フィギュアスケート男子で2006年トリノオリンピック銀メダリストのステファン・ランビエル(32)が、自分の出発点となったヴィラールのスケート場でインタビューに応じ、現役引退した浅田真央(26)について、「キャリアの長さや練習や美に対する彼女の規律は、みんなが見習うべき一例」と感情を込めて語った。
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横浜市出身。1999年からスイス在住。ジュネーブの大学院で国際関係論の修士号を取得。2001年から2016年まで、国連欧州本部にある朝日新聞ジュネーブ支局で、国際機関やスイスのニュースを担当。2016年からswissinfo.chの日本語編集部編集長。
ランビエルは、今月10日に引退を表明した浅田真央を、「常に安定していて、集中力があって情熱がみなぎり、規律正しくとても美しいスケーター。信じられないほどの技術と力強さがあった」と振り返り、小さな頃からの輝かしい実績やトリプルアクセルを称賛した。
昨年7月、浅田真央が出演するアイスショー「ザ・アイス」のリハーサルを見たとき、浅田真央がステップや動きの多いバッハの曲に合わせて練習する姿は印象的で、「とても音楽に敏感で、細かい動きを何度も何度も繰り返し練習して、すべての動きがコントロールできるようになるまで集中し、すごいエネルギーを見た」と語る。「真央はお手本のような人」で、「今日のフィギュア界において、彼女ほど精神的に強くて能力があって、選手としてのキャリアを長く続けられる人はなかなかいない」とも言う。
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ステファン・ランビエルに聞く 浅田真央選手との思い出
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スイス・ヴァレー州出身のステファン・ランビエルが、子供の頃に練習の拠点とした思い出深い地元のスケート場で、現役引退したフィギュアスケート浅田真央選手について語る。 記事はこちらへ
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ランビエルは昨年4月、自身が主催するスイスのアイスショー「アイスレジェンド」に浅田真央を招待し、浅田真央は情感溢れる「蝶々夫人」を披露した。今年は、ショーの開催を5月に予定していたが、平昌オリンピック準備により出演者が集まらないことやスポンサーが足りずに開催を断念した。ただ、来年末に開催する際は、浅田真央をはじめ、髙橋大輔、荒川静香、羽生結弦、宇野昌磨といった日本フィギュア界のスターをぜひスイスに呼んで「夢のようなキャスティングをしたい」と微笑んで話す。
*次回は、ステファン・ランビエルが語る自身のスケート人生に関してご紹介します。記事はこちらへ
ステファン・ランビエル(Stéphane Lambiel)
1985年4月2日、スイスのヴァレー州マルティニに生まれる。
7歳からスケートを始める。
2005年、世界フィギュアスケート選手権で1位。
2006年2月、トリノ冬季オリンピックで銀メダル。3月、カルガリーでの世界フィギュアスケート選手権で1位。2007年、世界フィギュアスケート選手権で3位。
2008年、ザグレブでのヨーロッパ選手権で2位。
2008年10月、左内転筋の負傷のため、競技生活に終止符を打つと宣言。
2009年1月、プロ宣言後初めて「アート・オン・アイス」に出演。
2010年1月、バンクーバーオリンピックを目指し再び競技生活に戻った後、エストニアでのヨーロッパ選手権で2位。2月、バンクーバーオリンピックでは、4位。3月、再び引退を表明。
2014年、ヴァレー州シャンペリにスイス・スケート学校を創設。
2016年8月からデニス・ヴァシリエフスのコーチを務める。
現在、さまざまなショーに出演しながら、振り付けなど新しいチャレンジをしている。技術面もさることながら、アーティスティックな表現は評価が高く「リンク上のプリンス」と呼ばれている。
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ステファン・ランビエル、フィギュアスケートのコーチとは「情熱に近いもの」
