言葉では言い表せない、素晴らしいものを築きあげられている」という。
また、最近は興味や関心も広がり「新しいものを追求することが多くなり」、音楽、料理、映画、ダンスなど「最新の流行に耳を傾け、目を光らせている」という。例えば、最近チューリヒの歌劇場で行われた、クラシックバレエ振付家アレクセイ・ラトマンスキーの「白鳥の湖」には感激したと話す。「私の憧れのラトマンスキーの振付作品は、衣装も目を見張るものがある。そういった流行のデザイン、素材、色にも興味がある。美を体現するものに幅広く興味がある」と語る。
今月末には、ファンタジーオンアイスに出演するため日本へ行くが、「日本に行くと、友情を家族の絆のように感じる。そういった日本が大好きだ」とも言う。また、ランビエールは伊藤みどりの大ファンで、「彼女が現在でもスケートを続けていることには感銘。彼女のコーチだった山田満知子コーチにはただ感服している」とも話す。山田のアシスタントコーチである樋口美穂子コーチが指導する宇野昌磨は、「10年ほど前、ドリームオンアイスでジュニア・スケーターとして小さな昌磨が出演したのを今でも覚えている。本当に素晴らしい選手だ」と高く評価する。
「日本には、優れた実力のあるフィギュア界のヒーローがたくさんいる。今年の夏には、織田信成、宮原知子、宇野昌磨を始めとするそういったスケーターの振付けをする機会があるが、それを今から楽しみにしている」とほほ笑みを浮かべて話す。
ステファン・ランビエール(Stéphane Lambiel)
1985年4月2日、スイスのヴァレー州マルティニに生まれる。
7歳からスケートを始める。
2005年、世界フィギュアスケート選手権で1位。
2006年2月、トリノ冬季オリンピックで銀メダル。3月、カルガリーでの世界フィギュアスケート選手権で1位。2007年、世界フィギュアスケート選手権で3位。
2008年、ザグレブでのヨーロッパ選手権で2位。
2008年10月、左内転筋の負傷のため、競技生活に終止符を打つと宣言。
2009年1月、プロ宣言後初めて「アート・オン・アイス」に出演。
2010年1月、バンクーバーオリンピックを目指し再び競技生活に戻った後、エストニアでのヨーロッパ選手権で2位。2月、バンクーバーオリンピックでは、4位。3月、再び引退を表明。
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