東京医科大学が女子学生らの一般入試の点数を一律に減点し、合格者数を抑えていた問題は、大学側が謝罪する事態に発展した。一方、スイスの主要メディアも「女性差別」と報じている。
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マルチメディア・ジャーナリスト。2017年にswissinfo.ch入社。以前は日本の地方紙に10年間勤務し、記者として警察、後に政治を担当。趣味はテニスとバレーボール。
スイス公共放送(SRF)は9日、「エリート大学が女性を蔑視」の見出しで記事外部リンクを掲載。日本在住のジャーナリスト、マルク・フリッツ氏が今回の問題だけでなく、日本の職場や社会全体を覆う女性差別の現状を語った。
フリッツ氏は東京医科大の問題に関し「日本では大学入試はフェアなものだという信仰が強い。その分、今回の不正で国民が受けたショックは大きかった」と語った。
また女性差別は大学入試にとどまらず、日本の職場環境にも及んでいるとし「大卒者の半数は女性だが、管理職、高額な給与が支給されるポストに付く女性はほとんどいない」と指摘。これは企業などが採用段階で、出産や子育てで休む必要がない男性を優先するためだと解説した。
フリッツ氏はさらに「日本社会の保守的な考え方はスイスよりも強い」と説明。「管理職や政治家など発言力のある人々が、女性はいまだに結婚して子供を生み、フルタイムで働く夫を支えることを求めるため、大半の女性たちがパートで働き責任の少ない仕事に就いている」と述べた。
日本人男性については「妻が一人で子供の面倒を見ることを望み、家事もしない。その理由は長時間労働だと主張するが、このような長時間労働が若い母親を仕事から遠ざけ、日本経済に悪循環をもたらしている」と説明した。
フリッツ氏は一方で、安倍晋三政権が女性の登用促進や保育所の拡充政策を打ち出し、安倍政権下での女性の雇用率が記録的な上昇を見せていることにも触れた。ただフリッツ氏は「労働力不足に陥っている経済界の需要にメンタリティーの変化が追いついていない」と否定的な見方を示した。
抗議デモの様子も
「日本の大学は女性医師お断り」。ドイツ語圏のNZZ日曜版外部リンク(4日付)の記事にはこんな厳しい見出しが躍った。同紙は東京医科大前で4日に行われた抗議デモを写真付きで報じた。
同紙は「このスキャンダルは日本に怒りと不安を巻き起こした。大学前のデモには多くの人が参加し、その大半が不平等な扱いに反対する女性だった」と述べた。また日本メディアの取材に応じた女子大学生(22)の「女性が希望する職業に就く機会を大学が奪った。しかも女性たちはそのことを全く知らなかった」という発言を紹介した。
同紙はまた、大学病院で働く女性医師は経験を積んでいても冷遇されているとし「一部の科では、女性医師は手術を執刀させてもらえない」と報じた。
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