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「人生の新しい章へ移った」と笑顔で話し、今の新しいスケート人生は「大きな喜び」と言うステファン・ランビエール(32)。現在、フィギュアスケートのコーチとして活動することは「情熱に近いもの」であり、「自分の多くを捧げなければならない」と語る。スイスの地元でスケート学校を立ち上げ、教える立場になったランビエールは、動きで情感を表現する感性豊かで繊細なスケーターをどのように指導しているのか?また、現在の関心事や日本とのつながりについても聞いてみた。
2010年に選手生活を終え、プロスケーターに転向してからは、「氷上で別の形で自分を表現するため」現在はショーに出演しながらスケートを楽しむ。その一方で今、コーチとして教えるという仕事にも専念している。それは、「全力で取り組まなければならないもので、自分にとっては情熱に近いものだ」と感じているという。
「コーチとしても大きな喜びを感じる」ランビエールは、スイスで昨年夏からラトビアのデニス・ヴァシリエフス選手(17)を指導しており、現在9カ月目。今シーズンは初めて、世界選手権でコーチを務めた。ヴァシリエフス選手は、ラトビアのスポーツ選手のための優遇教育制度を利用して勉強を続け、週に20時間ランビエールの指導を受けている。「氷上でお互いが自分を出し尽くすことで、お互いのエネルギーを感じるような指導を目指している。2人の間で何か言葉では言い表せない、素晴らしいものを築きあげられている」という。
また、最近は興味や関心も広がり「新しいものを追求することが多くなり」、音楽、料理、映画、ダンスなど「最新の流行に耳を傾け、目を光らせている」という。例えば、最近チューリヒの歌劇場で行われた、クラシックバレエ振付家アレクセイ・ラトマンスキーの「白鳥の湖」には感激したと話す。「私の憧れのラトマンスキーの振付作品は、衣装も目を見張るものがある。そういった流行のデザイン、素材、色にも興味がある。美を体現するものに幅広く興味がある」と語る。
今月末には、ファンタジーオンアイスに出演するため日本へ行くが、「日本に行くと、友情を家族の絆のように感じる。そういった日本が大好きだ」とも言う。また、ランビエールは伊藤みどりの大ファンで、「彼女が現在でもスケートを続けていることには感銘。彼女のコーチだった山田満知子コーチにはただ感服している」とも話す。山田のアシスタントコーチである樋口美穂子コーチが指導する宇野昌磨は、「10年ほど前、ドリームオンアイスでジュニア・スケーターとして小さな昌磨が出演したのを今でも覚えている。本当に素晴らしい選手だ」と高く評価する。
「日本には、優れた実力のあるフィギュア界のヒーローがたくさんいる。今年の夏には、織田信成、宮原知子、宇野昌磨を始めとするそういったスケーターの振付けをする機会があるが、それを今から楽しみにしている」とほほ笑みを浮かべて話す。
ステファン・ランビエール(Stéphane Lambiel)
1985年4月2日、スイスのヴァレー州マルティニに生まれる。
7歳からスケートを始める。
2005年、世界フィギュアスケート選手権で1位。
2006年2月、トリノ冬季オリンピックで銀メダル。3月、カルガリーでの世界フィギュアスケート選手権で1位。2007年、世界フィギュアスケート選手権で3位。
2008年、ザグレブでのヨーロッパ選手権で2位。
2008年10月、左内転筋の負傷のため、競技生活に終止符を打つと宣言。
2009年1月、プロ宣言後初めて「アート・オン・アイス」に出演。
2010年1月、バンクーバーオリンピックを目指し再び競技生活に戻った後、エストニアでのヨーロッパ選手権で2位。2月、バンクーバーオリンピックでは、4位。3月、再び引退を表明。
2014年、ヴァレー州シャンペリにスイス・スケート学校を創設。
2016年8月からデニス・ヴァシリエフスのコーチを務める。
現在、さまざまなショーに出演しながら、振り付けなど新しいチャレンジをしている。技術面もさることながら、アーティスティックな表現は評価が高く「リンク上のプリンス」と呼ばれている。
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