先進各国と同じくスイスの銀行もデジタル化に向かっているが、スイス国立銀行(中央銀行、SNB)は「望ましい水準に達していない」と手厳しい。
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金融と技術の融合(フィンテック)が過密状態の銀行業界で広く一般化すれば、従来型の銀行は市場から消える可能性がある。SNBがまとめた報告書「スイス銀行のデジタル化とフィンテックに関する調査外部リンク」はこう指摘する。
報告書によると、フィンテックはスイスでも注目されているが、今のところ英独や中国、米国に比べると後れを取っている。英レボリュートや独26などのネット銀行はスイスの国境で足踏みを迫られ、進出ペースは鈍い。支払いアプリや端末の使用率も伸び悩んでいる。
スイスの銀行の47%は、フィンテックやグーグルなど大手テクノロジー企業(ビッグテック)との競争が、特に決済分野で激しくなると予想する。だが対応は遅く、「銀行のデジタル化は望ましい水準に達していない。多くの工程で、デジタル化の成熟度は目標を大きく下回っている」(SNB)。
遅い取り込み
今後の競争を勝ち抜くには、革命よりも進化が必要だとされる。スイス金融業界が完全に破滅すると予想する銀行もある。そのため、新しいサービスに手を広げるよりも、決済や住宅ローンなど既存業務をデジタル化することに注力している。
ブロックチェーンや人工知能(AI)のような一時的な盛り上がりを見せるものよりも、生体認証やロボット工学、ビッグデータ技術の方が潜在力は高いと考える。大銀行が独自の社内モデルを構築する一方、小銀行はフィンテック企業との協業を模索する傾向がある。
進歩が遅いもう一つの理由に、保守的な消費者行動もありそうだ。「住宅ローンの申請を電子書類で済ませる人は全体の25%にのぼるが、相談段階で電子的なサポートを得る人は8%に過ぎない。ソーシャルレンディングの利用者も少ないという。
銀行側は、電子身分証明書や手書きの署名が必要なことも、デジタル化を妨げていると指摘する。
SNBの報告書の対象期間は34行で、スイスの全金融資産の8割をカバーする。
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(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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